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2012年10月17日 (水)

母校ロビーにて

打ち合わせは明日になったという、プロデューサーからの一報に加え
今日は雨の予報が出ていたので、ウォーキングも早朝に済ませrun
久々に自宅でのんびり、羽根を伸ばしていますhappy01


思い出すのは昨日のこと。

仲間の一人が、地元の映像専門学校で教鞭を揮っていまして。
担当は動画編集のノウハウ。
件の学校は私の母校でもあり、当時私はペーパー分野のグラフィックデザイン専攻でした。
言わば私はデザインから映像への転向組、彼は映像一直線というわけで
今も仕事で顔を合わせるつれづれに、授業のこぼれ話など聞いています。


昨日は、その母校のロビーで彼と待ち合わせる予定があって
かれこれ四半世紀ぶりに、懐かしい学校の門をくぐったのですが
久々に覗く母校は、校舎や間取りこそ変わっていないものの
いにしえのデザイナーなら誰しもお世話になった、ロビーにドンと置かれたトレスコープや
巨大なB全パネルのバッグを肩から下げた学生の姿は影をひそめ
小さなリュックからスマホを取り出し、どこか周りを気遣いながら
おとなしそうに雑談を交わす若者が目立ちました。

若きあの頃。
我こそは既成概念を撃ち砕くアバンギャルドの闘士、なんて自負に溢れ
教室の片隅で、仲間とアツくデザイン論を戦わせながら
廊下に貼られたデザインコンペの要項に、未来への野望を募らせた日々は
もはや遠くなりにけり。
ロビーにも奇声や怒号が飛び交い、はけ口を求めたクリエイティブなエネルギーが
学校中に溢れていたものでしたが
あらゆる業界に劇的な革命をもたらしたパソコンの登場が
学生の覇気まで変質させてしまったような雰囲気は
どこか私に、祭りの後にも似た寂しさを感じさせるのでした。

とはいえそういう技術革新も、決して悪いわけじゃないんですよ。
当時は私も烏口やロットリングペン、ポスカラをムラなく塗る技術はヘタそのもので
まともに評価された分野など、広告のヘッドコピーくらいでしたからcoldsweats01
そういう職人的煩わしさから開放された今の学生さんは
自分のコンセプトをより形にしやすい環境が、整備されたわけで。
日々、上達しない面相筆の溝引きに四苦八苦した私からすれば
喜ばしくも羨ましくもありますlovely


やがて時計の針は12時45分。約束の時刻となりました。
ほどなく動画編集の授業を終え、顔を見せた彼。
彼に言わせると、映像分野の技術革新にも良い面と悪い面があるそうで。

「何をやりたいのか分からない所があるんだよね。最近の学生は。」

彼とは、私がディレクター駆け出しの頃からのくされ縁で
いわゆる、夜中の編集室で大喧嘩した仲。
映像作家を、ストーリー派とフォトジェニック派に分けるとすれば
どちらかと言えば後者の私に対し、彼はバリバリの前者です。
その為、編集上の争点も
成瀬巳喜男監督や溝口健二監督の作品のように
「カットワークはあくまで、ストーリーを語る上でのパーツにすぎない」と割り切る彼と
鈴木清順監督や市川崑監督の作品のように
「ストーリーの流れに加え、一枚絵としてのカットも印象に残したい」かどうかに
こだわりを持つ私の、コンセプトの違いから来るものです。

昔、非常にタイミング良く
「夕日のアップからズームアウトして、演者までの大ロング」なんて
とてつもないビューティーカットを撮影できた事があったんですが
編集時、彼に「ズームアウトのストロークが長すぎ、作品のリズムに合わない」と
そのカットをバッサリ切られた時は、さすがに私も彼に殺意を覚えましたpout
でもそういう水と油の性格が、意外に作品の質を上げる効果もあって
今もくされ縁が続いているのですから、不思議なものですhappy01


そんな、バリバリのストーリー派の彼ですから
映像制作を学ぶ、二十代の学生さんらの感性には
どうにも理解できない所があるらしく。

「今の学生はやっぱり、MTV世代なのかなあ。
カット毎のクオリティばっかりに目が行っちゃって、ストーリーは二の次なんだよ。
だからカットの繋がりに整合性がなく、何を語りたいのかまったく分からない。」

要はアレですね。自分の中の
「あのアーティストのPVの、あのカットみたいにカッコイイ絵を作りたい」とか
「自作のこのシーンでは、敬愛するあの監督のカットワークを真似してみたい」
みたいな、非常にピュアなリスペクト心が
彼らをそういう行為に走らせるんでしょうね。
その情熱の照り返しと言うか、乱反射と言うかsun

いやそりゃそうですよhappy01
仮にも自分でカメラを回し、作品を作りたいなんて企む若者には
きっかけとなった監督なり作品なりが必ず、心のどこかにはあるはずで。
とはいえ、学校で教えられる映像の文法なんか
頭じゃ分かっていても、身体にはまったく染みこんでいませんから
ヨチヨチ歩きの頃は例外なく、既存の作品のマネになる。
問題なのはその作品が、黒澤映画かAKB48の最新PVかという
極端なジャンルの違いなのでしょう。
映像を紡ぐなんて、素人がちょっと教えられたくらいで出来るモノじゃありません。
お父さんが子どもの運動会を録るのとは、わけが違うんですから。
『全ての芸術は模倣から始まる』なんて、有名な言葉もありますしね。
不勉強ゆえ、どなたの言葉かは知りませんがcoldsweats01


まあ件の彼だって、学生さんとの関わりの中で
そういう事は肌で感じているとは思うんですよ。ところが。


「昔は大編集室で苦労したエフェクトも、今なら編集ソフトで簡単にできちゃうから
どんな学生の作品も、脈略の無いカットの羅列にコテコテのエフェクトを加えて
遊んでるだけみたいになっちゃうんだよ。
的確な演出効果に見合ったエフェクト、編集手法を吟味していない感じがする。
エフェクトに振り回されているって言うか。

主人公の孤独感を表すなら、カメラワークはアップよりロング、
仰角より俯瞰の方がより効果的だし
バックを少しボカすエフェクトで、心象を画面に表現するとか
時代や世代に関係なく人間に与える、視覚効果の基本を分かってない。

どこまで行っても『カッコイイ絵を繋ぎたいだけ』だから
出来上がる作品も、『若い発想が生み出す斬新さ』のレベルまで行かず
『ただの独りよがり』に見えちゃうんだよ。
それが結果的にストーリー皆無、見栄えの良い映像の絵はがき集みたいな
出来になっちゃうんだろうなあ。

ドラマと較べればストーリー性の薄い、ドキュメンタリーやニュース映像にだって
見せ方の基本というものはあるんだから
高尚な芸術作品をマネする前に、まずそういう所から勉強しなきゃ
ダメなんじゃないかなあ。」


彼の思いを要約すればそんな感じ。そして。


「業界でメジャーに使われる編集ソフトにも
それぞれ、特徴やエフェクトの得手不得手があるから
自分がどんな視覚効果を目指しているかが決まっていて
積極的に先生に聞いてくる学生は、やっぱり伸びるね。
監督ゴッコや俳優ゴッコに酔ってるうちは、しょせん自主映画止まり。

まあ居るけどね。そんな監督ゴッコを楽しんで
学校を遊び場と割り切る学生も。そういうのは見ていれば分かるよ。」

彼は私にそういうと、ニヤリと笑いました。


まー私も、このキャンパスで必死に課題をこなしていた頃は
数十年後の自分が、映像業界の片隅を泳ぎながら
このロビーで演出談義など交わしているなんて、夢にも思いませんでしたからね。
今ここでおとなしく雑談を楽しむ学生さんらも、未来にリアリティなど持てないでしょう。
今日お話した彼にしたって、普段はテレビ制作の現場でバリバリ働く現役ですから
本職とアマチュアや学生の間に横たわる、どうしようもなく深い溝の存在が
よけい、身に染みるのでしょうね。
その部分は、私にもよーく分かります。
まー経験者にしか分からない苦労があるという事は、どんな世界でも同じですがcoldsweats01

ちょっと日報を書いてくると、職員室に消えた彼を待って
長イスでボーッとしていたら、なんとなく感じる視線が。
よくよく見れば、ロビーのほとんどは二十代の学生さんなので
明らかに場違いな私の風体が、ちょっと気になったんでしょうね。
これから四半世紀も過ぎた頃、映像の世界で活躍しているメンバーは
いったいこの中の何パーセントでしょうか。

そんなイジワルな思いもつかの間。お待たせと現れた彼と外へ。
今日と違って、爽やかに降り注ぐ秋の陽射しは
そんな私の感傷を、一気に吹き飛ばしてくれるようでしたsun

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