2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

私信等はこちらまで

無料ブログはココログ

« 「悪魔の手先」の手先 | トップページ | 「虹の卵」マン風味 »

2008年1月25日 (金)

夢が目標に変わる時

「あれ?今日は学生さんがゲスト?」
いつものお仕事で入ったスタジオ、キャスター席の隅にチョコンと座る制服姿の二人。男の子と女の子。

「ちょっと職場見学でね。見せてやって下さい。スタジオワークを。」
メインキャスターに促され、ぎこちなく頭を下げた二人の顔は、初めて訪れるテレビ局への興奮に紅潮していました。


これは昨日のお話。ちょっと色々ありまして、お話が一日遅れてしまいました。ごめんなさいね。冒頭の通り、昨日は地元の中学生が二人、番組収録を見学に訪れていたのでした。
「普通、局の見学って団体で来るものじゃないの?」ちょっと不思議に思った私。
しかも監督の先生も居ない。どーいう事なのかな?
そんな私を見越したのか、窓口役のキャスター氏は説明してくれました。
よくある社会見学とは違い、この職場見学は生徒さんの希望制で、学校側で生徒一人一人が将来進みたい職種を募り、人数、日時を調整の上見学に訪れるというものだそうです。
「先生は今、他の業種見学の生徒さんと一緒に港の巡視艇に乗ってるらしい。先生は分刻みのスケジュールで生徒を各職場に先導してるそうだよ。」
屈託なく話すキャスターさんに、二人の生徒さんははにかみながら頷いていました。


いやー私の中学生時代、こんな親切な職場見学は無かったですねー。良い時代になったものです。確かに局見学もありましたが、それは前述の通り団体で地元のNHK名古屋スタジオを見ただけ。遠足の延長のようなものでした(笑)。
今は中学生の時点で、既に希望職種を決めるような流れになっているんですねー。それがたとえ希望以前の「夢」であっても、こうして現場を見る手配をされちゃうんですから大したものです。

「この人がスタジオを仕切るフロア・ディレクターさん。私たち出演者はこの人の指示で動くの。この人がキューを出すまでは、私たちは何も出来ないんだよ。言ってみれば出演者の命綱だね。」
キャスターさんにものすごく持ち上げられてテレ笑いする私でしたが、見学者の彼らは私が手に取るインカムの方に興味津々のようで。「あ、テレビでよく見るやつだ」ぐらいに思っていたのでしょう。
確かにパッと見はカッコいいですもんね。付ける人が私でも(涙)。

リハーサル、本番と進む番組制作。目の前で展開されるテレビの現場は、彼らの中にどんな印象となって残るのでしょうか。
感性が最もビビッドに働く中学生時代。見たものや感じた事は、その後の一生に影響するものです。たとえ一瞬でもテレビの現場に触れ、彼らの中にも何かが残った事でしょう。夢やあこがれが「目標」に変わるのか、それとも「楽しかった一日の思い出」に終わるのかは、その後の彼ら次第です。

考えてみれば、私がテレビ業界を目指したきっかけは、子供の頃のテレビ局見学ではありませんでした。
以前にもお話したことがありましたが、「必殺シリーズ」など良質のドラマを見る毎に、いつか自分もなんて考えたのが最初です。その後、希望は現実的な方向にシフトしていきましたが、広告代理店、企業の宣伝企画部など、それまで経たどの職種にもどこかクリエイティブな要素が含まれていました。
まー希望と才能は別ですが。それは毎度おなじみ、「ネヴュラ」の下らない話題をご覧頂ければ明らかですね(涙)。


ただ一つだけ思います。昨日の彼らではないにしろ、そんな風に私を駆り立てるものはきっと、「必殺」以前に子供の頃に出会った様々な番組、浴びるように見た子供番組の数々なんだろーなー、なんて。
ロケなどで、時々カメラマンなどに言われる事があります。
「ここで手前のイスをなめてボカし、向こうのテーブルを撮ろうか。」なんて指示をすると、「ドラマチックな絵が好きだねー」「やっぱり昔のドラマ好きはカットが頭に焼き付いてるんだね」なんて。
ちょっと実相寺系、工藤栄一系なんですね。私のカット割りは(笑)。
そりゃー穴の空くほど見た、そしてこれからも見るであろうドラマですから、カットが生み出す効果を覚えているのは当たり前ですよ。そういう意味で、私は間違いなく実写派ですね。アニメーションも好きですが、ことカット割りに於いて実写とは別の才能を要求されるアニメには食指が動きません。
実写的な「ボトムズ」が好きなのも納得がいきます(笑)。


でも考えてみると、私のようにオタク的嗜好から業界入りする人間は思ったより少ないんですね。
確かに業界には、私以上に濃い特撮オタク(ちょっとここでは言えないくらいイッちゃってる)人も沢山居ますが、どちらかと言えばそういう存在は業界内でも異端児扱いされています。私も含め(笑)。
決してテレビ業界はオタクの集団ではないという事で。
ただこの業種特有の「一芸に秀でた人間は優遇」という考え方ゆえ、局内でもオタクは自分を押し隠す必要がなく、市民権を得ていますが(ウルトラマンの顔を5センチ大に模った腕時計を嵌め、社内を堂々と歩ける業種なんてテレビ業界くらいのものですよ(笑)。


これまで多くのスタッフと出会い、ロケの合間などに業界入りのきっかけを聞く機会も多かったのですが、やっぱり多かったのは「この業種が好きだったから」「自分もあんな事がやりたかったから」という理由でした。
まー考えてみれば当たり前ですよね。カメラマンなら「カメラが好きだから」。
アナウンサーなら「喋るのが好きだから」。これはどんな業種も同じと思います。
きっと冒頭の中学生たちも、局を見学する以前に「テレビが好き」という漠然とした嗜好があったのでしょう。そうでなければ見学志望などしない筈ですし。
そんな彼らを見ていて思い出した事があります。
昔、仲間のカメラマンから聞いた「夢を目標として見据えたある出来事」のお話でした。


現在、地元の人気番組でバリバリのカメラワークを発揮する彼。子供の頃からカメラが好きだった彼は地元のローカル局に日参し、オープンスタジオの生ワイド番組を見学していたそうです。そんなある日の放送後、彼はスタジオのカメラマンに呼び止められたとの事。
「坊主、カメラ触ってみるか。」


件のスタジオカメラマンも、毎日のように顔を見る彼の事を覚えていたのでしょう。幼かった彼の喜ぶ顔が目に浮かびます。
不思議な事にそのカメラマンは、彼が出演者やディレクターではなく、カメラに興味を持っていた事を知っていたのです。
これは本当に不思議ですね。やっぱり同じ道同士、目で分かるのでしょうか。


「その時なぜか、カメラマンのおじさんは、物凄く丁寧にカメラの操作法を教えてくれてさー。それから俺、そのカメラマンさんと親しくなったんだよ。」
「あの時、あのカメラマンさんに会ってなかったら、俺は今カメラやってなかったかもしれないなー。」と語る彼。

こういう事って、キー局などでは考えられないですよね。局と視聴者の距離が近いローカル局ならではのお話です。
幼い頃の一つの出会いが、その後の人生を左右する事もあるんだーなーなんて、その時の私は妙な感慨に捉われてしまいました。
お酒の席で、しみじみ彼が語ったお話でしたから、余計そう感じてしまったのかもしれませんね。
ちなみに彼はその後、「とんねるずのみなさんのおかげです」の「仮面ノリダー」でスタッフデビュー、現在に至っています。


テレビや映画など、感性に訴えるこの手の業界には、こういうお話が結構多いですね。前述のカメラマンほどではないにしろ、ちょっとしたきっかけで見た現場の強烈な印象が、その後の進路に影響した例はたくさん聞きました。私と同業のディレクターさんにも、そんなきっかけで業界入りした人たちが多くいます。

「俺なんか、漠然とテレビの世界に憧れてたんだけど、ある日たまたま見たスタジオ収録で現場を仕切るフロアディレクターを見ちゃってさー」と語る彼も、やはりその一人。
「それがまたカッコイイんだよ。スタジオが全部その人の指示で動くんだぜ。またキュー出しのポーズがキマってて。もうなんか、スタジオを操縦してるって感じなんだよな。」
彼の場合、冒頭の中学生に非常に近い立ち位置ですよね。漠然とテレビの世界に憧れていて、いざ現場で興味を惹かれたのがディレクターだったというパターン。
そんな風に現場を見て、初めて自分の興味ある業種に気づく場合もある訳です。不思議ですね。正直、私はフロアディレクターに魅力を感じた事はありませんから(爆笑)。
人間の数だけ嗜好はあるんですね。


前述の通り、私の場合はドラマの構造やカットワーク、演出に興味がありますから、局入りした直後はむさぼるように台本を読み倒していました。
番組とはどんな流れで出来ているのか、その構造を知りたかったんです。

別の番組の収録後、スタッフが現場に捨てていった台本を拾い集めて読み込んだり。スタッフの手でカメラ割りなどが書き込まれていたらそれはもうお宝でしたね。うーんこうして書いていると、なんとなくオタクの匂いが漂ってきたりして(笑)。


「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967年東宝 福田純監督)のDVDコメンタリーで、特技監督の有川貞昌さんも語っています。
「同じ作品を見ても、監督とカメラマンでは見る所が違う。それは誰に教えられるのものでもなく、そういうものなんだ。」そんな主旨でした。

世間のあらゆるお仕事の中で、どこに自分の生き甲斐を、興味を見出すか。これは誰にも強制できないことなのかもしれません。同時に、そのお仕事が「夢」ではなく「目標」に変わるきっかけがどんな偶然によるものか、それも誰にも分からない。


「個人個人の資質」が「きっかけの連続」によって形作る将来を、若い見学者たちに考えさせられた一日でした。
改めて思いました。よく番組関係者が新人に言われる「私は貴方の番組を見て業界を目指したんです」なんて言葉はクリエイター冥利に尽きるんだろうなー、なんて。一度は言われてみたいものです(笑)。


でも、昨日のスタジオ見学がきっかけで彼らがテレビ業界を目指すとはとても思えませんね。なにしろFDは私ですから。
精一杯カッコつけて出すキューも、どこかオタクっぽくなっちゃって。
いっその事「ウルトラキュー」なんて叫んでみれば、それはそれで強烈な思い出になったかも。
でもわかんないでしょうね。中学生の若さでは(爆笑)。

« 「悪魔の手先」の手先 | トップページ | 「虹の卵」マン風味 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

オタクィーン様こんにちは、今回のお話もたいへんおもしろく拝見しました。オタクィーン様は仕事にやりがいを持っていらっしゃるんですね。テレビのようにみんなの夢を作る仕事ってすばらしいと思います。今回のお話で製作現場ではカメラの人やディレクターの人それぞれプロとして技術を持ち、またオタクィーン様も知識を深めて日々進歩されているんですね。自分も仕事は違いますが、仕事に対してはそうありたいと思ってます。そして、仕事をやり終えた後のプラモがまた・・・・
グー! (^O^)g

のん様 いやーこんなお話にまでコメント頂き、ありがとうございます。
私のプログはテーマを絞り込んだ趣味一辺倒の物ではなく、たまーにこんな日記風おバカ話も混ざるので、ご期待に沿えない内容もあるだろーなーなんて恐縮する事も多いのですが(笑)。

まー私の場合、趣味がお仕事になってしまったようなものなので、やりがい以前に「好き」なんですよね。台本を書いたりロケに行くのが。編集なんかも大好きです。
本当は、ここまで嗜好とお仕事の距離が近い事は良くないんですが、とりあえずやれる所まではやってみようと。そんな考えでここまで続けてきました(笑)。

のんさんも大変なお仕事ですよね。夜勤や長時間勤務などもおありとお察ししますが、お体に気をつけて頑張って下さい。
今ののんさんにとっては可愛いお子さんが、最高のやりがいとなるのでは?(笑)
私も温かくなったら、またプラモに手を出そうと思っています。
暖房設備の無い工作室はもう寒くて。
ポリマーリンゲル液も凍りそうです(笑)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/104767/10072983

この記事へのトラックバック一覧です: 夢が目標に変わる時:

« 「悪魔の手先」の手先 | トップページ | 「虹の卵」マン風味 »