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« 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』感想① ヤマト・SFファン視点 | トップページ | 100円ホット二題 »

2010年12月15日 (水)

『SPACE BATTLESHIP ヤマト』感想② 映画ファン視点

さて前回に続いて今回は、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の
「映画ファン」としての視点から見た感想です。

ちなみに前回、「ヤマト・SFファン視点」の感想はコチラを。
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2010/12/post-f85f.html


ところで。皆さんにちょっとおたずねしたいと思います。

『SPACE BATTLESHIP ヤマト』をご覧になって
「良かった」「感動した」という感想を持たれた方。
その感想は「ヤマトとして良かった・感動した」のでしょうか?
それとも「
映画として良かった・感動した」のでしょうか?
もしくはその両方でしょうか?

たぶん、この作品をそういう角度で捉えたことは無いのではないでしょうか?
「いや、「ヤマト」「映画」と分けて考えることがおかしい。
感動は作品中の様々な要素が渾然一体となったもので、
そんな風に分けることはできない」

というご意見もおありでしょう。
もちろん、そのご意見も一理あります。

ただこの作品に関しては、私は分けて考えたいと思っています。
いつものおバカなこだわりと、お笑い下さいhappy01

そのこだわりには理由がありまして。
この作品に於ける「映画として感動した」という感覚の中には
かなりの割合で、旧作アニメ版で感動した「記憶」が占めると思うからです。

要は鑑賞前から「子どもの頃見た旧作の記憶による、感動フィルター」
みたいなものが心理的にかかっていて
今作中に散りばめられたアニメ版の名ゼリフだったり
VFXで蘇るヤマト発進シーンだったり
アニメ版のBGMなどに記憶が反応し
勝手に「感動したような気分になってしまう」という事です。
一種の、パブロフの犬状態ですねdog

この感動フィルターは非常に強固なので
できる限りアニメ版に忠実なリメイク作を作れば
たとえ内容が凡庸でも、昔の感動が後押しして
作品自体が持つポテンシャル以上に、好印象を与えてしまう。
独立した映画として正当に評価する鑑賞眼を、曇らせてしまうのです。

仮にアニメ版「宇宙戦艦ヤマト」という作品がそもそも存在せず
純粋に『SPACE BATTLESHIP ヤマト』という作品が
単独作として公開されたとしたら
純粋に映画として高評価が与えられたかどうか。
そう考えた時、「映画としてのクオリティー」という視点が見えてきます。

「いいじゃん別に。そんな仮の設定を考えなくても。
今作はまぎれもなく、アニメ版の人気を当て込んだ企画だし
観客だってそれを承知で、劇場へ足を運んでるんだから。
アニメ版と切り離して考えることに、まったく意味はないと思うけど。」


そのご意見もごもっともですねhappy01

でも、世の中のほとんどの映画には「旧作人気」なんてバックボーンはなく
オリジナル企画というスタンスで
同時期の公開作と興行成績を競っているわけですから
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』はむしろ恵まれた作品。
ヤマト家という偉大な名門一家で生まれ
アニメ版という先代の評価に後押しされた御曹司のようなもので
最初から親の七光りに包まれて登場した一作なんですよ。

そういうバックボーンありきの高評価を、純粋に映画としての出来として捉えるのは
ちょっとフェアじゃない。納得が行かないわけです。

まー、私が貧乏家系の出であるヒガミもありますがcoldsweats01


前置きが長くなりましたが、私が映画ファンとして今作を考えたいのは
そんな理由からです。
さてここからは、イッキにお話します。
多分にネタバレを含みますので、未見の方はご注意下さい。


先日、CS・日本映画専門チャンネルの特番で
ある映画監督が、こんな内容のお話をされていました。


お茶の間で視聴者が受動的立場となるテレビは
「すでに視聴者が知っている、もしくは共感できる」
倫理観や価値観を描くメディア。

対して、観客が能動的に鑑賞に赴く映画は
「観客にとって未知の、もしくは共感し得ないかもしれない」
価値観や倫理観を、あえて描くメディア。

それは自分だけのこだわりに過ぎないかもしれないが。


私はこのお話に、非常に感銘を受けました。
テレビ屋である私には、その言葉の意味が痛いほど分かりまして
さながら赤べこのこどく、一人で頷いていたのですがhappy01

映画がテレビドラマと大きく異なるのは、常にテレビをリードする斬新な映像表現
また一般とは異なる価値観や倫理観を、深く追求できるところにあるのです。

思い起こせば確かに、時代のエポックとなった映画には
常に、観客にとっての驚きや新しさがありました。

「第三の男」には、モノクロームの輝きと影の芸術を。
「2001年宇宙の旅」には、光の洪水と静寂の緊張感を。
「ジュラシック・パーク」には、CG新時代の到来を。
「マトリックス」には、たわむ時間と空間のイメージを。

「羅生門」には、真実の危うさを。
「晩春」には、親子の絆の強さを。
「近松物語」には、愛情の狂気性を。
「雁の寺」には、甘美なインモラルの誘惑を。


洋画・邦画を問わず、挙げていけばきりがありません。


そういう意味で、こと作り手の自由度が高く
クリエイターの作家性がより色濃く出るのは、テレビより映画の方なのですmovie


で、『ヤマト』ですが。
ご存知の通り、初作から続篇、傍系作品に至るまで
おびただしい数が作られた『ヤマト』に於いても
前出の、映画ならではの衝撃に満ち満ちた一作がありました。

もうお分かりですよね。
今回の実写版ラストシーンのベース作品となった
『さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち~』
(1978年オフィス・アカデミー 舛田利雄監督)です。

圧倒的な戦力を誇る敵、彗星帝国に向かい
満身創痍のヤマトと共に、主人公・古代進が勝ち目の無い特攻を仕掛ける
壮絶なラストに、公開当時は賛否両論を巻き起こした作品。

あのラストは結果的に、その後のシリーズを製作する上で
最大の禁じ手となりましたが
当時のヤマトファンの涙腺に波動砲を放ち
私の周りでも口コミで名作との評価が続出。
その感動の伝播状況、リピーター増加の勢いは
かの「タイタニック」(1997年アメリカ ジェームズ・キャメロン監督)
にも迫るものがありました。

確かに『さらば~』のラストシーンに於ける古代進の決断には
納得出来る・出来ないという感想が、受け手それぞれで異なるでしょうし
正直私も手放しで賛同はできませんから
『さらば~』を名作と言い切るのははばかれますが。
ただ、作品に対して個々で様々な意見があろうとも『さらば~』のラストは
生命に関する受け手の価値観・倫理観に一石を投じたことは間違いないわけで
プロデューサー・西崎義展氏はじめ作り手側の作家性・主張も
確かに伝わってきました。

主人公が無謀な特攻の末に死を遂げるという
成否真逆の反応をされかねないストーリーを、大真面目に提供できる。
これこそが映画の醍醐味であり
常に倫理を求められるテレビには、決して真似できない所じゃないかと。

同一のストーリーラインを取りながらも、テレビの倫理コードに阻まれ
ラストをハッピーエンドにせざるをえなかった
テレビ版『宇宙戦艦ヤマト2』の存在が
映画・テレビの違いを、端的に証明しているように思います。
興行成績に関するバクチを恐れなければ
映画とはそこまで人の心に肉迫する事ができ
人間が永遠に解決できない問題提起さえ、行うことが可能なわけです。

さて。翻って『SPACE BATTLESHIP ヤマト』ですが。
まさかここまで来て
「オタクイーン、今回の実写版ヤマトだって『さらば~』と同じ展開なんだから
映画としては正しいんじゃないの?」

なーんてツッこまれる方は、いらっしゃらないでしょうねhappy01

観客に受け入れられないかもしれない事を覚悟して挑んだ『さらば~』のバクチと
前回試してウケたから、今回も安全パイを狙った『SPACE~』の二番煎じとは
こと製作者の志という点で、天と地ほどの差があると思いませんか?

あの特攻が今作初の展開なら、それなりに感想も書けるとは思いますが
「前回ウケたからもう一回」とは。
残念ながら今作のラストは、私にはそんな形にしか映りませんでしたcoldsweats01
いかにアニメ版のレプリカがヒットの約束とは言っても
そういう客寄せレベルで、人の生死を扱ってはいけないと思いますpout

その他にも『さらば~』と『SPACE BATTLESHIP ヤマト』のラストには
感動を紡ぎだすテクニック上で、決定的な違いがあるんですよwink
確認の意味で『さらば~』は再見したので、これは間違いありません。
かなり専門的な理屈の上、映像に関する基礎知識がなければ理解できないので
今回は割愛しますが、リクエスト等あれば別の機会にでもお話します。

いつものクセで長くなっちゃったので、先を急ぎましょう。
さてここで皆さんは、一つの疑問をお持ちと思います。

「映画ならではの作品としてオタクイーンが挙げた『さらば~』だって、
結局「ヤマト」じゃん。」

そうなんですよ。まー舌足らずで申し訳ありませんcoldsweats01
要はこういう事です。

同じ「ヤマト」という題材でも
作り手の志一つで、内容にここまで魂を込めることが出来る。

再度申し上げますが、私は決して『さらば~』ラストに於ける古代進の選択を
手放しで肯定しているわけではないですし
必要以上に持ち上げるつもりもありません。
たとえ賛否を巻き起こそうとも、映画の持つ可能性に果敢に挑んだ
『さらば~』制作陣の志が
『SPACE~』には感じられなかったと言いたかったわけです。



私が『SPACE BATTLESHIP ヤマト』について
『これはヤマトかもしれないけど、映画じゃない』
という感覚を持った理由は
たぶんこの
『志』の部分が一番大きいでしょう。


「そりゃ無理じゃないかなあ。
いかに実写と言えど、今作もコミックス・アニメベースの作品だし
『さらば~』はあの時代だから出来た作品だしね。
映画が娯楽の中心から退いた現在、そこまでの志を
『SPACE~』に求めるのは酷だよ」


なーんてご意見もあるでしょうねhappy01
でも、はたしてそうでしょうか?

同じオタクジャンルの近作で、私には忘れられない一篇があります。
一昨年公開の作品です。

『ダークナイト』
(2008年アメリカ-イギリス クリストファー・ノーラン監督)

公開時、劇場でこの作品を鑑賞し
「正義の限界」や「ヒーローの存在意義」について考えられた方も
多かったのではないでしょうか。
かく言う私もその一人で
正義の多面性、ヒーローの無力さをここまで突き詰めたドラマがあっただろうかと
かなりの衝撃を受けましたlovely

たとえ賛否はあるにせよ、『ダークナイト』は凡百の単純ヒーロードラマから
一歩突き抜けた作品として、観客に計り知れないインパクトを与えたわけです。
この作品が持つテーマ、ストーリーテリング、映像感覚は
オタクジャンル以外の一般作品にも、決してひけを取っていないと思います

やればできるんですよ。コミックスベースだってhappy01

ホントは比較したい一般映画も、もっともっとも~っとあるんですが
あまり長くなっても良くないので、今回はこれくらいにしましょうhappy01

でも『SPACE BATTLESHIP ヤマト』のラストで泣したという方に
同じ映画ファンとして願いたいのは
「旧作と新作の評価を混同しない」
「テレビと映画の違いや、製作者の志というものを分かって欲しい」

という事ですね。

それから私自身への戒めも含めて、映画をもっと勉強した方がいいなと。
木村拓哉氏に責任はありませんが、『SPACE~』ラストの特攻程度で泣かれては
『世界大戦争』(1961年東宝 松林宗恵監督)のフランキー堺さんや
『連合艦隊』(1981年東宝 松林宗恵監督)の財津一郎さんなんか
本気で怒っちゃいますよ。いや、鼻で笑っちゃうかなhappy01

今回も下らないひとり言におつき合い頂いて、どうもありがとうございましたcoldsweats01
前回から二回に渡って、受け手側からの感想をお話してきましたが
次の感想からは、同じ映像屋の立場から、
作り手側の事情を考えてみようと思います。

作品製作の現場が透けて見えるだけに
たぶんこれまでの記事とは真逆の感想となるでしょう。
そこが私の面白いところ。決して苦言だけには留まりませんhappy01

例によって、緊急記事が挟まる場合がありますので
感想記事が次回とは限らないことを、お断りしておきますhappy01

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コメント

こんにちは。
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」に深い洞察、恐れ入ります。

ただブログ主様、完全に「SPACE BATTLESHIP ヤマト」に溺れていませんか?
一つの映画にこれからも書くのでしょう?

それだけ凄い映画なのでしょうか?


私の感想としては、ここまで原著に近づける必要はあったのか?ですね。
もっと自由に作って欲しかった。
感情移入のレベルではアニメをはるかにしのぐ実写版でした。
もう涙涙・・・泣き疲れるという感覚、久々に感じました。
ここまで涙した映画、いまだかつてありません。
完全に作り手の策にハマりました。

続きの記事も、楽しみにしております。

9の部屋様 はじめましてhappy01
長文のひとり言におつき合い頂いて、ありがとうございましたhappy01
そうですねー。溺れていると言うより
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を基点に
映像作品に対する私の立ち位置を、再確認しているという感じでしょうか。

ですからお読み頂いた通り、感想とは言いながら
今回の実写版の中身にはほとんど触れていないというcoldsweats01
でもまな板に乗せるには、かっこうの作品だと思います。
平均点的作品ですから、他作品とのレベル差が分かりやすいなあと。
決して批判意見ではありませんので、誤解等なさらぬようcoldsweats01

>もっと自由に作って欲しかった

私の感触も、まさにそこに尽きます。
でもそこがまさしく、作品性と興行性が最もせめぎあう部分で。
ですからストーリーの選択まで含めて、意識的に安全パイを狙っている印象がプンプンとhappy01
そのあたりは、次回以降の感想で書くつもりです。

>感情移入のレベルではアニメをはるかにしのぐ実写版でした。

楽しまれたようで何よりですhappy01
この作品は受け手自身の、ストライクゾーンの広さも試されますね。
感想記事を書くことで、私も気持ちの整理がついてきました。
あい変らずの無責任な書き散らしですが
お時間あれば、次回の感想にもおつき合い下さいhappy01

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