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2012年4月 3日 (火)

昨日の敵こそ今日の友

今回は純然たる、近況のお話です。
先月から急に、身辺が慌しくなってきました。
以前からまったく連絡が途絶えていた昔の仕事仲間数人から、立て続けに連絡が入り
それがボチボチ、お仕事に繋がりつつあるのです。
この厳しいご時勢ですから、単純に考えれば誠にありがたく
まさに、天の恵みとしか言いようがありませんが。

もちろん、連絡をつけてきた仲間は互いに申し合わせていたわけではなく
私への連絡もまったく偶然、別々に入ったもの。
声を聞くのも数年ぶりの仲間から、ここ一ヶ月間に連絡が集中するというのも
非常に不思議、シンクロニシティに近い感覚があります。

しかもみんな口を揃えたように、私への用件は
「新しい企画に参加して欲しい」
「演出に加わってもらえないだろうか」
「予算は無いけどお前と仕事がしたい」などなど、歯の浮くような口説き文句ばかり。
確かにこういう誘いは、フリーディレクターを乗せる常套句ではあるものの
数年ぶりの電話の内容がこうも同じだと、不思議にも思えてしまいます。

今も昔も、番組改変期は4月と10月ですから
3月にスタッフ編成なんか始めていては、すでに出遅れているのは明らか。
拘束時間とギャラが折り合わず降りてしまったディレクターの後釜に
私を人柱に据えようという魂胆かと、邪推もしてみましたが
話を聞けばギャラも適正だし、お仕事としてはまあオイしい。

思うにどうも、名古屋で活躍する主要ディレクターはすでに
4月新番組のスタッフとして手一杯で
何らかの理由で開始が遅れた番組には、目ぼしい演出担当が残っていないという
ローカル特有の事情から来たものではないかと、思ったりします。
ですから、多少なりとも演出の心得のある人間ならと、昔の仲間まで動員して
なんとか頭数を揃えようと躍起になっている感が、ちょっと見え隠れするんですね。
でなければここまで別々の筋から、仕事の依頼が来るわけがない。
聞き及ぶ感触では、そこまで大きなプロジェクトでもないようですし
さほど驚く程のことでもありません。


ただ今回の場合、気になるのは別の事でした。
仕事を依頼してきた仲間たちは過去、私と同じ会社に所属し
一緒に働いた仲ながら
すべからく何らかの理由で退社し、今はフリーとして活動している
もしくはこの春、会社を立ち上げる予定の者ばかりだったのです。

映像関係のお仕事は、デザインや文筆業などと同じく
向き不向きのある専門職なので
職種に見合う能力がある程度備わっていれば、一人でもやっていけます。
ディレクターや構成作家をはじめ、カメラマンから照明マン、編集マンやVEさんまで
局やプロダクションである程度修行し、一定の技能を修得すれば
一国一城の主として独立することが、比較的容易なのです。
いわゆる「腕一本で食っていく」という事ですね。

ところが。番組など映像作品を作ろうとすると
演出や撮影などそれぞれの技能を持つ人材を、集める必要があります。
番組に関わる全パートの一人が欠けても、作品は完成しないのです。
その場合確かに、全パートのスタッフが揃い、番組をパッケージで請け負えるのが
会社形態の利点ではありますが
現在のように先の見えない世の中で、不安定な会社組織に留まるメリットが少ない場合
ある程度の腕を持っている人材は、独立しフリーの立場になることで
収入の安定感を失う代わりに、局など修行時代に培った人間関係を使って
「各々はフリーなんだけど、いざという時はチームを組める関係」を作っておくんですね。

こういう形態だと、普段は個別にお仕事を進め
一声かければ、気心の知れた同士のスタッフ編成ができる。
個々でもチームでも活動できる、変幻自在の仕事が可能なわけです。
会社時代に較べ、収入面でのリスクは確かに大きいですが
スタッフ個々が事業主である分、リターンも大きいと。

映像業界では昔から、そういうフリーシフト傾向が顕著だったのですが
このご時勢ですから余計、自分の腕を信じて独立する人間が増えてきたのでしょう。

一般職の方々からは、なぜ安定に背を向けリスクの高いフリーになるのかと
不思議に思われる方もいらっしゃるでしょうが
東電をはじめ、それまで誰も疑問に思わなかった独占経営のあり方が疑問視される中
どんなに大看板を掲げた企業も、明日はわが身かもいう不安感が
国内中に渦巻いているわけで
そんな中、資本いらず・腕一本で何とかやっていける個人職能者は
やっぱり有利なわけです。
昔から言われる「手に職があると強い」とは、こういう事なんですね。
工場や商店など、元手が必要な業種ではないですから
自宅を事務所にしてもやっていけるし。

現に私も、企画や演出の才能など無いに等しいながら
とりあえず一通り、番組作りのノウハウは分かっているという事が
ある種の職能と認められ、今回のようにあちこちに覚えておいてもらえる。
天性の「才」じゃないんですね。必要なのは場数で培われる「腕」なんです。

声をかけてきたメンバーも、かつては同じ現場で幾多の修羅場をくぐり
それなりのノウハウをマスターして、自分の腕に自信を持ったのでしょう。
ただの演出好きが高じてこの世界に入った私と違い、専門学校出身で
カメラや編集など技術職に携わるスタッフたちは、当時から口を揃えて言っていました。
「学校で学ぶ事はしょせん基本知識。現場の方が何十倍も役に立つし、腕も上がる。」
そこでしょうね。厳しい現場から学んだノウハウこそ
独立するに足りる自信の、バックボーンになっているのだと思います。
その点は私も同じですね。現場を経験するとしないでは
台本の書き方もカット割りの原理も、まるで変わってきますし。

そしてそういう仲間に限って、修行時代には互いに一歩も譲らず
ケンカした記憶ばかりが蘇ります。
今回声をかけてきた連中との過去も、そんな局面がほとんど。
悪天候のロケ現場で、深夜の編集室で、相手の紅潮させた顔しか思い浮かびません。
その時はもう相手の事を、どれほど分からず屋と思った事か。

でも不思議なものです。互いに中身をさらけだし
ギリギリのところで物を作ってきた仲だからこそ、いざという時に頼りたくなるのでしょう。
やっぱり何となく妥協して、スタッフ間でせめぎあいの無かった部分は
出来上がった作品も、そこだけ緊張感を欠いた結果になりますもんね。
その場ではどんなに対立しても、やっぱりスタッフは見てるんですよ。
「この監督は、どこまで真剣に作品を作っているか」ということを。
その結果が彼らに満足感を与え、今回の私へのオファーに繋がったなら
彼らが私を認めてくれた証という意味で、嬉しいものはありますが。

でもそうなると、今回のお仕事もしんどいなーcoldsweats01
まーたあのバトルを、現場で展開しなきゃならないとは。
彼らもきっと、手ぐすね引いて待っていることでしょう。
もういいかげん、楽に隠居させて欲しいのに。
絶対許してくれませんよ。彼らのことですからshock
もちろん私も手加減しませんけどpunch

修羅場を一緒にくぐった仲だからこそ、互いの堪忍加減が分かる。
フリーが集まるチームは運命共同体ですから、信じるのは互いの腹づもりのみ。
そこを知っている者同士という意味で

昨日の敵「こそ」今日の友。
互いの胸に匕首を突きつけあう、辛口の友です。

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