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2007年5月12日 (土)

「マルスなら133かな」

Photo_799 ここ数日、あるDVDを見る機会が多くて。
この「ウルトラマン誕生40年の軌跡 ウルトラマン伝説展」というDVD。

これは昨年、川崎市岡本太郎美術館・広島県立美術館で開催された同展覧会の紹介ソフトです。
私はこれを、先日開かれた「ウルトラマン[オブジェクツ展]で入手、それ以来BGVのように再生しています。
[オブジェクツ展]ではこのDVDの他にも「伝説展」のパンフレットも販売していたので、DVDとともに入手された方も多いと思います。
入手された方、どんな感想をお持ちですか?
私の感想は「このパンフとDVD、当たり!」。
不勉強ながら、この二つの資料で語られている事柄のほとんどは私が知らなかった新事実ばかりなのでした。
(うわー無知がバレちゃった。)

私が特に瞠目したのはDVD。
私はこの展覧会には行けなかったので、展覧会そのものの印象は語れないのですが、このDVDって、きっと展覧会の内容をほとんど紹介してませんよね(笑)。
ある意味「このDVDを見てから伝説展を見ればもっと楽しめますよ」的な構成を採っているのではと思います。

と言うのはこのDVD、飯島敏宏さん、上原正三さん、満田かずほさん、池谷仙克さん、黒部進さん、桜井浩子さんら、ウルトラマン黎明期に関わった人々へのインタビューがほぼ全篇を占めているのです。展示物なんてほとんど紹介なし。
そういう意味では展覧会資料としては今一なのですが、このDVDの構成は実にお見事。
「NHKが大人向きにウルトラの特番を作ったら、こうなるんじゃないか」と思わせる程の完成度を誇っているのです。

ウルトラの裏話には目がない私にとって、このDVDで語られている関係者の証言はほとんど「1分に一回、目からウロコ」並みの面白さで。普段この手の番組や研究本などで語られている内容の「ちょっと奥」を語る感じが心地良いのです。
「そうか。あの逸話はこんな理由からだったのか」「あの場面、出演者はこう思っていたのか」なんて、今更ながらに感慨を覚える内容でした。その全貌をお話しすれば例によって物凄く長くなっちゃうので、今日は貴重なインタビューの中から、私が特に感銘を受けたスタッフのお話をご紹介しましょう。
(濃いファンの方にはぬるいお話かもしれません。お許しを。)

「ウルトラマン」の製作第1話が、放送第2話「侵略者を撃て」であった事は有名な事実です。ウルトラマン最大のライバル「バルタン星人」が登場するこのエピソードは、ウルトラマンの基本フォーマットを決定付けた一篇として後年様々な研究、解析がなされて来ました。
このエピソードの脚本を執筆した千束北男が同エピソードの監督、飯島敏宏氏のペンネームである事は皆さんもよくご存知でしょう。

飯島敏宏。「マン」の前番組「ウルトラQ」からウルトラシリーズに参加し、スピード感溢れる都会的な演出でウルトラシリーズの演出スタイルを決定付けた人物です。
私は、今回のDVDで飯島氏が語った現場の裏話に、実に心を惹かれました。

どんな番組も同じですが、新番組の立ち上げというのは何かと「決め事」が多いものです。全部一から創り上げなければならない。前作「Q」では時間もあり、一話一話の自由度も比較的高いものでしたが、「マン」は基本フォーマットを非常に要求される。
怪獣出現、科特隊の活躍、ウルトラマン登場。「Q」に比べ「マン」はより「パターンの美学」を求められる企画でした。

「マン」放送当時、製作スタッフにとって「巨大ヒーローが怪獣と戦う」というドラマのお手本は皆無でした。
後年「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965年東宝 本多猪四郎監督)がその図式の先駆的作品、との解析もされましたが、あれは「巨人対怪獣」としての絵面的解析であって、そこまでのドラマ(科特隊の位置づけ、ウルトラマンの人間大から怪獣サイズへの変身法など)についてはまるで手探りの状態だったのです。
これら番組の方向性を決定付ける要求事項を全て背負い、シリーズ屈指の名篇を創り上げた飯島監督の手腕は、今こそ高く評価されるべきでしょう。

しかしながらこのウルトラマン製作第1話、飯島氏の口から出た証言は実に意外なものでした。

「マン」製作がGOとなった頃、飯島監督はまだ「Q」の製作に追われていたそうです。製作順で推測すれば製作第24話「虹の卵」、25話「地低超特急西へ」あたりでしょうか。
新番組「ウルトラマン」開始について聞いていた飯島氏でしたが、シリーズのパイロットとなる製作第1話は、当然円谷プロの屋台骨を支える円谷一監督が手掛けるものと思っていたそうです。
ところが思わぬ番狂わせが。
一氏が他の仕事で手一杯となり、飯島氏に製作第1話が回ってきたそうなのです。当然飯島氏は大慌て。放送日から逆算すれば撮影日までほとんど余裕がない。
「侵略者を撃て」はなんと台本が完成する前に撮影を依頼されたと言うのです。

このお話を聞いた私はひっくり返りました。あの緻密な作りを誇るバルタンの逸話が、台本完成前にクランクインを打診されていたとは!
アクシデントはさらに続きます。当初イデ隊員にキャスティングされていた石川進氏が途中で二瓶正也氏に変更された事はよく知られていますが、なんと実際にドラマ部分の撮影まで行われていたんですね!それも3日も!
「3日ぐらい撮影してから撮り直ししたんですよ」と語る飯島氏でしたが、放送日も迫る中、この3日は大変なロスタイムだったのではないでしょうか。「戦争みたいな状態」との証言もよく分かります。私が監督だったら胃を切ってたかも(笑)。

Photo_800 特撮現場もご難続きだったそうです。「モビルスーツ同士の格闘戦を初めてやったんだぞ!」(byシャア・アズナブル)の言葉そのままに、飯島監督以下「マン」スタッフは巨大ヒーロー対巨大怪獣の演出方法に困惑していました。
番組後半、バルタンとウルトラマンの夜の空中戦。スタジオで上から釣られたウルトラマンはまるで動けない。格闘なんて夢のまた夢。「高野宏一特技監督は不安そうな目でこっちを見る。あの時はどうなる事かと思った。」

その不自由さを逆手にとって迫力ある追跡シーンを演出した、特撮担当高野監督の手腕には驚きを隠せません。今、あのシーンを見て「現場が困った」形跡を感じる事はできないですから。

Photo_801 同エピソードで鮮烈なデビューを飾ったバルタン星人にしても驚愕の裏話があります。
バルタン星人おなじみの「ブフォッフォッフォッフォッ」笑い、あの時彼がとる「ハサミ持ち上げポーズ」は、「着ぐるみのハサミが重すぎて、中に入る役者さんがあの位置でないとハサミを固定できなかった」ゆえ、仕方なくああなったそうなのです。
要はハサミを上げるか下ろすか、どちらかじゃないと腕がハサミの重さに耐えきれなかったんでしょうね。
「脚本と現実は相当違うものになってしまった」と飯島氏。
バルタンが一番映えるあのポーズが現場の事情だったとは。

Photo_803  もしハサミを下ろした状態がバルタンのスタンダードポーズとして固定されたとしたら、今のバルタン人気は無かったような気もするんですが。つくづく偶然の恐ろしさを感じます。そんなエピソードを懐かしそうに語る飯島氏ですが、その時の心情を察すると背筋が寒くなる思いです。

やはり天才的クリエイターの才能は、そういう逆境的局面に発揮されるものなのでしょう。
さらにビックリ。なんとあのスペシウム光線は、現場あわせで発案されたものなのです!ここで私は「イス落ち」(桂三枝風に)。

Photo_804 「当時「光線を出す」って言うのは大変な事だったんですよ。「殺人光線」なんて言って。」飯島氏は当時を振り返ります。
今、ヒーローの必殺技として当たり前の光線も、当時は強大な破壊力を演出するまさに「伝家の宝刀」だったのでしょう。ここでも飯島氏の才能は発揮されました。

「光線をなんとかして線ではなく「面」で出したい。その試行錯誤があのポーズとなった。」と語る飯島氏。
後年、あの十字組みのポーズが「+と-」なんて解析もされましたが、あのポーズはとにかく面として光線を出したいと考える、飯島氏の才能の結集だったんですね。

さらに、「マン」の未来感を支える武器のネーミングにも、飯島氏のセンスが如何なく発揮されていました。

「宇宙を表す「スペース」に「ウム」なんてつけちゃって。造語ですよ。ありそうな造語。」
私はこのネーミングセンスに大変心打たれました。

ウルトラマンの技なら「ウルトラビーム」なんてネーミングするのが普通のセンスでは?スペクトルフラッシュ・ミラーナイフ・ライダーキックなど例も沢山ありますし。それをあえて「ウルトラ」を使わず「スペシウム」という造語を配するセンス。(あくまで個人的感覚ですが)
おそらくこのセンスは飯島氏天性のものでしょう。慶応大学英文科を卒業し、ウルトラの世界に未来感を持ち込もうとした飯島氏が自然に到達した感覚では。

Photo_805 飯島氏が手掛けたネーミングは数多くあります。
バルタン星人が二度目に登場する第16話「科特隊宇宙へ」で登場した新兵器「マルス133」もその一つ。スペシウム光線と同様の威力を持つという設定のこの「光線銃」は、スペシウムという物質が火星にあるという劇中の設定から火星を表す「マルス」が冠されましたが、その後の「133」の根拠は「ないですよ」と飯島氏(笑)。

「マルスだとやっぱり133かな、なんてもんでね」と笑う飯島氏ですが、これ、簡単に思いつきます?私なんかひっくり返ったって出てこないセンスですよ(笑)。

Photo_806 英文科卒の飯島氏。私はここで一つの私見があります。
同16話でのウルトラマンの「テレポーテーション能力」も飯島氏のネーミングですが、飯島氏はこの件について「それまでは物体を「電送する」なんて言い回しをしていた。それが非常に古めかしく感じた」などと語っています。
これ、飯島氏のリベンジではないかと。

前番組「ウルトラQ」で飯島氏が手掛けたエピソード、第19話「2020年の挑戦」。飯島氏はこの作品の脚本を千束北男名義で執筆(金城哲夫氏と連名)しましたが、この作品では登場する宇宙人「ケムール人」による人間消失の謎を「ケムール星への【電送】と表現しています。自作でこの表現を使った飯島氏は、いつかこの【電送】というネーミングを自分でブラッシュアップしたかったのではないでしょうか。

R星から一気に地球まで体を移動させる、まさに超人の名にふさわしいウルトラマンの究極能力を見事に表現した「テレポーテーション」。
飯島氏はウルトラマンで古めかしい【電送】を【テレポーテーション】とネーミングし直す事で一歩前進したのでは、なんて(笑)。私のこだわりすぎでしょうね。きっと。
同エピソードの「パン・スペース・インタープリター」など卓越したセンスが光る飯島ネーム。これがウルトラ世界に独自の未来感を与えていたのは間違いないでしょう。

いつも数カ国語の辞書を枕元に置き、思いつく単語をメモりながら脚本執筆に勤しんだと語る飯島氏。そうした努力は製作後41年を経た今も作品に表れていますよね。
どんな作品も、その立ち上げ時には想像もできなかった苦労が付きまとうもの。
そんな逆境を乗り越え、作品に反映させる天才たちの仕事に、規模は違えど同じ演出者として大きなシンパシーを感じます。

まー、辞書を枕元ではなく枕にしちゃうところが、彼らと私の決定的な違いですが(涙)。

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コメント

 オタクイーンさん、こんばんは。

 私、岡本太郎美術館の「伝説展」に行って来たんですが、それほど多くの展示物はありませんでしたヨ。
 「アボラス」「バニラ」の実物ヘッド、怪獣デザイン画のレプリカ、当時の少年マガジン、『Q』と『マン』の台本、科特隊の隊員服のレプリカ、科特隊基地のミニチュアセットの再現、ウルトラマンとレッドキングの格闘場面の再現パノラマ、当時の怪獣ソフビなどなどが陳列されていました。

 帰りには近所だったので、「御殿山科学センター」などで特撮番組のロケ地として有名な「長沢浄水場」を見てきたりしました。
あ、そうそう、岡本太郎美術館の最寄り駅は、メトロン星人がタバコの自販機を置いていた「北川町駅」のロケが行われた「向ヶ丘遊園駅」です。

 私、飯島敏宏監督の作風が好きなんです。当時のベタなドラマとは違い、スタイリッシュな雰囲気がありますネ。そんなところが、SF作品としての『ウルトラマン』で遺憾なく発揮されているのでしょう。なるほど~、ネーミングにもそのセンスを発揮されていたのですネ。

 飯島監督は『怪奇大作戦』でも、繰上げで第1話を担当することになってしまいました。何かそういう運命なのでしょうか。
飯島氏が演出する『マイティジャック』も見てみたかったです。きっとあの作品世界にはピッタリのハズだと思うのですが‥‥。新作で作ってくれませんかネ(^o^)/

自由人大佐様 コメントありがとうございました。
「伝説展」行かれたんですね。
私は展示物をDVDで見る事しかできませんでしたが、実物を目の当たりにするとまた違う思いが浮かぶものなんでしょうね。
長沢浄水場や北沢町駅など、有名な撮影ポイントに気軽に向かえる自由人大佐さんが羨ましい限りです。

私も飯島監督の作風に惹かれる一人です。都会的でモダンなストーリーテリングは、ウルトラ世界の構築に大きく貢献したと言えましょう。彼がシリーズ第一話を任される理由も分かります。きっとプロデュースサイドも飯島氏の作風、先見性を信頼していたのでしょう。

DVD中、インタビューに答えられる飯島氏は、今も製作意欲溢れる若きクリエイターでした。おっしゃる通り「マイティジャック」なんてまさに飯島ワールドにふさわしい素材ですよね。
私達が発する「MJエマージェンシー」の信号は、きっと飯島監督に届くと信じたいものです(笑)。

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