我が闘想
「朝から降るなー。」
今日の名古屋は一日雨。予報どおりとはいえ、これだけ暗い空に閉じ込められると、なんとなく気も滅入るというもので。
しかも結構寒くて。部屋着もちょっと季節が逆戻り。
巣箱へ牧草を引っ張り込んで、コタもすやすやと眠っています。
まー平和と言えば平和ですが
実はここ数日、「ネヴュラ」更新をお休みしていたのには理由がありまして。
一つはゴールデンウィーク明けで、溜まっていたお仕事を片付けていた為。
でも、それよりも大きかったのは、例の「宇宙船映像倶楽部」の余波なのでした。
例の「新・特撮ヒーロー構想」の企画書送付から、はや5日。
「またその話?聞き飽きたよ」なんて声も聞こえてきそうですが
顛末を未見の方は、まずこちらからご覧下さい。
4月1日(火)『奇跡の復活』
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2008/04/post_94fd.html
5月7日(水)「昭和から宇宙へ」
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2008/05/post_2ba3.html
書き貯めなどせず、毎日の気持ちをライブ更新している「ネヴュラ」ゆえ、どうしてもその時の集中度の高さが記事に反映してしまうのでした。
変わり映えしない話題でごめんなさい。興味ない方はどうぞスルーを
結果はどうあれ。どんな事に対しても、それなりにベストを心がける一本気な性格に加え、企画実現化という、またとないチャンスに気合も入りまくった私は、今回の企画に力を入れすぎたきらいがありまして。
今、ちょっと虚脱状態なんです
要は、疲れちゃって何も手に付かない状況なんですね
もちろん日々の糧であるお仕事には、当然ながら気合も入れますが、それ以外のことはもうヘロヘロ。ボーッとしちゃって、今日なんかまる一日寝てました。
雨で暗い部屋、ひんやりした空気も幸いして、睡眠には絶好のシチュエーション。
寝覚めのアリシア・キーズも気持ちよく
で、よくよく考えてみれば。
この虚脱状態の原因は、企画作成のモチベーションとは別の部分にもあったんです。
今回の企画は、以前から漠然と思い描いていたヒーロー像の具体案である以上に、普段「ネヴュラ」でさんざんお話している私見を、すべて出し切っちゃったようなものなんですね。ですから今はもう、頭の中は本当にカラッポ。要は「ネタ切れ」なんですよ
加えて、何かいつもの私見をヒネリ出そうとすれば、どこか今回の企画のネタバレっぽいお話になってしまう。それだけ、私の芯の部分を凝縮した企画だったんです。
「さあ困った。これじゃ何にも書けないよー」
こんな事もあるんですねー。面白いと言えば面白い現象ですが
確かにこういう経験は、以前から何度かあります。
いずれも「出し切った」という充実感を覚えた企画立案、番組制作の後に感じるものですね。心地よい疲れと言うか。
企画立案の場合、その思いは特に顕著です。
番組制作はある意味ルーティンワークなので、覚える感動もそれなりに留まるんですが、その時々の自分の全てが露となった企画を発表する、という体験は、ある意味、日頃のストレス発散にも似た快感を伴うものなのです。
ご同業の方ならよくお分かりでしょう。お仕着せの企画ではなく、温めていた「入魂の一作」をプレゼンする高揚感を
特に今回は「特撮ヒーロー作品」という、まさに私の命題とも言えるオーダーでしたから、これ以上思いのタケをぶつけるネタもないわけで
そんな訳で。今日はちょっと「思いを伝える苦労」について、とりとめもなくお話してみようと思います。まーせっかくの機会ですから、おバカな苦労話をしたためておくのも記念になるかと。いつも以上にショボいお話です
でも皆さん。「こういうヒーローが見たい!」「こんなヒーローは今まで無かった!」なんて思いは、皆さんの胸の中にも絶対ありますよね。
特撮映像に魅せられ、スクリーンやプラウン管のヒーローに熱い声援を送ったご経験をお持ちの方々なら、そんな思いを持たないわけがありません。
でも実際、それを何らかの形で、他人に伝えようと思ったら。
これはもう、想像を絶する作業なんですよ。特に凡人以下の私にとっては
雑誌「宇宙船」復活号(4月1日発売号)をお持ちの方は、ちょっと件の企画募集ページをご覧下さい。
そこにはプロット案の例文として、雨宮慶太監督作「牙狼 白夜の魔獣」のプロット説明が採録されています。
これを見ればある程度「プロット」というものの概念は把握できるでしょう。
シナリオとの違いもよく分かると思います。
しかしながら、「新ヒーローの構築」というオーダーからすると、ちょっとこの文例では足りない部分があるんですよ。この点は雨宮監督も説明されていますね。
「プロットには書式などない」「参考にしてちょうだい」と。
というのは。実は私、「牙狼」を見たことが無いんですが、未見の人間が、あのプロットだけを見て「牙狼」の世界を把握するのは不可能なんですよね。
これはあくまで参考資料。プラスアルファが必要なんです。
雨宮監督もそこを期待して、あえて大事な部分を伏せたのかもしれませんが。
「新ヒーロー」って、文字通り「誰も見たことのない、新しいヒーロー」って意味ですよね。という事はつまり、プロット案の前に「ヒーローそのものの説明」が絶対必要なんですよ。
このヒーローはどういう存在で、何に対して戦い、何を守るのか。
で、そのドラマを通じて、いったい何を主張したいのか。
「テーマ」を描く目的で「ストーリー」がある訳です。
それは私も、駆け出しの頃に先輩からこっぴどく叩き込まれました。
「この番組のテーマは何だ?」
「お前はこの番組を通じて、いったい何が言いたいんだ?」と。
テーマやメッセージは作品の骨組み。
ドラマ制作とは、テーマという骨にストーリーという肉を加えていく作業なんですから。どんなドラマだって、その部分は絶対に外せない訳なんです。
逆に、テーマなしでドラマを作れる脚本家が居たら、その人は天才かもしれませんが
ですからすべての世界観、設定、ストーリーは、テーマから逆算される必要があるんですね。
本来、プロット案と言えど「私はこれを言いたいから、このヒーロー、ストーリーを考えた」という説明が、まずあるべきなんです。
現在皆さんがご存知の、既存のヒーローを使う場合は別ですよ。
それらは既に世界観やテーマが、ある程度構築されていますから。
「ウルトラマン」と言えば「あー大体ああいうお話だな」と分かる。
これは、作品のテーマがもう出来上がっている事の証明です。
古今東西、これは不変ですね。
でも今回のオーダーは「新ヒーロー」。
時代設定から世界観、ストーリーまで、想像すら出来ない案を「他人に伝える」訳ですよね。これはもうあらゆる知力、文章力を駆使して、自分のビジョンに近い表現を模索する以外に方法がないんですよ。
なにしろそのヒーローは、まだ世の中に存在しないわけですから。
「○○風の」「○○に似た」という表現を使えば簡単ですが、それは受け手の想像力を限定してしまう弊害がありますし、何より、自分に対して負けを認める事になります。
既存のヒーローと共通点を持つという事は、その時点で「新しい」というオーダーに反していますし。
何より、オリジナルと同じ事をやっていては、絶対にオリジナルを超えられないですしね。
既存のヒーローから考えていては既に遅いんです。
そのヒーローが生まれる前から考えなければ、オリジナルとなる事は出来ません。これは間違いないと思います。
おそらく今回の企画募集、デザイン・プロット・イメージボードの三本立ては、一般の方々に分かりやすく、イメージを形にしてもらう為の措置だったと思います。
確かに業界関係者でなければ、企画の説明手法や「読み手を乗せる」言い回しなどは難しいですし。おそらくまずビジュアルやストーリーなどの「パーツ」を集めて、それを叩き台にテーマを決めて行こうという「逆発想」ですね。
それはそれで面白い試みとは思いますが。
でも私はまず、そこでつまづいてしまいました。
「いや。テーマが先でしょう」と。
ここが古いオタクの性。
「なんでもいいじゃんカッコよければ」が許せない性格なんです。私。
第一、その発想では「キカイダー」なんて絶対に生まれない筈ですから
ですから今回私は、企画意図(テーマ説明ですね)や世界観、ヒーローの設定説明に、企画書の三分の二を費やしました。
枚数にして、A4約10ページ。ビッシリと
プロットそのものはその後。5ページ程度に過ぎなかったんです。
実に懇切丁寧。テーマから始まり「このテーマだからこの設定、このストーリー」という説明に、徹底的にこだわりました。
あまりにガチガチな設定も面白みがないですが、とにかく「言いたい事は分かった」と思わせる事に全力を注いだのです。
とりあえずそこをクリアしなければ、相手には伝わらない。
新しい作品には、必ず新しいテーマや世界観の説明が必要となる。
そうでなければそれは「思いつき」。「企画」ではありません。
過去、思いつきと企画の狭間でさんざん悩んできた、私の結論です。
まー今回の募集は、あくまで雑誌の読者企画。「思いつき」でいいのかもしれませんね。そこまで本気になる必要もないのかも。
でもやるからには、後悔したくないですしね。
とはいえ私の企画も、世界中を探し回ればどこかにある物かもしれません。
まー私なんぞの考えですから。オリジナルと言えど、たかが知れてますしね
でも、その苦労の跡は、やはりそこかしこに表れているとは思います。
「まだ無い物を説明する」って、本当に至難の業なんですね。
1963年。「WOO」をフジテレビにプレゼンした金城哲夫氏は、きっとこの現実が骨身に染みた事でしょう。
当時、「不定形生物」というヒーローの設定を他人に理解させる難しさは、想像を絶するものがあったに違いありません。
でも先人はそれを越えてきた。私はそこに強いシンパシーを感じます。
今回の企画は、そんな先人たちの思いを追体験できるという意味でも、非常に深い意義を感じますね。本当に貴重な体験でした。
本当は、編集部で直接プレゼンなんて機会が与えられれば、もっと良いんですが。実は得意なんです。そういうハッタリも
愚にもつかない独り言にお付き合い下さり、ありがとうございました。
でももう一つ。これも偽らざる本音ですが。
私のような古い者の下らない企画より、本当は、斬新で突飛な発想を掲げた、若い人たちの登場に期待しているんです。
「えーっ!この手があったの!いやーやっぱり、今の人は凄いなー」とビックリするような新企画を、私自身も待ち望んでいるんですね。
募集に踏み切った初代部長、雨宮監督も、きっと同じお気持ちと思います。
「テレビは若い人の活躍の場だ」とおっしゃった故・円谷英二監督の言葉が、強く心に響きますね。
当時のウルトラマン制作スタッフの平均年齢は20代だったと聞きます。
やはり想像の翼は若者の方が強く、たおやかにしなるのです。
いつまでもウルトラ・ライダー・戦隊・美少女・パロディーじゃないでしょう。
オールドファンのドギモを抜くような斬新な案が、若い人から生まれて欲しい。
その人こそ、新時代の特撮界を率いる「ヒーロー」なのかもしれませんね
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