2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

私信等はこちらまで

無料ブログはココログ

« 特殊合金製お化け屋敷 | トップページ | ウルトラキュー »

2008年4月26日 (土)

カメラの外の劇場

「うわっ。よく編集が間に合ったなー。」
先ほど、たまたま目にしたオンエアに、思わず唸ってしまった私。

業界の片隅で細々と暮らしていると、時々そんな光景に出くわします。

昨日の事。私は番組編集の為、いつも通り局の編集室に向かいました。
編集室は、当日の編集番組スケジュールが部屋の外に掲示され、番組ごとの編集予定時刻が一目で分かるようになっています。
幸いな事に、私は自分の番組を長期間担当している為、編集のツボや所要時間などもすべて把握できる状況。まー慣れですね。
熟練の編集マンに助けられ、予定より短時間で編集を上げられます。

ところが。編集は早めに終わったのに、編集マンが妙に落ち着かない様子。
不意に編集室にプロデューサーが現れ、「ディレクターが云々」と説明するなど何とも不穏な空気。
空気の元は、私の後に編集が予定されていた番組についてのようでした。
それなりに場数も踏んでいる私は直感。
これはこの時期、よくあることなんですよ。

要は、4月から新しく番組を担当した新人ディレクターの不慣れや、番組そのものが新しい場合の、編集時間へのしわ寄せなんですね。
番組のテイストやツボの把握がまだ出来ていないから、いたずらに編集時間が長くなってしまう。
番組によってもまちまちですが、通常、深夜に放送されているVTRバラエティーなどの場合、長くなると2日や3日は軽く編集に費やされますから。
その采配、編集の指示は全てディレクターの実力次第。
そりゃー編集マンも不安になるというものです。
確かに、編集で粘る事で作品のレベルが向上する場合もありますが、一般的に、悩んだ作品ほど出来は芳しくない場合が多いです。
編集マンも人間。長時間の作業による集中力の低下も、良い結果をもたらさない一因と言えましょう。
「粘りがもたらした名作」という触れ込みの作品も、現実は語られている内の一握りに過ぎないのでは。それが現場の雰囲気を肌で感じる、私の意見です。


私はその番組の放送日時を知らなかったんですが、なんと今日だったとは。
しかもたまたま目撃してしまいましたeye

確かにその番組は前述のバラエティーなどではなく、お堅い情報番組。
編集時間もそれほどかからないだろうと思われる内容でしたが、昨日の編集マンの様子から見て、ディレクターが不慣れな事は予想できました。
「苦労したんだろーなー。カット割りや繋ぎも力技っぽいし。」
見終わった感想はそんな所。「新人ディレクターをカメラや編集がフォローした感」がありありと見えhappy01
実に初々しい作品でした。


私にもこんな頃はありましたから、まるで昔の自分を見るように懐かしかったんですが、ともあれ編集時のご苦労が偲ばれるものでhappy01
昨日の編集開始から今日のオンエアまでの時間を知ってしまった私ゆえの驚き。昨日の17時が編集開始で、今日の17時が放送ってimpact
冒頭の言葉の意味がお分かりと思います。


かつて、業界に入りたての新人さんは、よくこんな驚きを漏らしました。
「30分の番組って、30分で出来ると思ってました。」

まーさすがに最近は、ここまで無知な新人さんも少なくなりましたが、今でもスポンサーの担当者でこうおっしゃる方は多いですね。
それは仕方がない事なのかもしれません。
編集作業に立ち会われるスポンサーの皆さんは、まず間違いなく「編集ってこんなに時間がかかるの?」とうんざりされますねhappy01
それはたとえ、作業がデジタル化されたノンリニア編集の現在でも同じです。
どんなにシステムが効率化されても、カット繋ぎのリズムやセンスは人間に任される訳ですから。そこが上手く決まらなければいつまでたっても進みません。
番組を見ていると、私などはそういうところばっかり気になってしまう。
これはテレビ屋ならではの、一種の職業病なのかもしれませんねhappy01


よく思うんですが、映像作品の良し悪しを一般客が判断する基準の一つは、脚本はもちろん演者なども大きな要素ながら、やはり編集タイミングやリズムが観客の生理に近いかどうかではないかと思います。
例えば「このセリフの時、観客はセリフを喋っている役者の顔が見たいのか、あえて感情が表れる手元が見たいのか、震える肩が見たいのか、セリフを聞く相手役の表情が見たいのか。」
これを的確に判断するのがディレクターのセンスなんですね。

しかもそれら各カットの切り替えが、いかに観客の心の動きを察知しているか。
これはセンスを超え、ある種才能に近いものなのかもしれません。
それが観客の生理に合っていればいるほど、「良かった」という印象を与えられるのです。

ですから「ストーリーは面白いんだけど、何となく伝わってこなかった」なんて印象を持つ番組は、きっとカット割り、編集センスの問題も大きいのでしょう。

ちょっと専門的になりすぎましたねhappy01
別に難しい事をお話したい訳じゃないんです。今世間に溢れている全ての映像作品は、私にはもう、そういう風にしか見えなくなっているんですよ。
しかも冒頭にお話したように、放送されるまでの経緯、普通に放送されている事がいかに奇跡的な事かなんて部分まで見えてしまう。
望むと望まざるに関わらず。
これが非常に「健全な視聴眼を邪魔する」んですよweep
でもこれは、どんな業界にも当てはまりますよね。
製造業に従事されている方はライバル社の製品に、サービス業の方はライバル店の接客に、それぞれ努力の跡が透けて見えるはずですし。
私の場合、それが映像作品というだけの事です。


しかしながら、もう一つ思ったことがありました。
それも、今日点けていたテレビでの一幕だったんですが。
名古屋では今日、ある局の公開イベントがありまして。
雨の中、屋外で名古屋各局の女子アナウンサーが一人ずつ顔を揃えたんですが、その中に、たまたま一昨日一緒にお仕事をしたアナが居まして。

よく思うんですが、彼女たちに限らずアナウンサーって、決して疲れた表情や極端な感情表現をしませんよね。これはいつも一緒にお仕事をしている私から見ても、大変な事じゃないかと思うんですよ。


彼女たちの勤務シフトって結構ハードで、例えば深夜のニュースなんかにシフトされると、夕方出勤で徹夜、そのまま翌朝からロケで夕方まで勤務なんて事だってざらにある訳です。
24時間勤務!「どうするの?そんな時」なんて聞くと、「そりゃ仮眠しますよ。しっかりメイクも落として。じゃないと体がもちませんから」なんて笑って答えてくれるんですが、やっぱり大変ですよねー。
スポットライトの影で、いかに過酷な勤務に勤しんでいるかが偲ばれます。

実際、深夜に局内を亡霊のようにうろつく彼女たちの姿を見る事も多いですし。
その時のコンタクトなし、メガネ着用、スッピンの姿はもう(以下自粛)
楽なお仕事なんてありませんねー。
「そんなのどんなお仕事だって同じだよ。アナだけじゃないし。」と思われる方もいらっしゃるでしょう。本当ですよね。
楽なお仕事なんてありません。みんな同じです。


そんな「カメラの外」を見る度に、私などはつくづく「アナウンサーやタレントも、プロである自覚がないと出来ないなー」と感服するのです。
どんなに感情にわだかまりがあっても、一度カメラが回れば、そこは番組趣旨に則ったキャラクターになりきる。それがプロなんですよね。


昔、吉本興業のコンビ芸人さんとお仕事をする機会があったんですが、彼らは取材前に、必ず取材先の情報と台本を熟読、「ここは俺がこうボケるから、お前がツッこめ」「ここはこういうリアクションを引き出したいんですね」などなど、非常に綿密な打ち合わせを要求するんですよ。
で、カメラが回れば、彼らは実に的確な立ち回りで、素人さんをうまくあしらってくれる。見事なものです。


これが上手くいっているかどうかは、自分が演出していない番組を見てもよくわかります。
最近では、サバンナのお二人によるリポートに出色の出来がありました。

やはり彼らもプロなんです。新人女性アイドルのフォローも含め、そういう芸当は場数を踏んだプロだけの技。
その絶妙なタイミングは決して偶然ではないのです。
その良し悪しを見分けられるのも、業界関係者の特権なのかもしれません。

これだって、どんな業界にも当てはまりますよね。
接客業に携われている方々など、顧客に対する日頃のご努力、ご苦労には本当に頭が下がります。
そういう世界の取材経験もありますから、余計に分かるのです。

リスキーな編集時間やアナ、タレントの努力。功罪ありつつも、私にとって「カメラの外」が見える事は、あらゆる局面で役に立っているような気がします。
そこでは人間を見る目も養われるような気も。
人間性って、実はカメラが回っていない時の方が出るんですよね。
努力の様子とか。性格とか。


今日の最後は、私が最も感銘を受けた「プロ」についてです。
カメラが回る、回らないに関わらず、極めて明晰にしてハイテンション、スタッフをも鼓舞して番組のボルテージを上げ続ける、オーラ満点のその方は。


みのもんたさん。
彼とスタジオを共にした経験は、今も私の大きな糧となっています。

あまりの露出度に「三人いる」と囁かれているみのさんですが、その裏にはそれだけの努力があり、凄まじいプロ意識に惚れこんだ制作者のラブコールがある事を、忘れてはいけないのかもしれません。


お仕事の慣れにより、すっかり忘れていたそんな事を、久しぶりに思い出した出来事でした。とりとめのないお話でごめんなさいcoldsweats01

« 特殊合金製お化け屋敷 | トップページ | ウルトラキュー »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

 「何も考えずに楽しめない」というと、私の場合は音楽ですネ。演奏の技量ももちろんですが、アレンジ、ミキシング、昔の作品なら録音状態なんかも気になってしまって‥‥。リズムのズレやチューニングの甘さなど、レコード化・CD化されている作品にもありますし‥‥。まして、ライヴだとその傾向は顕著です。
単純に歌詞やメロディに一喜一憂できる人が羨ましく思ったりします(^^ゞ
 また、なかなかヒット曲が出なかったり、新譜の制作がままならないミュージシャンの焦りや立場なんかも知っていたりするし、チャートに乗せるためのプロモーションの実態も知っているので、私はヒットチャートは全く信用していませんし(^^ゞ 売れている歌がイイなんて、全然思いません。ビートルズだって、巧妙な戦略がヒットに繋がっていたんですし。まぁ、高いクォリティの楽曲を次々に生み出す才能はあったのでしょうが。

 シロウトながら、記録ビデオを尺通りに編集しなければならなかった経験もあります。どのシーンは切るか、どの順番でつなぐと効果的か、冗長な感じはしないかなど、非常に気をつかったことを思い出しました。オタクイーンさんは大変なお仕事をされているんですよネ。
 アングル、レンズ、コンテ、編集のタイミング、BGM・効果音の有無、照明なども考えながら、そんな視点でヒーロー番組や映画のDVDを見ると、また違った見え方を楽しめるのもわかります。私の場合は「楽しめる」という時点で、オタクイーンさんとは違う次元にいることもわかりますヨ~(^o^)/

 「特撮の手法を考えながら見る」というのは、特撮作品を見ることの楽しみ方の1つですよネ。ちょっとしたことでリアリティを増す工夫、『ターミネーター2』でサラ・コナーが収容されている病院をT-1000が襲うシーンで、鉄格子を通り抜けるT-1000の持っていた拳銃が鉄格子に引っ掛かるシーンに感心しました。T-1000の変形はCGのモーフィングで表現されていましたが、「複雑な機構を持つ機械には変形できない」という設定を再認識させてくれ、また同時に改めてT-1000が鉄格子を通り抜けたことを感じさせたシーンだったと思います。
また、居眠りをするガヴァドンBのいびきに、困った顔で窓越しに外を覗いている人たちのシーンでは、その窓にガヴァドンが映っていたり。
これらも、「何も考えずに楽しめる人たち」がいるのでしょうネ。自分も昔は「怪獣は着ぐるみではない」と思っていたくらいでしたし‥‥。でも、「考える」という楽しみも好きですが。

 芸人さんのリアクションも裏が見えてしまうということは、バラエティは楽しめないでしょうネェ~。知らずに騙されて(?)見ている人の方が幸せなのかも^^;

 「99999」まで、あと48!

自由人大佐様 なるほど。映像と同じく、音楽作品についてもこだわりの強い方はいらっしゃいますね。
私も昔、作曲家の方とお仕事をした事がありますが、やはり細かい部分のこだわりは凄い物がありました。
プロ、アマ問わず、こだわりを持つという事は非常に良いと思います。
そうした「譲れない部分」が、個人個人のオリジナリティー、魅力の源なんでしょうからhappy01

お仕事の仲間にも何人か「お休みの日にはやる事がないので、一日ゴロゴロして終わっちゃう」という人が居るんですが、そういう人は決まった趣味やこだわりがあまり無いんですね。
決してそんな人生を否定はしませんが、大佐さんをはじめ「ネヴュラ」のお仲間に比べ、人生を薄く生きてるなあという印象は拭いきれません。

どんな人も人生の時間は平等なんですから、もっとこだわりを持って生きる方が楽しいのに、なんて、他人事ながら思っちゃったり。
余計なお世話かもしれませんね。ごめんなさいhappy01

今回の記事にあったように、職業病のように番組の裏が透けて見える事は鑑賞上の妨げにはなりますが、私としては決して嫌じゃないんですよhappy01
前述の「こだわり」とも関連しますが、結局人生って一回なので、「どんな事でも、知らないより知った方が得」という考えがどこかにあります。
確かに友人にも、「そんな見方で楽しいの?」なんて言われる事は多いです。
でも一般の人が分からない部分まで見える事って、それはそれでお得感があるんですよね。
「作品のスケルトンモデルが見える感覚」は、決してマイナスではないと。
その分、本物を見分ける目も養える訳ですからhappy01

T-1000の鉄格子シーンを見た時、私を含め東宝特撮ファンはまず間違いなく「ガス人間第1号」を思い出したと思います。
そっくりの描写があるからです。
ただ、液体金属のT-1000に対し、「ガス人間」は体をガス状にして鉄格子を通り抜けます。しかもT-1000は例の「拳銃」の演出でガス人間を一歩リードしているのです。
ジェームズ・キャメロン監督は「ガス人間」を見ていたのでしょうか。彼ならあるいは・・・
こんな楽しい想像も、特撮ファンの特権ですねhappy01

芸人さんのリアクションについてはまさに「これが分からないとディレクター失格」の類ですねhappy01
接客業の方がお客さんの心を読むように、私達演出家は芸人の心が読めなければ成立しない。
まー分かりすぎてしまうのも、痛し痒しですがcoldsweats01

おかげさまで遂に、99999アクセスを迎えることができました。
日頃のご愛顧のおかげです。
これからも、末永いおつき合いをよろしくお願い致しますhappy01

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/104767/20586673

この記事へのトラックバック一覧です: カメラの外の劇場:

« 特殊合金製お化け屋敷 | トップページ | ウルトラキュー »