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2008年12月 6日 (土)

硝子の捜査員

「いやいや、すまんかったねー。」
本格的な冬の到来を告げる冷たい雨の中、車を飛ばして出向いた警察署。
デスクワークの手を休め、人の良さそうなお巡りさんは、ねぎらいの言葉と共に私を出迎えてくれました。


あのバイク事故から一ヶ月ちょっと。ずいぶん日が経ちましたが、昨日、12月5日は、事故の詳述調書の作成日だったのでした。

顛末をご存知ない方はこちらを。
11月5日(水)『骨折する心』

http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2008/11/post-8b54.html

ミニバイクの事故は何度も経験がありますが、これまではほとんどが示談で済ませる程度だったので、供述調書なんて本当に久しぶり。
しかも相手が不明のひき逃げ事故なんて初めてなので、それなりに興味深い一時でした。不謹慎ですがcoldsweats01

とはいえ調書なんて、お巡りさんの実況検分を聞いてはいはいと答える程度の作業なので、別に気負うことなどありません。事実関係が間違っていなければ、そのまま淡々と頷いていれば事は進んで行きます。

「ここで赤信号なのに、相手の車が突っ込んできたと。」
「そうですね。間違いないです。」
「その時あなたは、相手の車種や色なんかを確認できました?」
「いやーそれはムリですよ。もう夕暮れでしたし、ヘッドライトの光が眩しくてとても車種までは。」
「そう。そりゃそうだ。この状況で車種が判別できる方がおかしいんやね。」
経験豊富なお巡りさんは、私の言葉に頷きながら、手際よく調書を書き込んでいきます。中でも今のようなやりとりは、被害者の供述捏造などを判別する重要なポイントなんだとか。


「こういう場合、車種なんか分からないのが当然なんですよ。
しかも、あなたははね飛ばされてる。
分かったなんて言われたら、逆に疑ってかからなきゃならない。」

一通り調書が作成された後で、お巡りさんは笑顔と共にこんな言葉を。
「そうだね。現場の聞き取りや証人さんのお話とも、ほぼ合っているし。

あなたが事実を話されている事は、確認できました。」

お巡りさんの言葉には裏づけがありました。
その場で初めて聞いたのですが、何と事故の瞬間、対向車線の信号で停止していた車のドライバーが、目撃者として名乗り出てくれたそうなのです。

「証人は女性の方でね。事故後、一度は現場を通り過ぎたんだが、やっぱりお話したほうがいいだろうという事で、後日警察に連絡を下さったんですよ。
証言もしてくれました。」


つまりこういう事です。彼女は、赤信号で止まった自分の車の横を、犯人車が猛スピードで通り過ぎたのを確認したと言うのです。
ですから信号が赤だったこと、犯人が信号無視をした事、私をはね飛ばした後走り去った事などを克明に記憶していたと。
その証言が、今日の私の証言と一致したわけです。
「とっさの事で車種や色はうろ覚え、ナンバーも分からなかったらしいんだが、それでもこの証言で、事故の事実は立証された。
おかげで助かりましたわ。」


これまで、目撃者が交差点付近の人たちばかりと思っていた私は、その事に驚きました。
まさか犯人車の隣に停まっていたドライバーが、名乗り出てくれたなんて。
「いい街ですねー、名古屋って。」思わず、私はつぶやいてしまいましたhappy01
確かに今に至るも犯人の手がかりはありませんが、こうして被害者の事を気遣ってくれ、力になればと名乗り出て下さる方もいらっしゃるのです。
黙っていれば済んでいく事なのに、良心から証言下さったその姿勢。
私がその方に感謝したのは、言うまでもありません。
まだまだ世間も捨てたものじゃないなー、なんてhappy01


「こういうひき逃げ事件は、ウチの所轄管内だけでも一日二十件以上。
毎日、実地検分と調書作成の繰り返しですわ。
でもこうした証人でも現れない限り、なかなか本当の事は見えてこない。」

お巡りさんは、ため息のようにそんな言葉を漏らしました。
マスコミ人の業、私はそういう言葉に情報の匂いを感じてしまい・・・
「そうですよねー。捜査する方は大変ですね。信号の横に固定カメラでも設置しておけば、動かぬ証拠になるんでしょうけど。予算もかかりますしねー。」
なんてネタふりまでする始末coldsweats01
その言葉に反応してか、お巡りさんはこんなお話をしてくれました。


「そうそう。場所は言えんのだけれど、名古屋にも数箇所、固定カメラ設置の交差点があるんですよ。」
おっと。これはなかなか貴重な情報。聞き耳を立てる私。
私の事故現場にカメラが無かったのは残念でしたが。
さらにこんなお話も。


「おっしゃる通り、この固定カメラは非常に有力な証拠となります。
交差点の事故なんて、当事者同士の記憶違い、と言うより、主張のぶつかり合いですからね。どちらが正しいなんてその場に居なきゃ分からない。
でも固定カメラの映像さえあれば、事故の正確な情報が一目で分かる。」

なるほど。確かにその通り。頷く私にお巡りさんは追い打ちをかけました。
「現場で相対していると、事故当事者は自分の主張をゴリ押しする場合が多いんですよ。でも固定カメラの映像を見せれば一目瞭然、決着はすぐにつく。
ただこういう業務をやってるとねー。人間の習性もよくわかりましてねー。」

柔和そうなお巡りさんの目が、ちょっと見開かれました。



「衝突事故などで、当事者のどっちが過失責任が大きいか、客観的に判別しづらい場合、
調書作成時、大抵は過失割合が大きい方の運転手が、饒舌に事故の様子を語るんですよ。聞いてない事までこと細かく。
逆に淡々と事実を語り、言葉に飾り気がない方が過失割合が小さい。
で、固定カメラを見ると、案の定しゃべる方が過失割合が大きい場合が多い。
これが現場から経た経験ですわ。」



これは面白い解析ですね。まーお察しいただけるでしょう。
饒舌な方はもう、自分に過失がある事を自覚しているわけです。
だから心のどこかにやましい所がある。でも罪は逃れたいと。
ですから警察や相手当事者を説き伏せたい思いが高じて、自己弁護・正当化に走る。それが饒舌という形をとって、言葉を並べるわけです。
逆に寡黙な方はやましい所がない。ありのままを正直に話せば、いずれ事実は分かるのだからという余裕がある。だから余計な事はしゃべらないと。


まー『一の事実は百の弁護に勝る』といった所でしょうかhappy01


この通りじゃない場合もあるでしょうが、現場経験はダテではないでしょう。
うーんいいお話を聞かせてもらった。シナリオ作りの参考になりますhappy01


「ですから本当は固定カメラを見なくても、事情聴取の段階で、過失割合の目星はほぼつくんですよ。で、カメラの映像が、その目星を裏付けると」
自慢げにならず、淡々と話すお巡りさん。
いやーさすが、長年のキャリアから出た言葉は説得力があります。
妙に納得してしまった私でした。


事件捜査に於いて、確かに固定カメラは動かぬ証拠なんですが、それもあくまで捜査員のカンとのタッグで活きるものなんですね。
いかに現場の経験が重要なものかがわかりました。
「ヤツがクロだ!」経験のアンテナに触れる捜査員の印象が先にあって、それを裏付ける固定カメラという立ち位置。
まさに固定カメラは、捜査員の強い『相棒』でもあるわけですね。
冷たいガラスのレンズの奥には、証言の捏造を許さない熱い魂が。
なーんて。『ザボーガー』入っちゃう所が、ピープロ好きの私の悪い癖coldsweats01


確かに固定カメラの是非論も否定できませんが、犯罪捜査に役立つ点も確かにある訳です。こうして実際に生の声を聞くと、それを再認識しますね。
そして何より「捜査員のカンが先行する」って所がいいじゃありませんか。


「ご苦労様でした。気をつけてね。」
お巡りさんに見送られながら、警察を後にした私。
警察官は、人間観察のプロでもあるんですね。いい勉強になりました。

私もあんまり、しゃべりすぎないようにしよーっとcoldsweats01
やましい所はありませんが、少々、饒舌気味のところがありますから。
何でも知りたくなっちゃって、つい人に声をかけちゃうし。
「ネヴュラ」読者の方々も、私のそういう性癖はご存知ですよね。
「記事が長いところにも、その性癖が出てるよね」なんて皆さんの声が
ブリザードのようにこだましますcoldsweats01

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コメント

 目撃者が名乗り出てきてくださったなんて! 良かったですネ(^o^)/
 それに、事故の事情聴取を受けているんだか、取材しているんだかわからないオタクイーンさん! サイコーです(^o^) 本文からジャーナリスト魂が垣間見えますヨ。いつも感心するのですが、そのスタンスが記事を面白くしているのですネェ~。

 私は前の職場で、下校時の生徒を狙う露出狂を捕まえたことがあります。ちょうど私がパトロールをしている時に出没して、取り押さえました。その事情聴取というのが3時間! 捕まえた方の私がですヨ‥‥(´・ω・`) まぁ、知らせてくれた生徒の面通しや、起訴するかどうかの手続きが長引いたこともあるのですが‥‥。だから、「事情聴取」というものにはあまり良い印象は持っていません(^^ゞ
 あ、誤解しないでください。警察は好きですヨ。警察は市民の味方だと感じていますから。これだけデタラメな世の中に、弱者を助けてくれるありがたい存在です。従弟も警察官ですし(^o^)

 最近は学校外で法を犯し、保護者の監督・責任能力が低下し、警察と協力しなければならない生活指導の場面が増えてきています。だから警察には「スクール・サポーター」という係がいて、警察の方とはよく会うようになっているんですヨ。この辺りを取材されると、最近の学校事情が見える番組が作れるのではないでしょうか(^o^)

 「長年の経験の勘」というのは肯けます。私も20年近くやっていると、何かをやらかした生徒の挙動不審が見えてきます。また、自分が学生だった時に悪さをした経験もあるので(^^ゞ、どういう心理でそんなことをするのかというのもわかってしまいます。その勘はだいたい当たっているんですよネェ‥‥。
 ただ、「長年の経験の勘」があるからこそ、「防犯カメラ」の映像を見る目が曇ってしまわないかは心配です。先入観があると、同じ映像でも客観的に見られなくなるのではないかと‥‥。自分の「勘」を裏付けるような見方をされないか、ということです。映像に携わっているオタクイーンさんならば、1つの映像が別の意味に解釈される可能性はよくご存知だと思います。
 「いつもだれかに監視されている」というのは勘弁してもらいたいですが、何かが起きた時に、それが記録されているという安心感はありがたいです。「勘」とのバランスをウマく取っていってもらいたいです。

自由人大佐様 今回の事故は災難でしたが、現場で助けて下さった方や名乗り出て下さった目撃者のように、人々の思いやりを感じられた一件でもありました。
世知辛い世の中ですが、まだまだ助け合いの精神は生きているんですね。
本当に感謝したいですhappy01

マスコミ稼業を長年続けていると、「一期一会」という言葉の大切さを思い知ります。
そして「聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥」という言葉も。
芸能人や有名人など、めったに会えない人々と現場を共にできる業界ですから。
ですからとにかく、専門知識を聞けるシチュエーションはチャンスと割り切って、最大限に活かすようにしているんです。
恥をかくのも楽しい思い出。チャンスをふいにする事を考えれば、ちょっとくらいの恥ずかしさなんてhappy01

大佐さんはお仕事上、警察関係の方々と交流がおありなんですね。
確かに今、教育現場は親や警察と一緒に子どもを育てる環境が求められていますから、それも当然の事でしょうね。
おっしゃる通り、保護者の監督・責任能力の低下は、私も何となく感じています。
二人の小学生、一人の中学生の子供を持つ妹に時々会うと、驚愕するような親御さんの態度を嘆く話題も多いですし。
教育現場の方々は本当に大変ですね。親が教育者の側についてくれない、その苦労をわかってもらえないジレンマもお察しします。
警察との連携はデリケートな部分が大きいですが、子どもの健全な育成の為、頑張って下さいhappy01

確かに『長年の勘が防犯カメラを見る目を曇らせる』というご意見も頷けます。ですから警察官には余計、先入観だけに頼らない公平な姿勢が求められるのでしょう。
映像業界に生きる者として身に染みている事ですが、やはりこれもおっしゃる通り、映像という物は時に「見る者の意思によって解釈が異なる」メディアなのです。
そこが大きな利点でもありますが、同時に欠点でもあるわけで。

そういう意味でも、警察官という立場の人間は、冷静に映像証拠の判断に臨む必要がありますね。
ベテランになるほど陥りやすい盲点かもしれません。
ただその判断にはやはり、経験から培われたノウハウも重要。
常に『勘と証拠判断の心的バランス』を深く自覚して頂きたいものです。
私たち一般人は、そこに頼るしかないのですから。

大切な視点を頂き、ありがとうございました。また勉強になりましたhappy01

MIYUKIさま、こんにちは。
もう一ヶ月以上経ったんですね。
詳述調書の手続きお疲れさまでした。

後日名乗り出てくださった目撃者さんのお気持ち嬉しいですね。
事故の目撃証言はタイミングがずれるとなかなか声を
あげにくくなると思いますが、
MIYUKIさんのことを思い出してこのままにできないって、
きっと感じてくれたのだと思います。
そのことを思うと、心が温かくなりました。

12月に入って、毎日寒くなってます。
どうかお体ご自愛くださいね。

hikari様 そうですね。あれからもう一ヶ月あまり。
その節は、ご心配をおかけしましたcoldsweats01
調書作成はそれなりに新鮮な経験でした。
引き出しがまた一つ増えたような気がしますhappy01

名乗り出て下さった目撃者の方には、本当に感謝したいです。
確かにおっしゃる通り、黙っていても誰にも知られないし、とがめられない事ですものね。そこをわざわざ名乗り出られたお気持ちを、私も見習いたいと思います。
こういう善意の灯は、決して消えて欲しくないものですね。

冷え込みもますます厳しい毎日ですが、私はこたつでいつもほかほか。
お気遣いありがとうございます。
hikariさんも、風邪等にはお気をつけ下さいねhappy01

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