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2011年6月15日 (水)

銀幕の鉄砲玉

まだまだ勉強不足だなあと思い知るのは、こういう時ですcoldsweats01
CSのチャンネルNECO、今月の名画the NIPPON
「鉄砲玉のおきん」こと野川由美子さん主演『夜の牝』三部作特集。

これまで、こんなシリーズがあった事も知らなければ
「野川由美子」「歌謡映画」「夜の蝶もの」という三つのジャンルの奥深さも
まったく無知のまま、邦画の系譜がなんとなくが分かったような気でいましたsweat01
文献などでタイトルやストーリーの知識はあっても
やっぱり映画は、実物を見なければなにも語れないし
しかも有名作だけ見ていては、語った事になりませんねcoldsweats01



野川由美子さんについて、これまで私には
『ある殺し屋』(1967年大映 森一生監督)や
前述のおきんなど、必殺シリーズ初期の情報屋役で見せた
美人ながら表情豊かで、度胸の据わった男勝りのお姐さんという印象があり
その人を惹きつける演技には、一本立ちで主役を張れるだけの
実力があると睨んでいたのです。

その目力や啖呵の迫力、アクションの思い切りを見る度に
なぜ彼女主演のシリーズ映画が無いのか、常々不思議に思っていたのですが
まさかこの齢になって、その疑問が解けるとは。
ただ知らなかっただけでした。ああ恥ずかしいcoldsweats01


九州一円を牛耳る任侠一家の跡継ぎ娘。
長刀二段、空手三段をはじめ、武道百般に通じる腕前。
先代の一周忌に組を解散し、侠客という過去を断ち切るために
独り盛り場の世界に飛び込んで、親譲りの度胸一つでのし上がっていく
和服も艶やかなクラブのホステス役

なんて、まさに彼女の為にあるような役柄じゃありませんかhappy02



第一作『夜の牝 花と蝶』
第二作『夜の牝 年上の女』 (共に西河克己監督)
第三作『夜の牝 花のいのち』(森永健次郎監督)



1969年の一年間に、日活で立て続けに作られたこの三作は
宍戸錠、高橋英樹、川地民夫、野呂圭介や和泉雅子など
日活アクションメロドラマ路線の香りを色濃く残すキャストに囲まれながらも
梶芽衣子(当時は太田雅子名義)
との共演などから見て
その後の’70年代に花開く「反逆的女性ヒーロー路線」の遺伝子を
僅かながらも含んでいたのかもしれないと。

まー不勉強ゆえ、単純にそう感じただけですけどcoldsweats01

実際、梶芽衣子は、第一作『花と蝶』に於いて
やや端役ながら、写真のヌードモデルを務める女子大生として
カメラマン役の杉良太郎を巡り、野川と恋のさや当てを演じるのですが
そこでも野川は堂々たる存在感で
初々しい梶の演技を、余裕で圧倒して見せるのです。

第二作「年上の女」でも、梶は別役で野川と共演しますが
やはり先輩格の野川の胸を、梶が借りた印象です。
陽性の野川と陰性の梶という、両者の素質の違いはあるにせよ
わずか三年後の’72年、梶が生涯のハマリ役を演じた『女囚さそり』シリーズには
このある種、切れると何をしでかすか分からない野川の危険な魅力が
一つの脈流となって、梶にも息づいているような気がするのですが。




歌謡映画としての側面は、三作全ての主題歌を歌い
オープニングでの顔出しから、本編での重要な役どころまでこなす
ご存知「こんばんわ」の、森進一さんの存在に象徴されています。
ゲスト出演的位置づけのロス・インディオス、クールファイブらと共に
森はこのシリーズ内のほとんどの曲を独占
夜の蝶たちの胸の内を、せつせつと歌い上げました。

過去にもチャンネルNECOでは、’60年代のGSブーム時に作られた
当時のトップグループのプロモビデオ的作品が、特集放送されたので
ストーリーの随所でやにわに出演者が歌いだすこの手の映画が
ひとつのジャンルとして確立されていたことは、なんとなく分かっていたのですが
それらの作品と比べ、この『夜の牝』シリーズは
劇中歌担当happy01 の森進一さんが、主に流しの役
だっただけに
(流しなんて職業、今の方々に意味が通じるか不安ですがcoldsweats01
GS映画ほど設定に無理がなく
野川の存在感やストーリーの進行を、阻害してはいなかったと思います。
とはいえ、このシリーズのストーリーそのものが
森の曲をベースに作られているという経緯らしい
ので
違和感の無さにも納得が行くのですがhappy01



テレビの出現により、主役の座を徐々に追いやられつつあったとはいえ
この頃の映画はまだまだ、歌やダンスレビューなど
娯楽の総合ジャンル的役割を担っていたようですから
随所にキャバレーのショータイムや、歌番組を思わせる場面展開が
残っていたわけで
特撮作品なら『美女と液体人間』(1958年東宝 本多猪四郎監督)あたりに
当時の映画の雰囲気を、感じていた頂けると思います。

『夜の牝』の場合、「ホムラ」に於ける白川由美の役どころを
森進一が務める、といったところでしょうか。
もっともギター片手の彼の出番は高級キャバレーではなく
夜の街角やクラブですがhappy01




そして、前述のキャバレー「ホムラ」の
華やかなダンスシーンに相当するのが
銀座や道頓堀のクラブで展開する、ホステスらの華麗な接客シーン。
三つ目の
「夜の蝶もの」としての側面は、ここに色濃く表れています。

一種の業界内幕物とも言えるこの手のジャンルでは
『女が階段を上る時』(1960年東宝 成瀬巳喜男監督)くらいしか見ておらず
他の作品の知識もさほどありませんが
盛り場の表舞台、裏舞台については、かじった程度ながら体験済みなのでhappy01
映画よりも現場の知識として、空気感は理解できますpunch


虚栄と競争、裏切りに満ちた夜の盛り場に
確かな物を求めても、それらはしょせん砂上の楼閣。
それを承知の上で、お酒の力で一夜の夢にすがろうするお客と
張りぼての夢を提供する夜の蝶のかけひきは、いつ果てるともしれません。
男と女の悲しさと言ってしまえばそれまでですが
そこに金銭が介在するところに、この業界特有の生々しさがある訳で。


「男はどんな人でもお客と名がつきゃ、みんな聖徳太子に見えなきゃダメなの」
(今なら福沢諭吉ですがcoldsweats01
劇中のそんなセリフに、彼女たちが置かれた状況の厳しさが表れています。


持ち前の根性と正義感を武器に、ネオン輝く夜の海を
懸命に泳ぐ野川の姿には、ひときわの輝きがあります。
第三作『花のいのち』に於ける
銀座で野川を引き抜き、店を一軒任せると持ちかける
オーナー・南原宏治の、いかにもありそうな「交換条件」と
それを鮮やかに切り抜ける野川の、胸のすくような活躍には
業界経験者の私ならずとも、溜飲が下がることでしょう。

お客に見せる笑顔の袖からチラリと覗く、夜の蝶の意地が
凡百のヒーロー映画をも越えるカタルシスを、見る者に与えてくれるのです

加えて、鉄火場仕込みの鮮やかな花札さばきや
どんなに都会の水に浸かっても、興奮するとつい飛び出す博多弁が
野川の骨太さに貢献し、作品のコクを深めているような気も。

まあこのあたりのテイストは、私の好きな岩下志麻姐さんに通じる所があるので
ついひいきしちゃうのかもしれませんねcoldsweats01


それでも前述の通り、野川由美子という女優の持つ
現代的な陽性のイメージが
暗くなりがちなこの手の作品に適度な明るさ、勢いを与えています。
随所に顔を出す恋愛風味や、なべおさみらコメディリリーフの確かな演技も
野川の個性とほどよいバランスで
涙と情念に溢れた日本的作品とは一線を画す
「痛快お水ロマン」という印象を受けましたhappy01


ただ残念ながらこの『夜の牝』。
興行的に苦戦したのでしょうか、わずか三作で終了。
確かに佳作の域を出ませんが、映画黄金期の香りを残す贅沢な雰囲気は
充分感じられるし、再評価されて良いシリーズと思います。
歌謡映画という、同時代に奉仕する作品ジャンルの宿命も
シリーズの知名度を、不当に低くしているのかもしれませんねcoldsweats01




「ネヴュラ」も最近は、この手の話題がめっきり減ったので
もう映画への興味は失ったんじゃないかなんて思われている
読者の方々もいらっしゃると思いますが
劇場鑑賞はほとんど無いものの、CSやレンタルDVDに関してなら
ジャンルは雑多ながら、感想が追いつかないくらいの数を見ておりますhappy01

でも最近は、感想を書きたくなるような作品がほとんどなく
今回のように、不勉強を気づかされるような機会が無ければ
なかなか、モチベーションも上がりませんcoldsweats01
そんな理由からたぶん、私が今後採り上げる作品も
今回のように、知る人ぞ知る発掘作となるかもしれませんが
いきなりのディープな世界にたじろがず、またお時間あればおつき合い下さいhappy01

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