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2018年9月14日 (金)

ナリタ ササキ タカヤマ 誌上最大の決戦

1

発売時買い逃して以来、刊行後22年を経てようやくわが手に
『空想特撮美術体系 大ウルトラマン図鑑('96年(株)ホビージャパン刊)』。
Q・マン怪獣造形研究書の最高峰として、今もファン愛蔵の一冊となっています。
迫力のA4サイズとハードカバーの豪華装丁。
珍しい図版がふんだんに使われた充実の内容

いやー長かった
このHJ社の図鑑シリーズは当時『大ゴジラ図鑑』の二冊で予算が尽きちゃって
これまで手が回らず泣く泣くスルーした記憶が。
しかしながら、情報の限界が最新作に止まざるをえないゴジラ資料の悲しさ。
時代と共に色褪せ徐々に値崩れ、今や中古市場で半額程度となったゴジラ図鑑に比べ
このウルトラマン図鑑は逆にプレミアが付き、ますます手の届かない高額アイテムに。
オタクの殿堂ま●だらけでも、目の眩む高値で売り場の主と化してるし
それが先日覗いたメルカリで(以下お察しの通り)。
待てば海路の日和あり。ウルトラの神は私のような貧乏人にも
ささやかなアルカイック・スマイルをおすそ分けしてくれました
唯一のネックだった帯欠けも、中身健在でこの安値なら微塵も気になりません

2

並々ならぬ情熱と綿密な取材で、読者を唸らせた大ゴジラ図鑑と同じく
今に至るも、全ての怪獣のオリジンとなる第一次ブーム時のウルトラ怪獣を
ジャーナリスティックな視点で紐解く、著者ヤマダ・マサミ氏執念の労作。
著作物ゆえ内容公開は控えますが、刊行後20年以上を経てなお貴重な資料の数々や
怪獣の造形面に特化したヤマダ氏の、的を得たキャプション群は極めて新鮮。
怪獣というモチーフを得て、現代美術家たちが創造の翼を自在に広げた
第一次怪獣ブームの挑戦姿勢や現場の熱気、各々の試行錯誤を追体験する感覚。
成田亨、佐々木明、高山良策らウルトラ造形クリエイター諸氏の瑞々しい姿も窺え
当時新たなメディアだったテレビ時代の息吹を思わせます。

★ガラモンの全身のトゲはウレタン削り出しのままの色で
 くっつき防止用にラテ塗りや彩色はされていなかった事。
★ペギラの尻尾取付位置や初代レッドキングの前傾ポージングは
 マルサン電動プラモがかなり忠実に再現していた事。
★Aタイプウルトラマンが本編では遂に見せなかった鉄人バンガオーポーズや
 "右手を握っていない"変身ポーズなど、オフショット満載。
 (スーツアクター古谷敏氏の意向か、握り拳の写真は特に露出が少ないようで)
★拙ブログでも以前話題に挙げたウルトラマン第14話「真珠貝防衛指令」の間延び感は
 Aタイプ→Bタイプへのスーツ移行による撮影スケジュール圧迫に原因があった事。
★造形が恐すぎると変更された、迫力あるウーNGスーツの貴重写真。

・・・などなど、パラパラ見ただけでも
'96年当時の読者が狂喜した造形秘話がてんこ盛り。
さすがヤマダ氏。ファンのツボを知り尽くした心憎い編集です

刊行は'96年ですから、今では広く知られたこれら情報も
露出機会の少ない現場写真と絡めて語られると、なかなかの説得力があります。
ペギラの頭部は左右非対称なんて常識も、検証写真は本編焼き抜きよりクリアですし。

この図鑑が結果的に高騰、コレクターズアイテム化した勝因は
テーマを'66年のQ・マンのみに絞り込んだ事で
時代に流されない普遍性が与えられた事でしょうね。
その上で、怪獣を造形美術の切り口でここまで掘り下げた研究書は
今に至るも今作が唯一無二。
プロの造形師やモデラー諸氏が、GK制作の参考書に使う理由も頷けます。
スーツの素材やギミック仕込みのヒントを、制作途中の写真と共に
体系的にまとめた書籍って、意外に少ないんですよ

3

史実を丹念に追い、膨大な資料を独自の視点で編み込む
ヤマダ氏の第一次ウルトラブーム研究本と言えば
制作背景面では『ウルトラQ伝説('98アスキー刊)』が印象深いですが
こと造形面に於いては、本書が決定版という気がしますね。
さらに、ブーム俯瞰の視点で編んだ
『大怪獣グラフィティ ウルトラ時代('99年ソフトガレージ刊)』
の三冊が揃えば、ウルトラ黎明期の雰囲気はほぼ鳥瞰できちゃう。
後続の研究書執筆者にとって、これら諸作が貴重な文献と共に高いハードルとなった事は
想像にかたくありません。

第一次ウルトラの造型を紐解く上で、今も怪獣ファンのマストアイテムですね。
名著は時の重みに耐えうることが再認識できました

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