「虹の卵」新マン風味<Aパート>
「今度は私が、お婆ちゃんを守らなきゃ。」元気につぶやくピー子。
「ありがとうピー子ちゃん。今度はお兄ちゃんが頑張る番だ。」
サザメ竹のお守りを郷に渡すピー子。初めての笑顔。
いやー正直、今回はものすごく時間がかかりました。
まさか「新マン」世界の構築が、これほどまでに難しいものだとは。
お恥ずかしいお話、新マンに関してはほとんど知識も無かった私。「セブン」の段階でビギナー感覚でしたから、新マンなんてむしろアウェーなんですよ。
確かに本放送は立ち会いましたが、それも何話か見る内に初代との違和感が大きくなり、途中リタイアしちゃった苦い経験がありますから。
ですから今回の試みは、新マンの世界に正面から触れるいい機会になりました。
DVDを借りまくって、傑作と呼ばれるエピソードはほぼ全話鑑賞、懐かしさと新鮮な感動が入り混じった数日間を過ごさせていただきました(笑)。
で、本題の「虹の卵」。セブンの時はすんなり書けたのに、このエピソードを新マンに移植すると、私のおバカな頭ではとても処理できない矛盾にさいなまれまして。
要は、「虹の卵」は、もともと新マンの世界観ではありえないストーリー構造なんですね。これには本当に参りました。
こんな企画を始めなきゃよかったと(涙)。
ですから今回の『「虹の卵」新マン風味』は、オリジナルとはやや異なる設定、まったく違う展開を見せます。
今回はそのテーマ性に於いて、「セブン風味」よりもさらに別の世界、まさに「新マン」でしかありえないストーリーを目指しました。
その出来はともかく(笑)。
でも考えていて、我ながら本当に驚きました。「新マンだとこうなるのか!」なんて。今回もストーリー仕立てでお話しましょう。
名古屋章さんのナレーションをご想像下さい(笑)。
地底怪獣パゴスの出現から、このお話は幕を開けます。
冒頭、既に山中から現れていたパゴスは新産業都市を破壊しているのです。
怪獣出現の報を受け、出撃したMATの攻撃により、一時的にパゴスは撃退、山中に姿を消します。
パゴスの襲撃により新産業都市は壊滅状態。
次郎君の同級生、ピー子ちゃんは都市の居住区にお婆ちゃんと二人暮らし。
パゴスの襲撃を受けた彼女たちの居住区はほぼ全壊となってしまいました。
運良くピー子は軽症で済みましたが、お婆ちゃんは倒れた家具の下敷きになり、下半身麻痺の大怪我を負います。
パゴス襲撃後、人が変わったように笑顔を忘れ、口数も少なくなってしまったピー子。そのピー子が肌子離さず持ち歩いているお守りがありました。
珍しいサザメ竹の花の押し花。大好きなお婆ちゃんから「竹の花は災難から身を守る」という言い伝えとともに貰ったものでした。
加藤隊長の指揮下、MAT本部ではパゴスの情報収集に奔走していました。
そんな中、郷秀樹は次郎から、同級生のピー子ちゃんが被害に会った旨を聞きます。証言を聞くべく、ピー子の元へ向かう郷と次郎。
新産業都市近くの病院。ピー子は車イスのお婆ちゃんと共に、寂しげな日々を送っていました。郷はそんなピー子から、「パゴス出現時、空に金色の虹を見た」という証言を得ます。
郷の慰めも聞かず、「自分が助かったのは、自分だけがお守りを持っていたからだ」と泣くピー子。お守りを持っていなかったお婆ちゃんを怪我させたのは自分のせいだと思っているのでした。
そんなピー子を元気づける為、お婆ちゃんは「虹の卵」の伝説を語って聞かせます。「そのサザメ竹の花と虹の卵があれば、何でも願い事が叶う」と。
目を輝かせるピー子。
郷たちも帰り、隣のベッドですやすやと眠るピー子を見ながら、検診に来た看護師にお婆ちゃんは話します。
「お孫さん、いつもこの花を持ってるんですね。」
「ええ。でも本当は、竹の花は災いの印と言われてるんです。
この子が気に入ってるから魔よけとして持たせてあるんですが・・・。
何か悪い事が起こらなければいいけど。」
さて。主人公、郷秀樹を取り巻く人間関係の中でドラマが展開するのが、新マンの大きな特徴と思います。
しかも事件は必ず「個人」のレベルまで落とし込まれる。
宇宙人も含め、新マン登場の敵キャラクターはことごとく「個の心」を描くために登場するのです。
元気のないピー子は次郎のはからいで、坂田家に招待されます。
非番の郷や次郎、アキ、健らに囲まれて、つかの間の楽しい時を過ごすピー子。
ピー子のお守りの話を聞いて「僕もピー子ちゃんみたいにお守りが欲しいな」とすねる次郎にアキは言います。
「お守りはもらう人より、渡す人の方が幸せなのよ。
お守りを渡せるほど大事に思う人が居るってことでしょ。
ピー子ちゃんもいつか、お守りを渡せる人ができるといいわね。」
「おねえちゃんは郷さんにお守りを渡すんでしょ?」
「次郎!余計な事は言わないの!」
二人のやりとりを見ても、ピー子の顔に明るさは戻ってきません。
そんな光景を眺める郷に、自分の足を撫でながら語る健。
「5年前の事故のことを悔やんでいないと言えば、嘘になる。
だが、俺にはアキや次郎、そして何よりも、望みを託せるお前が居る。
郷。人は、守るものがあるから強くなれるんだろう。
あの子のお婆ちゃんだって、お守りを渡す事で彼女を守ろうとしたんだろうな。」
「でも坂田さん。あの子はまだ、お婆ちゃんに頼り切っているんです。」
「そうだな。郷、お前ならあの子の心をわかってやれるだろう。
だがいつか、あの子もわかる時が来る。
守られるだけではだめだって事をな。」
その時、MAT本部から連絡が。
「証言にあった金色の虹は、パゴスの分子構造破壊光線による大気への影響と思われる。パゴスがまたいつ出現するかわからない。
現在、パゴスを倒す為のニュートロンミサイル開発の為、産業都市近くの原子力発電所に、ウランカプセルを運ぶトラックが向かうという連絡が入った。
カプセルに入ったウランはミサイル対応の為、特殊な調合がなされている。
一応、警戒するように。」
坂田兄妹の存在は、それまでのウルトラシリーズには無かった大きな要素ですね。坂田兄妹は第37話「ウルトラマン夕日に死す」で劇的な最期を迎えますが、シリーズの方向性を決めた橋本洋二プロデューサーはこの展開について、アキを演じた榊原るみのスケジュールが取れなくなった事、そして健を演じた岸田森の、劇中での役割が終わった事が背景と語っています。
ただ、この兄妹の設定が最終話まで活かされていれば、新マンはまた違った展開となっていたでしょうね。
個人的にはこの兄妹の存在が、新マンを新マンたらしめる最大の要素だったような気がします。お話のテーマから逆算すると、その伏線には前述のようなシーンが大変しっくり来るんですよ。
発電所に近づくウラントラック。その前に突然、パゴスが姿を現します。
空にかかる金色の虹。
その時、ピー子を病院へ送る郷たちは、車の中から金色の虹を目撃します。
トラックを襲撃、ウランカプセルの鎖を咥えるパゴス。パゴスの口からぶら下がるカプセルを見て、ピー子は小さくつぶやきます。「あれが虹の卵?」
すかさず出動するMAT。激闘の末、アロー1号のミサイルがパゴスの牙にヒット、パゴスは咥えたカプセルを落としてしまいます。
森の中へ転がり落ちるウランカプセル。
その時。ピー子の中でアキの言葉がこだましました。
「いつか、お守りを渡せる人ができるといいわね。」
「あれは、お婆ちゃんのお守りよ!」駆け出すピー子。
叫ぶ郷と次郎。「違う!あれは虹の卵じゃない!」
ピー子はカプセルを見つけますが、暴れるパゴスによる土砂崩れに巻き込まれ、山中の洞窟に閉じ込められてしまいます。ピー子を追うも、がけ崩れの為に彼女を見失ってしまう郷。次郎を避難させ、郷はピー子を探します。
一方、牙を折られたパゴスに、岸田隊員が発射した麻酔弾がヒット。パゴスは山中に逃げ、麻酔の効果によりしばらくは活動を停止するであろうと思われました。
麻酔弾のタイムリミットまで、あと5時間。
1時間後、MAT本部。パゴスの常食はウランである事。山中に眠っていたパゴスは新産業都市の開発で眠りを覚まされた事が明らかになります。
二度に渡るパゴスの襲撃は覚醒直後の空腹によるもの。攻撃が効いたのは、パゴスのエネルギーが充分でない為であった事も推測されました。
麻酔弾により、現在は活動も抑えられていますが、空腹に耐えられなくなった時が一番危険。原子力発電所が警戒を強める中、パゴス掃討の為、ニュートロンミサイル発射の準備が進められます。
ミサイル発射は、パゴスの麻酔が切れる4時間後。作戦をメンバーに伝える岸田長官に、加藤隊長が口を開きます。
「長官、ちょっと待って下さい。ニュートロンミサイルには、今行方不明のカプセルに入った、特殊調合のウランが必要なのでは?もしあのウランを使わなければ、ニュートロンの効果を安定させられず、ミサイルの破壊規模は予測不能になってしまいます。」
加藤隊長の言葉に、冷たく言い放つ岸田長官。
「その通りだ。だから我々は何としても、4時間以内にカプセルを見つける必要がある。同時に近隣住民の一斉避難も勧告する。
もしウランが見つからなかったら、未調整のミサイルを発射せざるをえない。」
「ばかな。原子力発電所の近くで未調整のミサイルを使うなんて!住民避難だって、この短時間では・・・」
「だからすぐに、ウラン探索にかかれ!」
加藤隊長、苦渋の面持ち。緊張に包まれる作戦室。
MATと上層部のこういうやりとりも、新マン独自の世界観ですね。
立場の差による状況把握の違いが対立を生む。
セブンあたりでもしばしば見られた描写ですが、対宇宙文明となるセブンとは違い、怪獣が相手の新マンの世界は、その対処法などがさらにリアルに感じられます。個人的に、こうした組織内での対立を活写する新マンの世界はちょっと苦手ですが、それもシリーズの特徴と捉えれば、また別の見方もできるのかもしれません。
・・・さて。ここまでが一話分の前半。
新マンは人間ドラマの為、セリフのニュアンスが非常に大事なんですね。
ですからどうしても長文になってしまいます。
ただこれもストーリーの概略。実際にシナリオ化する場合には、もっと会話や細かい演出が増えるでしょう。MATによる怪獣攻撃の描写も、さらに描きこむ必要がありますね。
こんな出来の悪いお話に長々とお付き合い頂くのもなんですから、後半は次回にしましょうか。(ちょっとホッとしたでしょ?)。
もちろん、後半も既に出来上がっています。私が感じる新マンの世界が、なんとなくお分かり頂けたのではないでしょうか。
新マンに関しては識者の方も多いと思います。新マンビギナー以前の無知な私に、ご意見など頂ければ幸いです。
この展開で後半をご想像頂くのも面白いかもしれませんね。
ではCMをご覧になる気分で、次回をお待ち下さい。
(ずっとCMでいいって?そりゃ分かってるんですが(涙)。
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コメント
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私も『帰りマン』は詳しくありませんが、それでもワクワクする展開になってますヨ! 坂田さんと郷の会話なんて、岸田森さんと団次郎さんの声が聞こえてきます。
「サザメ竹の花」がこんなモチーフになるなんて! すごいアイディアですネ。
岸田長官と加藤隊長の対決(?)は、私もあまり好きな展開ではありませんでした。平和のためにともに戦う防衛組織の中で対立があるというのが、子ども心に違和感を覚えていました。番組後期の伊吹隊長になると、こういう展開は少なくなったようですネ。加藤隊長と伊吹隊長のキャラの違いなのでしょうか。
岸田隊員からの突き上げ、岸田長官からの無理難題に(イヤな親戚‥‥)悩む、塚本信夫さんの苦渋に満ちた表情は絶品でした。
さて、ロッテガムのCMでも見ながら、後半を楽しみにしています(^o^)/
投稿: 自由人大佐 | 2008年2月 7日 (木) 00時55分
自由人大佐様 いかがですか?はっきり言って今回は自信がありません。考えてみて初めて分かりましたが、新マンは初代とは逆のドラマ構造を持つんですね。
初代があえて避けてきたテーマ・手法を、あえて採り上げている感があります。
アウェーの私としてはもう、本当に大変です(笑)。
でもこうしてシリーズを構成する要素を組み合わせていくことで、新マンの世界をより深く知る事が出来ました。
そういう意味では、今回の企画は決して無駄ではなかったと思います。
出来はともかく(涙)。
さて。もうおわかりと思いますが、Bパートではここまでの展開が少し変化を見せます。実はそれが新マン最大の特徴。
退屈とは思いますが、もうちょっとだけお付き合い下さい。
クールミントガムなど噛みながら(笑)。
投稿: オタクイーン | 2008年2月 7日 (木) 18時22分