頬を撫でる風が気持ちいい季節になりましたね。
世間では今日から三連休。私の地方では今日は秋晴れで、ミニバイクで外を走ればつい鼻歌も出てしまいます。
そんな時、私はつい口ずさんでしまう歌があるのです。
「勇気だちかーらだー 誰にも負けないこの意気だ ヤー!」
という訳で(どういう訳なんだか)今日のお話は「少年ジェット」。
「赤胴鈴之助」で有名な漫画家、武内つなよし先生が原作の少年活劇テレビドラマです。
テレビ放映は1959年。この年、私はまだこの世に居ませんでした。昔の番組が大好きな私は、後年ビデオ、DVDで「初見」した訳です。その感想は。
この番組、面白いです。私の好みにピッタリ。
こういうテレビシリーズは映画と違ってソフト化になかなか恵まれず、ようやくリリースされたDVDも個数が少なかった為、視聴できたのは一部の好事家のみ。その内容をレビューできる機会もさほど多くないと思います。
事あるごとにこの作品を思い出してニコニコしている私は、少しでも皆さんに「少年ジェット」の楽しさを分かっていただきたくて。
未見の方も多いでしょうから、今日はストーリーの一部を簡単に紹介しながら作品のテイストを語ってみたいと思います。
今時「少年ジェット」なのが「ネヴュラ」ですねー(笑)。
「ジェット」と言えば、私の一押しエピソードは何と言っても第四部の三「怪人対魔人」篇。
この番組は一話30分で、一つのお話は四話で完結する方式を採っていました。「マグマ大使方式」でしょうか。なのでストーリーもかなり入りくんでいます。これがまた二転三転ですごくスリリング。おまけに展開が速いので内容てんこ盛りです。
その第一話を簡単に。
少年探偵・北村健くん(中島裕史)は「少年ジェット探偵事務所」を構える少年探偵。(表札にも大きく書いてあります。「少年」を売りにしているんでしょうか)ちょっと原田知世似(笑)。数々の難事件をその超人的な活躍で解決してきました。
そのジェットの事務所に、懇意にしている警視庁の荒川課長から電話が。「殺人事件発生!」この知らせに、愛犬シェーン(シェーン・D・グランプリ号)とともに飛び出すジェット。
ジェットが乗るスクーターは、富士重工業製の「ラビット」をデコレートしたもので、これがまたカッコイイ。私はこのスクーターに憧れて、今乗っているミニバイクを探したのです。
でも考えてみると、この番組のタイトル「少年ジェット」って事務所の名前なんですね。別に通称とかヒーローの名前じゃない。会社名なんですよ(笑)。
道路が舗装されていないこの時代の澄んだ空気もすばらしい。ジェットの事務所の隣の家では、ゴミでも焼いているのか煙が出てるし(笑)。のどかな風景が昭和の郷愁を誘います。
道端で「この近くで人殺しがあったそうですが?」と聞き込みを始めるジェットですが、あまりにストレートなセリフに通行人もドン引き。まったく手がかりが得られません。
現場には荒川課長は居ません。連絡をとっても不在の返事。
「誰か荒川課長の名を語って、僕をここにおびき出したのでは・・・」
そこに現れたのは見るからに怪しい浮浪者。すばらしい第六感で尾行を開始するジェットですが、相手との間隔が「近すぎる」(笑)。
その頃荒川課長は、部下を誘ってのどかにランチタイム。おいしそうな「ライスカレー」です。この番組、提供がカレーのS&B食品だったのでした。あからさまなタイアップが今見ると楽しい。
浮浪者を追うジェットはある廃墟の一室へ。
あっ!ドアが開かない!
閉じ込められたジェット。部屋の天井裏から高笑いとともに顔を覗かせたのは、ジェットの宿敵ブラックデビル!
怪盗ブラックデビル(高田宗彦)。世界的に有名な宝石、美術品などの盗みをジェットに何度も邪魔され、ジェットに深い対抗意識を燃やす男。怪盗ルパンを思わせるいでたちも怪しさ爆発。片目に色を入れた眼鏡とおヒゲが独特の雰囲気をかもし出します。
デビルは天井裏から眠りガスをまき、ジェットを眠らせながら自分の悪巧みを語るのです。高笑いとともに。
荒川課長からの電話はデビルの罠。ジェットをおびき寄せたその訳は・・・
「今日2月18日は、ガトラン王国から大使が来日する。その時、王から日本の皇太子に献上する大勲章を持ってくる。大勲章には世界に二つと無い宝石、オパーロンがはめ込まれているのだ。」盗みの品までを事細かに説明してくれるデビル。
しかし眠りガスは上に昇っていくため、ガスはジェットよりもデビルに当たりまくりで(笑)。もっと作戦を考えればいいのに。よく眠らなかったものです。デビル。
とはいえ(無事)ジェットは眠りこけます。視聴者はなぜかホッと胸を撫で下ろしたりして。
その頃部下から連絡を聞き、不穏な空気を察知した荒川課長はまたしても恐るべき推理力で(笑)、ジェットがブラックデビルの罠にはまった事、デビルが狙うオパーロンの事までも看破し、大使がやってくる羽田空港に向かいます。さすが大人。ジェット以上の切れ(笑)。
午後2時。空港に到着したガトラン大使。ご丁寧に奥さん、息子まで連れての訪日です。ここで(やっぱり)デビルの部下が警備員を引き付ける為、派手に銃撃戦を展開。対応に追われる警備員の目の前を通り(!)別の部下が、ノーガードの大使の息子にビストルを突きつけます。この部下がまたチャイナ服に覆面、という物凄く目立つ格好で(笑)。
「息子の命が惜しかったら、さっさと俺の車に乗るんでい!」
チャイナ服なのに江戸っ子か!
車に乗った大使一行を待っていたデビル。しかし彼は実に紳士的。大使には敬語です。
「大勲章をよこしなさい。さもないと貴方の命は勿論、奥さんも子供も皆殺しの目に合いますよ。」
こっちの方が怖いですね(笑)。「皆殺し」って・・・
空港からの連絡を受けた荒川課長はパトカーでデビルを追跡。デビルの車を見つけ、いきなり発砲する荒川課長。うーん、熱い!
その様子を見たデビルのセリフがまたカッコいいんですよ。
「このステッキの味が、まだ忘れられないと見える。」
ステッキ!凄い武器なの?渦巻く期待の中、デビルが放った「デビルファイヤー」!(勝手に付けた名前です)
ステッキからの煙と光で相手をかく乱する、デビルの必殺武器です。
「ジェットさえ居なければ、日本の警察など赤ん坊の手をひねるようなもんだ。」
突然、車の異常に気づいたデビルの部下。なんと車のタイヤには、何者かによって投げられたナイフが。車を止め、周りを見回すデビルの耳に響くのは、またしても異常な高笑い!
そこに現れた男は、西洋甲冑に身を包んだどう見ても日本人(笑)レッドベア(大川修)その人!
このレッドベア、以前にもフランスでデビルと一戦交えた過去を持つライバル。彼もガトラン大使の勲章を狙って日本にやってきたのです。
「ここで会ったが百年目。(古いね)今こそフランスでのかたきを討ってやる!」
「お前のその剣が勝つか。それともこのわたくしのステッキが勝つか。さあ来い!」
路上で切り結ぶ二人。それにしてもこの二人のテンションは普通じゃありません。
「気合い・高笑い合戦」みたいになっちゃって。豪快に笑った方が勝ち、という暗黙の了解が二人の間にはあるようで(爆笑)。
いよいよ劣勢のデビル。隙を見て(大使の勲章を奪えばいいのに)「大使をおしのけ」息子エルモンドを人質に姿を消すのでした。
追いついた荒川課長たちの前で、さも大使を守ったかのようにふるまうレッドベア。
この時のレッドベアの名乗りは、あまりのカッコよさに腰が抜けそうになっちゃいました(笑)。無理矢理にも見えるレッドベアの笑いで第一話は幕を下ろします。
この「キャラ炸裂」の敵役たちを相手に、囚われのジェットはどんな活躍を見せるのか?当時全盛だった連続活劇の「引き」が、いやがうえにも期待を高めます(笑)。
お気づきと思いますが、この第一話では主人公、少年ジェットはまったく活躍しません。
愛犬シェーンの活躍もなく、有名な武器「スーパーコルト」も火を吹かず、必殺技「ミラクルボイス」も見られないのです。ジェットの活躍は第二話以降のお楽しみ。
当時の活劇は、本当の必殺技は毎回見せる訳ではなかったんでしょうね。その分、いざ技が決まった時の爽快感は大変な物だったのでしょう。
そして、「主役なしでここまで面白い」という作品の力。
実際、第二話以降にジェットが絡んできても、これら敵役は輝きを失いません。
なんかもう「全員主役」状態。これはすばらしいドラマですよ。
他にもコメディーリリーフとして、チャップリン風のいでたちの名探偵・頓田紋太(中田勉。小林桂樹そっくり)や、日本一の金庫作り・横島鍵三(隅田一夫)など、個性いっぱいのメンバーが出演、先の読めない展開を見せます。
今見るとこの作品、思いっきり笑えますが、それだけではない作り手の真剣さを感じるのです。だからこそこんな風に語りたくなるんでしょうね。
余裕を見せる敵役に、健気に立ち向かう少年ヒーロー。
そんな健全な世界への憧れがあるのかも。
あと特筆したいのはブラックデビルやレッドベアなど、敵役が見せる「高笑い」。彼らシリーズ中ずーっと笑ってますから。
彼らが笑うと、こっちもつられて笑っちゃうんですよ。
いやー平和ですねー。
これがこの番組の最大の効能なのかもしれません。
「敵の高笑い」見たさにビデオに手を伸ばす。こういう作品もそんなに無いですから。
でもね。彼らちょっと笑いすぎ。
笑ってる間にもうちょっといい作戦を考えた方が。
そんな敵役をちょっと可愛く思うのも、「少年ジェット」の魅力なんでしょうね(笑)。
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