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2008年4月23日 (水)

特殊合金製お化け屋敷

Photo いやーやっぱり、表紙にこの勇姿があしらわれていると、どうしても手が伸びちゃいますね。
即買い

実は昨日手に入れたものですが。
皆さんもきっと、お近くの書店でご覧になったでしょう。
『別冊宝島 僕たちの好きなウルトラマン [ウルトラマン・シリーズ誕生編]』。
宝島社の「僕たちの好きな」シリーズは、これまでかなりの数が刊行されていますね。
文学や人物、映像作品など様々なジャンルにまたがり、一冊でそのテーマ世界を鳥瞰できる、ビギナー向けの編集方針に好感が持てるシリーズです。

この新刊をはじめウルトラシリーズの特集本も何冊か刊行されていますが、実は私、これまでは、ちょっと薄味の内容に今一食指が動かなかったのです。
これは「ネヴュラ」読者の皆さんも感じられている事ではないでしょうか。
私だけだったらお詫びしますが

ところが今回のこの新刊、これまでのシリーズと少し立ち位置が違っていまして。要は「ウルトラQ」と「ウルトラマン」を関連付けて捉えている所が新しいんですね。
テーマ、テイスト、スタッフ編成、時代背景など、決して切り離して考えられないこの二作品に同時にスポットを当てたところが、私をレジへと向かわせた大きな要因なのでした。

その内容も、初放送後42年の時を考慮した「現在の視点」で作品を語っているところがお気に入り。一話一話に添えられた一口解説に過ぎませんが、ライター諸氏の大人の視線、ファンの共通認識が心地よい一冊でした。
この一冊、おそらくしばらくは「ネヴュラ」執筆の友として重宝する事でしょう。
1,000円以下の価格も、お財布に優しいし

Photo_2で、何よりもこの本に惹かれた理由は。
もうサブタイでお分かりでしょうが
表紙の一角に添えられた、この告知。
「ふ、ふろく付き。しかも科特隊基地って
やっぱり即買い 

「そんな事だと思った」なんて声が、ギルの笛のように襲いかかります

いやーいいですねー。マン放送当時の雑誌掲載状況は完全把握していないので分かりませんが、科特隊基地の組み立てふろく(意地でもペーパークラフトなんて言いません)は初めて見ました。
考えてみれば、あの特異な形状は組み立てふろくにもピッタリですよねー。加えて往年のファンの購買意欲をそそるキラーアイテム。良い所に目をつけたと思います。
「紙」というのが良いんですよ。このチープさが

Photo_3で、案の定、ふろくのパーツは表紙と裏表紙の裏面に印刷されているという。
うーんこれじゃー、組み立てるにはもう一冊必要かなー?
ここで「なんで別紙になってないの」と怒らないのが大人の優しさ。

きっと別紙にしたらコスト高により、このふろく企画そのものが通らなかったんだろーなーと。
その台所事情を思いやりましょう。きっと同年輩が作ってるんだから


Photo_4こんな記述が載っているのも楽しいですねー。
ウルトラマンが親子二代に渡るヒーローという事を再認識させてくれます。

考えてみれば、これは凄い事ですよね。科特隊基地やジェットビートルは子供も知っていても、シルバースターやシュピーゲル号は知らないと思いますし。実にホンニョゴニョ~ンな現状です



さて。以前、「ウルトラマン」に於ける科特隊の位置づけについてお話した事がありましたね。
ウルトラマンという作品は、そのドラマのほとんどが科特隊の描写に費やされているという勝手な私見で。お恥ずかしい限りでしたが


2007年5月28日(月)『空想特撮シリーズ「科学特捜隊」』
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2007/05/post_c5d4.html


Photo_5超科学兵器を使いこなし、怪事件を捜査する国際的科学捜査チーム、科特隊。
ウルトラマン全話に渡って、彼らの勇壮な活躍は充分に描かれていました。

その近代的イメージの一翼を担ったのが、この「科特隊基地」である事は誰もが認める事でしょう。
ちょっと考えてみたんですが、近代設備が網羅された「基地」に居を構えた科学捜査チームの設定って、「ウルトラマン」が本邦初だったんじゃないでしょうか。

国産SFヒーローの黎明期。アトム、鉄人、エイトマンの三大パターンが産声を上げた時代においてさえ、彼らの活躍背景、言わば「ピット」としてイメージされるのは「研究所」であり「工場」だった訳で。
実写ヒーローに目を移してみても、そこには圧倒的な「探偵事務所」の存在があるのです。月光仮面しかり。まぼろし探偵しかり。少年ジエット(「エ」は大きいんですよ)しかり。


Photo_6確かにハイブリッドな意匠の集合体であった「ウルトラマン」ですが、現在では当たり前になっている「防衛チーム基地」という設定も、既に初作の時点で完成の域に達している所が凄いですよね。
何しろこの「怪獣・ヒーロー・防衛チーム」という位置関係は、最新作に至っても身じろぎもしない訳ですから


「ウルトラマン」事実上の叩き台となった企画案「科学特捜隊ベムラー」によれば、科特隊の設定として「警視庁の刑事達では手に負えない怪事件や異変を専門に捜査云々」の記述があります。
確かに「国際科学警察機構の日本支部」という設定もありますが、扱う事件の特異性が「人間社会のルールで推し量れないジャンル」である事も明白。
その点から彼らは「科学刑事」であると同時に、怪事件を科学的に「推理」する「探偵」的な香りも大いに感じられるのです。

さらにはテレビドラマ黎明期に見られた「探偵ドラマ」のスケールアップ的発想も手伝っていたとすれば、これはもう間違いなく
この視点は以前、拙記事に頂いたお仲間、市川大河様のご研究によるコメントから発展したものです。
この場をお借りして市川様にお礼申し上げます。ありがとうございました。


余談ですが、こういうお仲間とのやりとりを通じて解析や私見に磨きがかかるというのも、ブログの大きな魅力の一つですね。
つくづく、私は多くの皆さんに支えられているなあと感激しています

しかしながらこの辺り、それまでにない組織の構築に腐心した番組スタッフのご苦労が偲ばれますね。既存の作品からイメージを持ち寄り、初作にして理想的な設定を完成させた先人たちの偉業に、今さらながら感服するばかりです。


Photo_7さて。そんな彼らエリート隊員が、地球防衛の重大任務に勤しむ「科特隊基地」。
これはもう「マン」世界に於ける、地球科学のシンボルですね。



最新鋭の機材、武器、レーダーなどは当たり前。庶民が扇風機で暑さをしのいでいる時代、全館エアコン完備という
さらに外壁は、外部からの不意の攻撃に備えて、あらゆる熱線、光線を阻止する特殊な合金が加えられた鉄筋コンクリート製。まさに「電子の要塞」です。

まー確かに、世界の頭脳とも言える岩本博士など、そうそうたるメンバーがその英知を結晶させた基地であるだけに、その守りも鉄壁というわけですね。


ただそのハード面に比べ、運営する隊員等ソフト面には、宇宙人など知的侵略者がつけいる隙も多かったような気がします。
と言っちゃうと、シリーズ中幾度となく繰り広げられた「基地内での攻防」を肴にした隊員ツッこみに繋がりそうなものですが、私はあえてそちらへは走らず、そういう作劇・名場面の構築を可能にした「基地」という秀逸な設定に感服するんですよ。
例えば、ザラブ星人やケロニアが視聴者にあれだけの知性を印象付けられたのは、「地球人の懐」たる基地で展開する知略戦ゆえなんですね。
地底人・アンヌにしたって同じです。ブルトンなども忘れられないですね。

Photo_8ムラマツ隊長以下隊員の温かなキャラクターゆえ、サスペンスフルな展開も若干は安心して見えますが、科特隊が危機に晒されるって、実は「マン」世界ではかなり危ない出来事なんですよね。
敵に手の内を見せちゃう訳ですから。

その恐ろしさを最大限に感じさせたのが、最終回「さらばウルトラマン」である事は、皆さんもお分かりではないかと思います。
つまり「基地」という設定は、地球人の科学性、隊員のエリート性を表すと同時に、侵略者の能力や知性をアピールする場でもあるのです。


この防衛基地という設定は次作「セブン」で頂点に達し、また侵略者との攻防の舞台に使われる事も多々ありましたが、その後のシリーズでこの「基地」が効果的に使われたかどうかと言うと・・・
これは私には語る資格がありません。何しろ新マン以降の作品には非常に怪しい知識の私。「えーっオタクイーン、あのエピソードを知らないの?」なんて思われた貴方、無知な私にどうぞご教授を

さて。テレビ業界の末席を汚し、曲がりなりにも「番組構成」なんてものを手掛けるようになると、かつて見ていた番組のストーリー構造や基本設定などに目を向けざるを得なくなるんですが、そういう視点で見ても、この「基地」という設定は秀逸ですね。

誤解を恐れずに言えば、クリエイターはストーリーを構築する時、必ず「逃げ場」を作ります。
ストーリーが複雑になりすぎる時、どこかで視聴者に「今起こってるのはこういう事なんですよ」と説明するシーンが必要。一種の「仕切り直し」ですね。
「ウルトラマン」の場合、科特隊基地がこの「仕切り直し」の舞台にピッタリなんですよね。
要は科特隊基地は、ストーリー構築上でも「基地」なんです。
以前にも似た事をお話しましたね。「仮面ライダーではストーリーの骨子を、まずショッカー本部で首領が説明する。」この作劇術に通じるものがあります。


お話の先が見えなくなったら、基地へ戻ってくればいい。
金城哲夫氏以下当時のウルトラマン脚本陣も、きっとあの特殊合金製の要塞を「ストーリー構築の基地」にしたんじゃないかなー、なんて、凡人の私などは考えてしまうのでした


Photo_9色々な意味で重要な位置にある「基地」。
作戦の立案は元より、隊員の心情吐露やディスカッションの場としても使われ、またテーマを語る舞台としても絶好のステージである「基地」という存在は、これからも続くであろうウルトラシリーズの中で一層の重要度を持つ事でしょう。
前述の「ベムラー」企画書の中で、この基地が「お化け屋敷」と呼ばれていた事は有名ですが、私にはこの設定こそが、お化け的に飛びぬけた発想に思えます。
ウルトラマンという「お化け番組」にふさわしい呼び名かもしれませんね。


ちなみに。劇中でも語られている通り、科特隊の本部はパリという設定ですが、全話を通じて、このパリ本部はついに映像化されませんでした。
「うーんパリか。エッフェル塔ぐらいしか知らないなー。フランソワーズ・モレシャンと」なんておバカを言っていた私ですが、このお話の為に資料をめくっていたら、なんと当時の雑誌にパリ本部の図解が


Photo_10それがこれです。
なんと本当にエッフェル塔の近く。やっぱり本部も基地になっていたんですねー。いやービックリ。

写真が小さい上、手ブレなどで見にくいですが、なんとなく雰囲気がお分かり頂ければ幸いです。
(全ての写真はクリックで拡大します)



世界各国にこんな支部がある設定なら、支部対抗の実力検定なんてあったかも。でもこれは日本が一番でしょうね。
宇宙人が隊員の支部なんて、世界の何処にもなかった筈ですから

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コメント

MIYUKIさま、こんにちは!!
科学特捜隊パリ本部の図解に感動してしまいました!
本当にエッフェル塔やセーヌ川にほど近い街中なんですね。
パリの街並の中にこの基地がある風景は素敵です!
隊員はやっぱりオレンジ色のユニフォームかな・・。
こういうこと想像するの楽しいです。(^-^)

ご紹介&トラックバックありがとうございます!
科特隊基地がオタクィーンさんのような機能の仕方をしていた背景は
おそらくもちろん、飯島敏宏監督や藤川圭介氏による
『月曜日の男』からだと思うのですが
その一方で、60年代までの日本の価値観を形成していた
家族主義みたいなものがあったのじゃないかと思うんですよ。
登場人物が、何があっても戻ってこれるプラットフォーム。
ある意味、そのプラットフォームの崩壊を主軸にしたのが
昭和推理劇の究極の、横溝正史による推理小説世界かなと。
だからある意味、横溝推理における「旧家の崩壊」は
東映のヒーロー番組の、悪の組織の内部崩壊と
どこかで通じているのかな?が、自分の中にあったりします。

先日のスペシウムの件
オタクィーンさんと幸せな合致がみられて嬉しかったです。
そこから発想して、実はオタクィーンさんと自由人大佐さんに
お願いしたいコラボを思いつきました。
そのうちご連絡を入れることもあるかと思いますが
その時は前向きに検討くださいね!

MIYUKIさま、こんにちは。
先ほどのコメントに追加させてくださいね。
科学特捜隊パリ本部のイメージってこんな感じかな・・。
大阪のサントリーミュージアム[天保山]が図解の絵にぴったりです。
http://www.suntory.co.jp/culture/smt/about/floor.html

以前大阪に遊びに行ったときから、ウルトラマンの基地っぽいなって、
思ってました。カッコいい建物なんです。

hikari様 返事が遅れ、申し訳ありません。
貴重な情報ありがとうございました。
サントリーミュージアム[天保山]さっそく拝見しましたが、本当にパリ本部のイメージそのままですね

もし初作のウルトラマンがリメイクされたら、間違いなくこのミュージアムは「パリ本部」のロケ地に採用されるでしょうね。
こんな建物があったとは。きっと設計者は科特隊ファンでしょう。

パリ本部の図解は私も初めて見ましたが(自分の資料ながらお恥ずかしい限りで)これはこれでウルトラの世界観を守った好図解ですね。
こういう設定が夢想できるのも、ウルトラマンの世界観がしっかり構築されていた証拠と思います。

楽しい情報ありがとうございました。こんな素敵なフォローに「ネヴュラ」は支えられています

市川大河様 文中にお名前を使わせて頂き、申し訳ありませんでした。
今回の記事作成においては、以前頂いた市川さんの解析を避けて通るわけには行かず。無礼と知りつつも。
ご快諾頂きありがとうございました。

私が「基地」をプラットフォーム的解釈と捉えた背景は、確かにおっしゃる通り、日本人の旧家主義、大家族主義の影響があるとも思いますね。また最近、前時代的になりつつある当時の終身雇用の考え方も、影を落としていたのかもしれません。

ただ科特隊の場合、そうした団体生活、運命共同世界のプラス面をうまくすくい取っていた印象がありますね。
ムラマツキャップはじめ各隊員の極めてスペシャリティスト的な描かれ方、また各々の個性を活かした空気の創出は、ある意味理想的な組織のあり方とも思えるのです。
そういう意味で科特隊は、団体主義的意匠を持ちながらも、個性を尊重する現代の組織理念を先取りし、絶妙のバランスを保っていたのかもしれませんね

横溝作品に顕著に現れる旧家崩壊の図式は、私には「世代交代の象徴」とも取れました。
伝統や家名を重んじる世代の考え方を新しい世代が改革していく。
そこに生まれる軋轢は、カリカチュアライズされながらも東映ヒーロー物の敵組織崩壊に通じるのかもしれませんね。
また、東映ヒーローの敵組織構造が、ことごとく同社時代劇のそれを参考にしていたように思える私は、そのあり方が極めて日本的である事も納得できます。結局ショッカーも「金目教」であり「卍党」なのかもしれません

ご連絡、楽しみにしております。
こうしたおつき合いから、また新しい動きが生まれるといいですね


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