初冬の別れ
前回の記事で触れた、悲しい出来事のお話です。
カンの良い方ならお察し頂けたかもしれませんが
11月23日の朝、わが家の三代目妹分
ロングヘアーハムスターのシナモンファーが、永眠しました。
ペットショップで目が合い、連れて来たのが昨年の10月24日ですから
私とは約1年1ヶ月のつき合いでした。
その前に、生まれてから店頭に出るまでの期間・2ヶ月ほどを加えれば
ファーの寿命は、1年3ヶ月ほどだったことになります。
ハムスターの平均寿命は、2年ほどと聞いていますから
そこから考えれば、ファーは短い命だったのでしょう。
これまで「ネヴュラ」で皆さんに可愛がって頂いた妹分も
初代・コタクイーンの寿命は約2年でした。
ただやはり、小動物の健康状態や寿命には個体差が大きく
二代目妹分・キナックマが私の元を去ったのは
生まれてから約1年3ヶ月後。
つまりファーは、キナとほぼ同じ寿命だったことになります。
暗い話題ばかりも良くないと、ブログ上では触れずにいたものの
日を追うごとに動きが鈍くなり、食欲も落ちてゆくファーを見ているのは
正直、耐え難いものがありました。
その衰弱の様子はすべて、コタの最期と同じだったからです。
つらい結末が待っているのを分かっていながら、見守ることしかできない無力感。
加えてファーの場合、ゴールデンハムスターには極めて珍しく
毎晩部屋の灯りを消すたび、キューキューと寂しそうに鳴く癖がありました。
ハムスターは夜行性なのに、ファーは暗い部屋を怖がるのです。
私はその声を耳にする度に、夜中でも起きて
ファーを安心させるのに手を焼きました。
その鳴き声も、亡くなる数日前からは力がなくなり、やがて途絶えた時
私はこの小さな命の灯が、ついに消えた事を悟ったのです。
歴代妹分の中で、もっとも甘えん坊だったファー。
でも今回のファーの場合は、キナのように突然の急死ではなく
鳴き声の衰えという、分かりやすい衰弱過程があった為に
充分に心の準備ができ、納得の上で最期を看取ってやることができました。
ファーにしてみれば、もっとこの世に留まりたかったのでしょうが
消えゆく蝋燭の光を鳴き声で知らせてくれた、そんなファーの性癖にも
おかしな話ですが、心ならずも感謝しています。
23日の朝、ケージの片隅で静かに横たわっていたファーの表情は
これまでの妹分と同様、私には幸せそうに見えました。
貧乏ゆえ、贅沢はさせてあげられなかったけれど
コタやキナにも負けないほどの愛情を、私はファーに注いだ自信があります。
ですから、二度と開かないその瞼には
命の尊厳への敬意と、短くも楽しかったその時間への感謝を込めるのみです。
不思議な事に今回は、こういう機会のたびに感じる
こんな悲しい思いをするなら、二度とベットは飼わないといった決意が薄いんですよ。
世の無常観とでもいうものを、素直に受け入れられるようになったと言うか。
死から目を背けない事も、人生において重要なんじゃないかと思ったり。
愛する者を失った悲しさはもちろんありますが
それとは別に、私の中で何かが変わったようです。
これを「達観」と言うのかどうかは、いまだにわかりませんが。
その後しばらく、外は冷え込みが続き
お仕事が立て込んでいたこともあって
寒い日にファーを外で眠らせるのは可哀想と、温かくなる日を待っていました。
そして今日。久しぶりの晴天と気温上昇に、絶好の葬儀日和と踏んだ私は
歴代妹分が眠る、いつもの森へ。
すでに以前からお墓と決め、コタ、キナも眠る大きな木の根元に穴を掘り
静かに横たえたファーの周りには
好きだったハムスターフードを敷き詰めてあげました。
これからはハム天国で、先輩二匹と永遠に遊んでねと。
最近、特に思うのですが
人間様だペットだなんて分け隔てしても同じ生き物。寿命には逆らえませんね。
そう考えたら少し、ファーたちと自分の距離が縮まったような気がしました。
せっかくの晴天だからと、その後も続けたウォーキング。
時ならぬ小春日和に、いつもの池も多くの住民で賑わっていました。
池のほとりをふと見ると・・・
写真左端、ひっそりと佇む小さな墓標が。
実はこれ、「ネヴュラ」でもたびたび出演していた
池の貴婦人、白鳥さんのお墓なんです。
これも訃報ゆえ、報告をためらっていたのですが
森を訪れる人々に「コブちゃん」の名で親しまれていたこの白鳥は
すでに先月8日、寿命でこの世を去っていました。
突然の出来事に、コブちゃんを愛した人々が公園の管理局に働きかけ
池のほとりに埋葬、お墓を作ったというわけです。
訪れる人は連日あとを絶たず、墓前には皆さん各々が撮った写真や
コブちゃんへの別れの言葉などが、今も贈られ続けています。
以前から私も、このお墓のことは知っていましたが
写真の通り、池のほとりに吹きっさらしで立っているので
雨風で壊れやしないかと、ちょっと心配もありました。
ところが今日覗いた時もお墓は非常に綺麗で、献花も瑞々しく新しい状態。
きっと訪れる方々が、自発的にお墓の手入れなどを行い
常に新鮮なお花を供えているのでしょう。
私を含め、コブちゃんを愛した人々は
コブちゃんを家族のように思っていたに違いありません。
私がファーをはじめ、コタやキナに注いだ愛情と同じものを
ここへ訪れる人は、コブちゃんに感じていたのでしょう。
これを見た時、私は妹分たちのお墓をこの森に作ったことを
少なからず安心しました。
こんな優しい人たちが見守る森に、眠ることが出来るなら
この世から去った動物たちも、きっと喜ぶだろうなあと。
彼らの優しさはコブちゃんだけではなく、ファーやコタ、キナにも
通じると思うからです。
子どもじみた感傷と、笑われるかもしれませんが。
そんな光景に、ちょっと心が温かく足どりも軽くなって
公園へ足を伸ばしてみると。
土曜日とはいえ、これまで見た事がないほどの人だかりが。
その理由はご覧の通り、フリーマーケット。
この公園に通い続けること数年。ここでのフリマなんて初めて見ました。
子供会などから発展した、地元の人々の集まりらしく
出店者も主婦らビギナー風、お客さんも家族連れなどで
会場のあちこちでは、子ども相手の工作教室も開かれています。
真剣な商売というよりも、さながら素人同士の遊び感覚。
すでに初冬にさしかかった休日を、陽射しの下で楽しもうという雰囲気です。
中にはこんな、半分業者風のおもちゃ屋さんもあったり・・・
バンダイやユタカのヒーローソフビが、ハダカで投売り状態。
ホビーオフの出張店舗みたいな感じですね。
たとえ出物があったとしても、ファーと別れた後では探す気になれなかったので
ひとしきりお店を冷かして、雰囲気を楽しんだだけでしたが。
周りの芝生で、シャボン玉など飛ばしながら親御さんとはしゃぐ子どもたちを
ぼんやり眺めていたら
心にぽっかり空いた穴が、ほんの少し小さくなったような気がしました。
秋の陽はつるべ落とし。
これから昼間の時間もますます短くなり、冬本番となっていくんですね。
ファーちゃん、これまで短い間だったけど、楽しい思い出をありがとね。
これからはこの森で、みんなと仲良く暮らしてね。
夜が寂しいからって、泣いちゃだめだよ。
最近のコメント