2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

私信等はこちらまで

無料ブログはココログ

« 焔の鬼獣 | トップページ | 雲下の銀翼 »

2010年12月19日 (日)

『SPACE BATTLESHIP ヤマト』感想③ 監督視点

今月9日に劇場鑑賞した『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の感想。
気まぐれ企画ながら今回は第三回、監督という視点からのお話です。
毎度スカスカの内容で、また皆さんに呆れられるとは思いますがcoldsweats01

ちなみに前々回『ヤマト・SFファン視点』の感想はコチラ。
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2010/12/post-f85f.html

前回『映画ファン視点』の感想はコチラです。
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2010/12/post-fe43.html

いずれもやや長文の上、今回との連続感想でもないので
ご興味あればご覧下さい。

今回のお話の参考にさせて頂こうと、ネットで作品の感想など
つらつらと覗いていた所、ちょっと琴線に触れる一節がありまして。

「この作品はつまらなくはないが、特に面白くもない。」

なるほど私の感触も、ちょっとそれに近い物があります。
アニメ版『宇宙戦艦ヤマト』実写リメイクゆえの思い入れを一切排除し
純粋に「映画」という点で、今作を見た場合の印象ですね。

前回、前々回の感想では
アニメ版ヤマトのレプリカとしての、今作の立ち位置を考えてみましたが
確かにストーリーの紡ぎ役となる「演出」という観点から見ると
今作から受けるイメージは、そんな感じです。
特に抑揚がなく一本調子で、見せ場や泣かせ所が見当たりませんでした。
あくまで私の印象ですので、誤解等なさらぬようcoldsweats01

例えば、洋画の見せ場で言えば

『恐怖の報酬』(1952年フランス アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督)の
「スポンジでできた橋」のシーン

『大脱走』(1963年アメリカ ジョン・スタージェス監督)に於ける
マックイーンのバイクジャンプ。

邦画の泣かせ所なら『生きる』(1952年東宝 黒澤明監督)の
「ゴンドラの唄」のシーンと言えば、なんとなくお察し頂けるでしょう。

「あの映画と言えばあのシーン」という、作品の顔という意味ですね。

この顔が無いと、作品の全体像がなんとなくボケてしまって
感想を他人に話す時も「あのシーンが最高で」なんて説明がしづらい。

「いやオタクイーン、私は各キャラクターの名ゼリフに泣き
ラストの特攻シーンでは号泣した」

なんてご意見もおありでしょうが
それはアニメ版ヤマトの「記憶」が流させた涙であって
今作オリジナルの感動ではないんじゃないかと。

冒頭でご紹介した「特に面白くもない」という一節が、それを物語っています。
やっぱり以前の記事でお話した「記憶フィルター」が無いと
波動砲のVFXもあの特攻シーンも、凡庸に映るんですよ。

普段は人一倍涙もろい私にしたって
劇中でどんな名ゼリフが出ようと、涙腺はピクリともしませんでしたthink

「アニメ版のキャラを生身の役者が演じる事による感動」を
「ドラマそのものの感動」と混同することは、私には出来ないのです。

今記事冒頭の感想を書かれた鑑賞者の方も
おそらく似た思いをお持ちだったのでしょう。

さて。前述の「映画の顔」を生み出す要因とは、いったい何でしょうか。
テレビ屋としての私の経験から申し上げれば
それはひとえに「監督の明確な意思」です。
「他のシーンの評価が低くても、ここだけは譲れない」という
意固地なまでの監督の熱意がスタッフ、キャストを動かし
シーンに魂を込めるわけです。

と同時にそれは、監督本人のキャリアや資質とも大きく関係してきます。
「見せ場」は、心の琴線レベルが観客と同じ周波数でなければ作れないし
同じ琴線を持ち合わせていても、それを表現できる映像のスキルがなければ
「言いたい事は分かるんだけど・・・」という
舌足らずな印象を与えてしまうからです。

その点、今作『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を手掛けられた
山崎貴監督はどうでしょうか。

私の大好きな作品『ALWAYS 三丁目の夕日』二部作の監督ですから
資質や泣かせ所のセンスについては折り紙つき。
『続三丁目』ラスト近く。茶川さん作「踊り子」を、ヒロミが電車内で読むシーンでは
不覚にも劇場で号泣した経験がありますcrying
もちろん私も今作の鑑賞前は、何の心配もありませんでした。
でも、今作に関しては何かが違う。

その違いがわからず、そんな状態で感想を書いては監督にも失礼と思ったので
氏のオリジナル脚本・監督作品による『リターナー』(2002年東宝)を
久々にDVD鑑賞しましたcd

原作の呪縛が強い『ALWAYS』や『ヤマト』と比べ
山崎監督ご自身の脚本による『リターナー』なら、監督の資質や個性が
はっきり出ているだろうと、浅知恵ながらも考えたからですcoldsweats01

初見からずいぶん経っていたので、ストーリーもうろ覚えで
先入観なく楽しめましたhappy01
『ジュヴナイル』に続く、監督の劇場版第二作という事もあり
随所に説明不足やカットワークの甘さは感じるものの
全体的には後の活躍を予感させる、才気溢れた快作だったと思います。
で、もう一つ、なんとなく感じたことが。
たぶん山崎貴さんという監督は、「間」の演出はあまり得意ではないんでしょうね。
『リターナー』でもアクションシーンのカットワークが生み出すリズムは
人間の生理に非常に合っているんですが
ラスト近く、金城武と鈴木杏の2ショットシーンは、少々間延びした印象を
受けましたから。

ただ、山崎監督の名誉の為に申し上げれば
この「間」の演出、言い換えれば「沈黙の緊張感を持続させる撮影・編集テク」は
おそらく映像演出の難易度では、最高ランクに位置するものと思います。

おいそれと出来るものではないんですよ。

私はこの「間」の演出を、映画監督の才能を計る指針の一つと考えていますが
世に言われる天才監督は、例外なくこのテクニックに抜群の冴えを見せます。

「ネヴュラ」でもよく話題にする
『フレンジー』(1972年イギリス=アメリカ アルフレッド・ヒッチコック監督)
中盤の殺人直後、ビル入口ショット約30秒に封じ込められた「間」が
作品製作後40年近く経つ今もなお
見る者に絶対的な緊張感を与えている現実を考えれば
ヒッチコックが紡ぐ時間操作の天才ぶりが、おのずとご理解頂けるでしょう。

そういう的確な時間操作が、作品の一本調子を回避する「緩急」を生み出し
ひいては作品に「コク」をもたらすわけです。

映像作品の印象が、カットごとの時間というファクターによって左右されることを
ヒッチコック以上に
雄弁に語る監督を、私は知りませんlovely

なぜ私がこれほど「間」の演出にこだわるのか。
それはこの「間」こそ、アニメ版『宇宙戦艦ヤマト』に於ける
一つの演出上のエポックであり
冒頭にお話した作品の見せ場・コクを生み出す
大きな要因だったように思うからです。

例によっておバカなこだわりですが。
私は『宇宙戦艦ヤマト』アニメ版第1シリーズの演出手法に

『遅く・重く・古く』

という印象を抱いておりましてhappy01

「人類滅亡まであと○○日」なんてカウントダウンで視聴者を焦らせながら
遅々としてストーリーが進まない、ストーリー進行の
『遅さ』。

宇宙航行シーンや爆発シーン、波動砲発射シーンに代表されるメカ演出の『重さ』。

太平洋戦争の空気感と、敵味方の両陣営がいにしえの武人の風格を思わせる
人物描写の『古さ』。
(若いファンの皆さんには分からないかもしれませんが
『ヤマト』のテイストは、本放送当時の1974年に於いてすでに古かったのです。
その融通のきかない頑固さ・古さが、視聴者には逆に新鮮に映ったんですね)
そうしたイメージを持たせる要因の一つに、劇中の「間」があったわけです。

例えばアニメ版第1シリーズ第3話『ヤマト発進!!29万6千光年への挑戦!!』
(1974年10月20日放送)劇中に於ける
有名な「波動エンジン初接続シーン」の緊張感。

一度目の失敗による二度目の接続の瞬間、またも沈黙する波動エンジン。
しばしの静寂に続き、地の底から湧き上がるがごとく響くエンジン音。
「や、やったー」と叫ぶ古代のセリフまでの「間」。

正味45秒間、わずかなセリフを除いてエンジン音だけが支配するこの「間」に
視聴者は沖田艦長や島、古代らと同じヤマトクルーの立場に立って
二度目の接続失敗や、迫るガミラス超大型ミサイルへの恐怖との戦いを
強いられるわけです。
30分番組で、45秒もの無言時間を作る演出もかなりの冒険ですが
その「間」が決して冗長にならず、視聴者に極限の緊張をもたらす手腕は
タダモノではありません。

さすがアニメ演出のベテラン・石黒昇氏。彼もまた天才だったのでしょう。

数話後のワープシーンしかり、「ヤマト」第1シリーズには
こうした絶妙な「間」の演出が非常に多く
その全てが、それまでのアニメには見られなかったものでした。

それが私に、ヤマトに対する『遅く』『重く』という印象を与え
しいては名場面、作品のコクに繋がっていたとも言えるのです。

件の第3話の映像ソフトをお持ちの方は、試しに今一度ご覧頂いて
これ以上でも以下でも成立しない「間」の緊張感をご堪能下さいhappy01

こういうお話をすると、つい長くなっちゃうのが悪いクセで申し訳ありません。
本題の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』にお話を戻します。

鑑賞された方はお分かりと思いますが
今作にはそういう「間」をはじめ、『遅く・重く・古く』という
アニメ版独特のコクはありませんでしたthink

それはやはり前述した、山崎監督の時間操作の不得意さゆえでしょうし
監督と私との、ヤマト観の違いもあるのでしょう。

ただ誤解を避ける為に申し上げれば
私は別に、このアニメ版ヤマトと同様のコクを
『SPACE~』に期待していたわけではありません。

せっかく実写で作るのだし、アニメと同じ事を期待するのはむしろ筋違い。
あの『ALWAYS』の山崎貴監督が手掛ける作品なんだから
『遅く・重く・古く』に代わる、実写版ならではのテイストを
期待していたのです。

鑑賞後「なるほどこれは新しいコクだわー。さすが山崎監督。」
なんて驚嘆のセリフを、どれほど言いたかったことかcoldsweats01

そういう意味では、私は今回の作劇にかなり落胆したのですがsad
別の部分での発見もありました。
山崎監督は、作品への過度な思い入れを抑え、ご自身との距離感を保つ能力や
撮影現場に於ける演者とのコミュニケーションの手腕は
非常に卓越しているという事です。

『リターナー』に於ける岸谷五朗の演技が素晴らしかった理由は
やはり作品に対する山崎監督の方向性、キャラクター造形が
固まっていたからだと思うし
それを演者に伝えきるって、凡庸な監督にはなかなか出来ない事ですからhappy01

ただ『SPACE~』の場合、いかんせんアニメ版のイメージが
演者一人ひとりの中に先入観として根付いてしまっているので
演技の方向性が、各自でややバラバラになってしまったきらいがありますね。

黒木メイサや高島礼子の演技に掘り下げの浅さを感じた理由は
ご両人の演技プランの詰めが甘かった事もあるでしょうが
おそらく山崎監督の中でも、設定変更された森雪や佐渡先生の人物造形に
やや探り探りの点があったからだと思います。
こういうところが画面に出てしまうから怖いですよね。監督って。

余談ながら、今作の木村拓哉さんについてお話すれば。
彼は、自分がこの作品に出る意味を理解する能力は天才的で
おそらく山崎監督が予想した以上に、実写版古代を演じきったのではと考えます。
今作の彼に対しては「どんな作品に出てもキムタク」なんて意見が多いですが
彼は、そんな評価よりもはるかにしたたかですよ。
ルックス、ヒーロー性、ネームバリュー、集客力のどれをとっても
今の日本で、彼以上に古代に適した存在は居ません。

今作が映画としてより、イベント性を重視した企画であるのと同じく
古代役に要求された物も演技力ではなく、スター性ですから。
木村氏はそれをいち早く理解し
あえてステレオタイプの「キムタク」を演じたわけです。

これは作品の方向性として、実に的を得ています。
これが山崎監督のサジェッションによるものなら、監督もまた天才的と言えますが。

他の演者に対しても、語れと言われればいくらでも語れますが
また長くなりすぎますので、これくらいにしましょう。

いずれにせよ私は、山崎監督に対して
作品のコクを、カットワークや時間操作など個性的な映像感覚に込めるのではなく
俳優個々への作品ポリシーの伝え方に込めるタイプと見ました。
役者の演技を通じて、スクリーンに監督の思いが滲み出てくる感じ
とでも言いましょうか。うまく言語化できませんが。

いわゆる、作り手知らずの名作をモノにするタイプ。
古くは成瀬巳喜男監督、今なら山田洋次監督に近いスタイルと言えましょう。
作品ごとの落差は大きくても、時に超ホームランをたたき出す天才肌ではなく
着実なヒットで手堅く成績を稼ぐ、職人タイプといった印象です。

こういう有名原作の映画化をたて続けに行いながら
一般評価を大きく外さない監督なんて
多いように見えて、本当に少ないんですよ。
そういう意味では、今後の仕事から目が離せない監督の一人ですhappy01

ご自身が持つVFXという強力な武器を、作品の題材とどう結びつけ
作品の魅力にまで昇華させるかという事が、今後の監督の課題でしょうね。
『ALWAYS』ではそれが、実にうまく機能していたように思えたのですがhappy01

いやー今回も好き勝手なお話で、また長くなってしまいました。
これでもホントは、語りたいことの十分の一以下なんですが
なにしろ文才が無いので、思いがうまく言葉にできません。
いつものごとく、不器用なおバカのたわ言とお笑い下さいcoldsweats01

さて、次回の感想はいよいよラスト。『プロデューサー視点』。
「興行」「商売」の面から見た場合の今作です。

これはたぶん、今作に心酔された方の夢を打ち砕く
辛い感想になるような予感がしますcoldsweats01
(私もまだ書いていないので、予想しか出来ません)
例によって気まぐれゆえ、感想は次回の記事とは限りませんので
なにとそご容赦下さい。
まー作品の内容にほとんど触れない上、ストーリーがセリフがメカが云々と
普通の感想を一切書かないこんな記事、期待される方も皆無でしょうから
そういう意味では気楽ですがhappy01

にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ

« 焔の鬼獣 | トップページ | 雲下の銀翼 »

「マイ・フェイバリット・アニメーション」カテゴリの記事

「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/104767/38134040

この記事へのトラックバック一覧です: 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』感想③ 監督視点:

« 焔の鬼獣 | トップページ | 雲下の銀翼 »