ゴジラ 大怪獣空中決戦
『VSビオランテ』あたりからこだわってきた、ゴジラ封切初日鑑賞ですが
おそらく今作ほど、それに見合った感動を味わった事はありません。
事前情報の誘惑を全て振り切り、満を持して迎えた昨日。
鑑賞後の私の心は、猛暑日の最高気温以上に熱く高揚していました。
ついに日本上陸を果たしたギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA』。
すでにご覧の方には、私の感慨がお分かりと思います。
てなわけで今日は久しぶり、簡単な感想でもと。
出来る限りネタバレを避けてお話しますが
作品の仕掛け上、どうしても触れなければならない部分がありますので
未見の方は、鑑賞後にお立ち寄り頂いた方が賢明かと
ギャレス監督の作品は、2010年の『モンスターズ/地球外生命体』を
鑑賞済みでしたから
そのリアリティとポエミーなテイストを絶妙にブレンドした独特の作風は
すでに知っていたのですが
今回の『GODZILLA』に関しては、かなり趣を異にするものでした。
序盤の作劇やカットワークは定番、凡庸な上、ストーリー運びのテンポも若干悪く
群像劇の描き方に不慣れではという感覚が先に立ちました。
シネスコ画面の天地をはみ出す勢いの顔アップも
公開版はトリミングしていたと言われるリドリー・スコット監督『ブラック・レイン』並みに
圧迫感が強く
本格メジャー作品初監督の気合が、若干空回りしている印象を受けました。
「人間と怪獣のカットバックを顔アップ同士で行うと、怪獣の巨大感が出ない」と
中野昭慶監督が仰っていた愚行を、ギャレス監督も犯す不安に囚われたのです。
『モンスターズ』で既に監督の手の内を知っているとはいえ
”盛り上がる直前で次のシーンへ”や”子供の見るテレビ内での格闘”といった描き方で
やたら観客にジレンマを抱かせる、GODZILLA初登場後の”初戦”や”二回戦”も
メインディッシュはまだまだ先とおあずけを食った子供のような
不満感を抱かせる一因でした
でもそれらも含め、全てはギャレスの巧妙な計算によって仕組まれた作戦で
私たち観客は、彼の掌の上で踊らされていたんですね。
ストーリーは前後しますが、監督の才能の燭光がキラリと光り
コレは意図的な焦らしかもと感じた最初のシークエンスは
ジャンシラ原発跡地の研究施設で起こる”意図的なミスディレクション”でした。
そこまでさんざんゴジラの存在を匂わせておいて
誰もがゴジラの登場を待ちわびていたところに、あのサプライズ。
この監督は一筋縄では行かないなと、観客に緊張感の緒を締めさせるには
十二分な効果でした。
(あーこの時点でかなりネタバレしてますね。
今回は大ネタが秘されてますから難しいんですよお話が)
これでツカミはOK、あとは心地よくギャレスのジェットコースターに揺られていれば
多少の舌足らずも伏線に見えてしまうもの。
この心境は’95年、金子修介監督『ガメラ 大怪獣空中決戦』鑑賞時の感覚に
近いものがありました。
印象のみならず、今回の『GODZILLA』と『ガメラ』の二作は
怪獣の扱い方やプロット上の仕掛け、人物配置など、随所に類似点があるような気が。
宿主と寄生生物、敵対する生物兵器といった関係性の違いはあっても
互いに惹かれあう事を宿命づけられた両怪獣の設定。
研究・対策・防衛など怪獣への関わりから、違和感なく事件に巻き込まれていく
主人公側の人物配置。
あえて敵対側の登場・露出を先行させ、対抗する人類との戦闘クライマックスに
大見得と共に登場、圧倒的な威力で敵を粉砕するヒロイックな描き方で
結果的に主役怪獣を人類側の味方として印象付ける作劇。
何のことはない、私たちは今回の『GODZILLA』のストーリー骨格を
20年近く前に、平成ガメラで目のあたりにしていたのです。
少なくとも私はそう感じましたし
これが「日本人のDNAに刻まれた、正統派ヒーロー怪獣映画の王道パターン」
である事も、再認識させられました。
何だかんだ言ってもやはり、ゴジラは強く怖くあって欲しいし
ひたすら無言を貫き溜めに溜めて、ここぞという時に上げる雄叫びの迫力や
瓦礫の粉塵に浮かび上がる青白い背びれを、幻想的にPANUPするカットワークには
ヒーローの決め技がキマる直前のワクワク感にも似た、興奮を禁じ得ないわけで。
既にご覧になった方々の感想に「おかえりゴジラ」という言葉が見られるのは
単なる動物を超えた、「怪獣」という存在ならではの個性や風格が
今作では大切にされていたからでしょう。
とりわけゴジラには『百怪獣の王』であって欲しいですもんね。日本人なら
他にも見所は多くあって。
怪獣と人間のサイズ比を巧みに描写した、鉄橋シーンの秀逸さや
結果的にゴジラのヒーロー性を描く事に成功した、橋脚上の”バス”のエピソードは基より
サンフランシスコ市街を舞台に繰り広げられるクライマックスの一大バトルシーンも
さながら『サンダ対ガイラ』を思わせ、都市破壊演出の白眉と言えましょう。
ラスト直前に流れるテレビニュースのタイトル
”怪獣王は救世主か?”が、この物語を鮮やかに締めくくります。
さらにあのラストカット!
意図的に余韻を残したあのカットを観て
平成ガメラ第一作のそれを思い起こさなかった怪獣ファンは皆無でしょう。
私なんか脳内で、爆風スランプ『神話』が流れましたよホントに
あまり長い感想も最近は嫌われますから、今回は短めにまとめますが
ゴジラ映画とは切っても切れない『核』というキーワードは
もちろん今作でも踏襲されていて。
でもそれはあくまで隠し味。コンセプトの底深く静かに流れる程度に収めておき
渡辺”芹沢博士”謙氏の「時計」に結実させるあたり、実にセンスを感じます。
「あくまで娯楽作だけど、見終わった後トゲのように何かが残る作品」という
渡辺氏のセールストークが、今作の印象を端的に表しています。
そんなこんなで今思い起こしても、序盤はスロースタートながら
全ては”ギャレス・コースター”急降下前のお楽しみと割り切って
落ち始めたら一気呵成、何十年ぶりかの怪獣体験にドッブリ浸かれる今作。
事情が許せば『GMK』以来の再鑑賞を企んでいます。
せっかくの大画面体験ですから、楽しまなきゃ損ですもんね
なにしろ鑑賞翌日なので未だに興奮状態、思いが整理しきれず
とりとめのない書き散らしで失礼しました
最後に。今回のサブタイは、ドラマ構造が平成ガメラ似というだけではありません。
けっしてゴジラが飛ぶ訳ではありませんが
VSギャオスを思わせるシーンも随所にあるんです。
特に”一羽目撃墜のカット”などは。ご覧になった方ならお分かりですよね
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こんばんは!
昨日、見てまいりましたよ(!)
久しぶりにGの雄たけびに接して、ただただ喜びが込み上げてきましたよ。最初はGを理解していないであろう外人監督に何が出来るのだろうかとも思いましたが、今回の監督さんは『モンスターズ』のあの人だったんですね。
情報を何もいれずにただ渡辺謙も出ているということだけを知っていたので、結果的にはすべてがサプライズになりました。
役柄の名前が姓がオキシジェン・デストロイヤーの芹沢、名前が本多猪四郎の猪四郎ときた日にゃ、昭和G党(ジャイアンツではない。)はたまらない。
アメリカ版への返答として、いつかお遊びで願望を表現したゴジラ対ガメラのGXG対決を実現してほしいものです。
最近はベラ・ルゴシ主演の連続活劇『ファントム・クリープス/ゾルカ博士の野望』とそれに出てくるアイアンマンの不気味なルックスにハマっています。
ではまた!
投稿: 用心棒 | 2014年7月30日 (水) 21時58分
用心棒様 ついにご覧になりましたか
私もギャレス監督は『モンスターズ』で作風を知っていたので
ゴジラ映画には合わないんじゃないかなと、最初は不安だったんです。
でもフタを開けてみれば爽快感満点、ツボを押さえた作劇で
エンターテイメントの何たるかを分かっている名監督との認識を新たにしました
近年の怪獣映画に感じていた閉塞感も一気に解消され
あまりの感激の余波に、明日のファーストデー割引は何が何でも活用しようと
早くもチケットを購入、『GMK』以来の劇場再見に挑みます。
いつか実現するかもしれないG×Gの敵前視察として
舶来怪獣王の活躍を、再び目に焼き付けてきますよ
いやー一本の映画が、こうも毎日を活性化するとは

私のこの夏は、GODZILLA一色に染まりそうです
投稿: MIYUKI | 2014年7月31日 (木) 18時41分