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2008年5月17日 (土)

とっておきの一着

「『履きだおれ』って知ってます?」いたずらっぽく私に尋ねる彼女。
不安と希望がないまぜになった彼女の目は、私には眩しく見えました。

いやーおととい15日のロケは、本当に大変でした。
ロケ直後から編集準備、昨日の早朝から夕方まで怒涛の編集作業。
さすがに昨夜は、帰宅直後にバタンキュー(あえて昭和の言いまわしで)でした。
おかげで今朝は爽やかな寝覚め。朝日も気持ちいいです。

おとといは市内の中心部に位置する高級ブティックの撮影だったんですが、このお店、とにかく撮影条件が厳しいんですね。
今回はおすすめのウェアをマネキンに着せて紹介する構成だったんですが、営業時間内での撮影なので、当然お客さんも入店してきます。
お店との約束で、お客さんが一人でも入店してきたら私たちは撮影を中断、機材を全て撤収しなければならないんです。撮影再開はお客さんが帰った後というcoldsweats01
確かにお店は利益が第一。
しかもTシャツ一枚が3万円台の超高級店(手袋をはめてTシャツを扱うというeye)ですから、お客さん一人のコストパフォーマンスは絶大。
撮影の為に商売が邪魔されたら、それこそ本末転倒です。

で、おとといはとにかくお客さんが多かった上、お買い上げまでの時間が長くてsweat01
ロケ二時間押しは、その度に撤収を繰り返した結果だったんです。

当然、待ち時間は予想もしていたんですが、おとといの場合は予想をはるかに超えた来客数で。
私たちに「ごめんねー。お待たせしちゃって」と謝っていながら、店長さんは笑いが止まらないというcoldsweats01
撮影はスムーズに行いたいし。でも売り上げは邪魔できないし。
お店取材につきまとうジレンマに、今回も陥ってしまったのでした。

女性の皆さんはよくご存知でしょうが、ブティックというのはとにかくお買い上げまでの時間が長い。何着も試着して、お気に入りのアイテムを決めます。
高額商品ばかりのブランド店なら、お客さんも一層気合が入るというもの。
お一人様一時間待ちなんて事も、ざらにあります。
その間、私達撮影スタッフはお店の近くで待ち時間となるんですが、お客さんがいつ帰るかわからないので遠くへ離れる事はできない。
まるで刑事の張り込みのように、お客さんの動向をじっと見つめるわけです。

そんな待ち時間。釈由美子並みに鋭い目つきでお店を見つめる私のそばに、一人のスタッフが近づいてきました。
以前お話したこともある、新人の女性カメラアシスタントでした。

彼女の雰囲気をお知りになりたい方はこちらまで。
2008年1月10日(木)「経験とも違う何か」

http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2008/01/post_3d6f.html

カメラマンや照明マンなど技術スタッフは別の所に待たせてあるので、アシスタントも同じ場所に居ていいんですが、何故か彼女は私の隣に腰を下ろしました。
何となく事情が読めた私。おとといの男性カメラマンは結構厳しい人だったんですhappy01
悪い人じゃないんですが、とにかく後輩に対しては語気が強い。
人前でもかなりはっきり指導する人で。職人気質なんですね。
徒弟制度が確立している世界ですから、これもある意味当然です。
その風当たりがキツくて、きっと彼女は私のところに避難してきたんでしょう。
まー私の先輩ディレクターも同じようなものでしたから、修行とはいえ気持ちもよくわかります。
彼女も悪い子じゃないしそれなりに頑張っていますから、受ける印象も悪くありません。
何となく、雑談となっちゃって。
撮影中のブティックに絡んで、お話は自然とファッションの方面に。
まー女性同士coldsweats01ですから、どうしてもそういう会話になりますね。


彼女は関西生まれ。名古屋へ来て半年だそうです。何でも、大学時代の仲間に名古屋出身者が居たらしくて、その関係で以前からこちらへは来ていたそうで。
「名古屋、なんとなく好きなんですよ。いい人が多くて。」
どうやらその印象が、彼女に名古屋就職を決めさせたようです。
でも面白いことに、彼女の好みは神戸ファッション。
冒頭のセリフは、そこで出たものです。
「名古屋はまだ半年なので、お店もあまり知らないんです。
着るものは地元へ帰った時にまとめて買っちゃうんですよ。
昔から神戸で買ってたんで、知ってるお店も多くて。」

「やっぱり神戸と名古屋では、ファッションの傾向も違うの?」
「そうですね。で、何よりも神戸の方が種類が多いんです。
神戸は『履きだおれの街』って言われるくらい靴の種類が多い。
色々選べるからいいんですよ。」

「そうだねー。名古屋はそういうとこ、まだ遅れてるからねー。」
「名古屋でも、探せばあるのかもしれないけど。」


テレビのお仕事を目指すようなキャラの人は、どこか他人とは違う感性を持っています。ご他聞に漏れず、彼女も同じようで。
「全国的な知名度で言えば、神戸って三宮が有名なんですけど、地元民からするともっとディープなところが色々あるんです。
そういう所で売ってる物の方が面白いんですよ。」

「へーっ。どんな物が好きなの?」
「うーん。私は古着みたいなのが好きなんですけど、そういうディープスポットにはやっぱり面白いのがたくさんあって。結構買い込んじゃいます。」
古着!今の仕事着からは考えられない嗜好。
やっぱりこの業界、普通の人は来ないなとhappy01
彼女がカメラマンじゃなく音声スタッフ志望という事を初めて聞き、私は瞬時に「ひょっとして、バンドかなんかやってる?」と尋ねました。
おバカ発想ながら、音声+古着=バンドという短絡思考が働いたんです。
「はい。やってました。まだやる気はあります。」と彼女。


やっぱりこの業界は、自分が追い求めている夢の具現化なんですね。
私も名作映画やドラマに惹かれ、テレビの世界を目指した訳ですから。
彼女の場合、音楽への興味がもともとあって、何となく音声のお仕事に携わりたいという願望を持っていたそうです。
で、ネットで名古屋の求人を知って、はるばる大阪から応募した訳ですね。



「でも、手放しで喜べる現状でもなく。」
珍しく弱気な言葉をつぶやく彼女。ちょっと私は意外でした。
やっぱり、理想と現実のギャップは大きいんですね。
「ネヴュラ」でもさんざんお話してきましたが、一見華やかに見えるテレビ業界も、その実やはり商業原理やプロ意識が火花を散らす厳しい「職場」なのです。
甘い夢など、三日で打ち砕かれてしまう。後はどこまで、本人が砕かれた夢を拾い集められるか。保ち続けられるかにかかっている訳です。
その夢が本物かどうか、それを試される業界なのかもしれません。
夢の大きさが、モチベーションの持続期間に比例すると。


まー彼女の場合、先輩の厳しい指導に根を上げつつあるようでした。
私もそうですが、やっぱり男性原理に基づく言葉の厳しさって、女性にはちょっと辛いものがあるんですよね。

男性同士なら何となく理解できる「言葉の裏の優しさ」が、女性は理解できない場合もある。言葉を額面どおり、そのまま受け取ってしまう事もあるんです。
女性にはそこが難しいところですね。指導する先輩も、勝手が違う所です。

ですから彼女は私のところに来たと。世間話で気持ちを和らげたかったんでしょう。私が人畜無害っぽく見えたのかもしれませんがhappy01
他にも、現場で起こる数々のアクシデントに、ノウハウを持たない彼女は苦労の連続のようでした。
「今の仕事が向いているのかどうか、ちょっと悩んでいるんです。」
弱気な本音を漏らす彼女。よくありますよね。女性同士の会話には。
(妙に「同士」を強調しますがcoldsweats01 他意はありませんhappy01


「そうかー。」私はちょっと先輩面しちゃって。
「でも、名古屋を離れるつもりはないんでしょ。」

「はい。全然ないです。」
「それなら大丈夫じゃない?たった一人で名古屋へ来て、まだ帰りたいと思わないって事は、そこまで追い詰められてないって事じゃないの?
本当に辛い時は、もう何もかも捨てて地元へ帰りたくなっちゃうと思うよ。
まだ半年だし、もうちょっと頑張ってからでも遅くはないよ。」

「あー・・・そう言われればそうですねー。」
目の前の悩みに捉われると、その向こうの大きな夢が見えなくなっちゃう事もあるんですよね。まー何のヒネリもないなぐさめで。こんなもんですよ私はcoldsweats01


と同時に、そんな彼女が羨ましくもありました。
私も昔は、何度も彼女と同じ悩みを持ちました。若者が一度は通る道と言ってもいいでしょう。
でも悩みと可能性は裏腹ですよね。悩むという事は「諦めていない」という事ですから。そこから現状を打破する道が開けるかもしれないと。
きっと私も、悩みながら傷をいっぱい作って、何とかやってこれたんでしょう。


でもさすがにこの年になると、仕事上の悩みって無くなりますね。
場数を踏んでくると、自分の中で「心づもりのスキル」みたいなものが出来てしまう。どんな場面にぶつかっても、状況処理の引き出しがあるんですね。

とりあえずパニクる事はなくなりました。たとえ今回のようなスケジュール押しでも絶体絶命とはならないですから。
体力はともかく、どこかに精神的余裕があります。
それを「慣れ」や「経験値」と言うのは簡単ですが、瑞々しい感性のひらめきは無いのではと。悩まない分、可能性が頭打ちになっちゃった感も否めないですね。

他愛も無い、可愛い悩みとはいえ、彼女はまだ可能性を秘めている。
彼女のそんなところが、私には眩しく見えたのかもしれません。



若さゆえの悩みを抱える彼女に、ちょっと教えられた一幕でした。
やっぱり年をとっても、感性だけは瑞々しくありたいものです。
ちょっと彼女に聞いてみました。
「いざという時に着る、とっておきの一着って持ってるの?」

「はい。ありますよ。」と彼女。
その「いざという時」とは、果たしてバンド活動のコンサートの時か。
それとも、意中の彼氏とのデートの時でしょうか。
さすがにそれは聞けませんでしたが、私はそんな気持ちを
忘れていました。
女性読者の皆さん、貴女は「とっておきの一着」をお持ちですか?
いや、「いざという時」の事を考える、気持ちの若さをお持ちでしょうか?



さて。高額のウェアをお買い上げのお客さんがお店を出ました。
ようやく撮影再開です。
ほんの一時の会話ですが、彼女に大事な事を教えられたような気がします。
悩む事。そして自ら「いざという時」を作ること。
それこそが、感性を衰えさせない事なんでしょうね。

きっとそんな気持ちで、いざという時に着る「とっておきの一着」は、どんな高額なウェアよりも眩い輝きを放つ事でしょう。
3万円のTシャツには負けますがhappy01

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コメント

こんにちは!いい日曜ですね・・(-。 -; )ちっ・・ (職場より)

毎回面白い記事拝見しております。「若いもんはええのう。」なんて思っちゃう歳にいつの間にか自分もなりました。でもとくに学生時代・社会人新人のころ、若いときって苦しいことばかりだったような気がします。あの歌のように・・・

「青春時代」
阿久悠作詞・森田公一作曲

卒業までの 半年で
答を出すと言うけれど
二人が暮らした年月(としつき)を
何で計ればいいのだろう
青春時代が夢なんて
あとからほのぼの想うもの
青春時代の真ん中は
道に迷っているばかり

二人はもはや 美しい
季節を生きてしまったか
あなたは少女の時を過ぎ
愛を悲しむ女(ひと)になる
青春時代が夢なんて
あとからほのぼの想うもの
青春時代の真ん中は
胸に刺(とげ)さすことばかり

青春時代が夢なんて
あとからほのぼの想うもの
青春時代の真ん中は
胸に刺(とげ)さすことばかり

社会人になって、今の業種に入ってからも職人社会なのでマニュアルなどなく、教えられるのではなく、盗んで覚えるという感じでした。でもそれは自分を変え、親方=社会に適応していく過程だったと思います。でも今は仕事が充実してます。やっぱり経験て積み重なるものだと思います。
ところでテレビで学生などが「若いうちだから・・楽しまなきゃ・・」なんていってるのを聞くとなんだか年寄りにみえます。若さって悩むことではないでしょうか。だからこそ成長したとき歳をとったときうれしいことがあるような気がします。こんなことをいう私は昭和の人?( ̄へ ̄; ムムム

のん様 「青春時代」は私も多感な時期によく聴きました。
ちょうど、二歳年下の従弟がシングル、アルバム共持っていて、鬼のように聴かせてくれたものですhappy01
歌詞を拝見して、久しぶりに昔を思い出しました。
ありがとうございました。

おっしゃる通り、のんさんに限らず、私たちの学生時代、社会人ビギナーの頃は、何かと悩みも多かったですね。
まさに「道に迷っているばかり」で。
でも決して今の若者も、迷いが無いとは思いません。
ワーキングプアやネットカフェ難民が社会問題化する現在、やり甲斐と収入を天秤にかけ、彼らも必死なのだと思います。

今回の記事でお話した彼女も、関西から一人で名古屋へやってきた訳ですから、何かと不安なのでしょう。
でもその不安を、若さのエネルギーが上回っている。
先が見えないという事は、可能性が無限大という事と同義のような気もします。めちゃくちゃができるんですね。

私のように年を重ねてしまうと、「こうすればこうなる」という経験則に縛られて、何をするにも先が見えてしまう。
これが良くないのかもしれません。
彼女に感じた眩しさは、そんな自分に感じたジレンマの照り返しだったのかもしれませんね。

でもそれはそれ。これもおっしゃる通りですが、積み重ねた経験は何よりも大事です。結局「情熱と経験のバランスの取り方」が重要なんでしょうね。
きっとこれは昭和、平成を問わず、不変のものと思います。
「最近の若い者は」と「何でもアリ」の定義は、時代とともに変わってゆくものですからhappy01

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