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2007年5月23日 (水)

唇に微笑 心にスペシウム

「約1.5センチか。」
先日、私の街で行われた「ウルトラマンシリーズ誕生40周年 オブジェクツ・サブジェクツ」。ウルトラQ、マンの撮影プロップにアートの視点からスポットを当てる展示会でした。
会場入り口からすぐの所に掲げられたある展示物に目を止めた私は、長年の疑問の一助となればと、その長さを目で測ったのでした。


Photo_834 「ある物」とはこれ。
ウルトラマンの撮影用マスクでした。

「ウルトラマン」は回を追うごとに撮影用マスクが改修されていった事は、皆さんもよくご存知と思います。会場ではその内番組後期、FRP成型された二つのマスクのレプリカが展示されていました。
ファンの間で「Bタイプ」「Cタイプ」と呼ばれる物です。

私が測った部分。それは、二つのマスクの「口の横幅の差」でした(笑)。
今日は、この謎に包まれたスーパーヒーローの「顔の変遷」について、例によっておバカに語りたいと思います。
皆さんがお好きなタイプを思い浮かべてお聞き下さい。

約1.5センチ。BタイプとCタイプの口の幅は、左右それぞれそれだけの差がありました。
合計、約3センチ。

これは結構な差ですよね。こういう展示会では、二つのマスクが並ぶ事はよくありますが、二つの顔の印象は全く違うだけに、こうして数字化すると改めてその差に驚かされます。
3センチっていったらかなりの物ですよ。これはやっぱり、制作側に変更意図があったとしか思えません。
なんでこんなに口を広げたんでしょうか。

「ウルトラマン」のデザインが彫刻家の成田亨によるものである事はよく知られています。依頼者のウルトラマン・メインライター金城哲夫は、その発注時「いまだかつて無い格好の、美しい宇宙人が欲しい」と語ったそうです。
成田氏は怪獣×ウルトラマンの関係をギリシャ哲学のカオス×コスモスという図式に置き換えたそうです。「混沌と秩序」。ウルトラマンのデザインワークには、すべてこの図式が貫かれている事は、今番組を見る私たちにもストレートに伝わってきますね。
でも、あの洗練された銀色の超人が生まれる迄には、デザイン上の色々な試行錯誤があった事も有名なお話です。

Photo_835 ウルトラマンの企画の前身「科学特捜隊ベムラー」に登場するメインキャラは、皆さんもご存知の「ガッパ」やカラス天狗を思わせる怪獣でしたし、その後「レッドマン」として企画がブラッシュアップされた後も、ヒーローのデザインはまだまだ人間とは異質の「宇宙生物」というこだわりを捨て切れませんでした。
写真は「レッドマン」のデザイン画。その頭部だけ見ても、これがバルタン星人やザラブ星人と同類項の発想であった事は想像できます。


そんな紆余曲折を経て「コスモスの象徴」として登場したウルトラマンですが、番組開始当初はまだまだ宇宙生物へのこだわりを残していました。
A ウルトラマンAタイプのマスクがラテックス成型されたのも、あくまで「生物」としてのこだわりを持った成田亨以下デザインスタッフの主張の表れだったのでは。
ウルトラマンのマスクは全て造型家・佐々木明氏の手によるものですが、ウルトラマン初期の「口を開閉させて喋る」という設定の為に、このAタイプマスクだけは表面がラテックス成型されていましたね。私はその他にも「ウルトラマン」という存在が、どこかあの「レッドマン」と地続きであったようなこだわりを感じるのです。

何故でしょうか。きっと後々の文献でこんな事実を知ったからでしょう。
あのAタイプマスク、実は内側はBタイプ以降のマスクの素材、FRPで裏打ちされていたのですから。つまり「FRP成型は可能だったはずなのに、あえてラテックスで作った」という事なんですね。
口を動かして喋る宇宙生物。ウルトラマンには当初、そんな生々しい設定が与えられていたのです。
ところが当時の造型技術の限界か、ラテックス成型によるAタイプマスクには、口の周りに不用意な皺が寄ってしまう事がスタッフ間の懸念でした。成田亨氏の助言もあったのかもしれません。さらにラテックスの劣化も手伝い、このAタイプは第13話をもって造型変更となったのでした。

B 第14話から登場したのがこのBタイプマスク。後々の文献で、前述のAタイプマスクはこのBタイプをラテックスで抜いたものでは、という分析がされていますね。
おバカな私は、そんな分析を読むたびに「へー。そーなんだー」と感心するばかりですが、このBタイプで、デザイナー成田亨氏が目指した「ウルトラマン」のイメージは完成に近づいたのでは、という思いも強く持ちます。
要は「最初はラテックスでやってみたけど、ちょっと思ったのと違うなー。やっぱりウルトラマンの顔はFRPの硬質感が似合うのかも」って事ですね(笑)。

そんな思いを強くするのも、成田氏がウルトラマンに託した「コスモス」という意匠が、この硬質なマスクにはより強く息づいている気がするからで。
ウルトラマンの口元の処理が、広隆寺の弥勒菩薩やギリシャ彫刻のアルカイック・スマイルを意識している事はよく知られていますよね。あのちょっと上がった口元は、「強者の持つ余裕と慈悲の心を窺わせ」(ウルトラマン伝説展パンフより抜粋)ている訳ですね。

これは私も同感です。ウルトラマンは笑っている。
第1話からしてそうですよね。
誤ってハヤタ隊員と衝突し、「地球の為に働きたい」と彼にベーターカプセルを与えた後、「困った時にこれを使うのだ」と諭すマン。「そうするとどうなる?」そんなハヤタの問いかけに「ハッハッハッハッハッ」と笑いで答えるウルトラマン。
彼の心には、いつも微笑があるのです。


ハヤタの命を奪っておいて笑うとは、というツッこみは無しで。第1話の段階では、ウルトラマンは地球人の命がそれほど儚いとは知らなかったはずだし、なにしろ命を持ち歩き(!)さえできるM78星人なら、なにも地球に留まらなくても命をハヤタに与えて地球を去ることだって出来た筈ですから。
そもそも生命の概念が違うんですね。バルタン星人みたいに。
彼の笑いもむべなるかなと(笑)。

ウルトラマンにそんな「宇宙神」としての側面を与えたかった成田氏ですから、あの口元にはそれ相当のこだわりもあったのでしょう。
今見れば、やっぱりAタイプよりはBタイプの方が口元が締まって見えますもんね。なにより顔の印象がはっきりしました。
またこの時同時に行われた身体のフォルムのリニューアルも、ウルトラマンの超然としたイメージをさらに高める効果があったと思います。

C さて。ここで頭をもたげてくるのが、冒頭の「1.5センチの謎」。
ウルトラマンのマスクは、このBタイプで成田氏が望んだ完成形になったはずでは。と思ったんですが。何故かこのBタイプも第29話をもって姿を消す事となるのです。

第30話から登場したのが、今ウルトラマンの顔として最もメジャーなこのCタイプ。口元のみならず目の取り付け位置なども若干の変更がなされたそうで、Bタイプと比べてもかなり印象が異なりますね。
なんでこんな変更がなされたのでしょうか?


まーこれもいつもの私見ですが(出た!)成田氏以下デザインワークス陣は、ウルトラマンの微笑を取り戻したかったんじゃないかと。
今改めて、ラテックス製のAタイプとこのCタイプを見ると分かるんですが、ウルトラマンの顔ってBタイプで一回「微笑が無くなって」ません?

推測の域は出ませんが、成田氏はAタイプに見られたあの微笑が、端正なBタイプになった事で失われたと思ったのでは。
「Aタイプのアルカイック・スマイルを本当に再現する為には、あの口の幅ではダメなんだ」なんてね(笑)。


Photo_836   あの1.5センチは、ウルトラマンが宇宙神足りうるこだわりの産物だったのかもしれません。Bタイプは佐々木明氏による原型があってそこから抜かれている訳ですから、劣化すればいくらでも量産できたはずなんです。それをあえて変えている。
例えば後に登場した「ウルトラセブン」にもマスクは複数存在しましたが、口元の造型は変更無いですもんね。そんな事実を思うたびに、ウルトラマンの微笑へのこだわりがいかに強かったかを感じずにはいられないのです。

Gs_4 「強者の余裕」「慈悲の心」。
初代ウルトラマンが他のウルトラヒーローと一線を画す秘密の一つは、成田氏以下デザインワークス陣の、そんな微笑へのこだわりが生み出したものかもしれませんね。

実はCタイプマスクは「ウルトラマン」全話中登場回数が一番少ないんですが、それでもウルトラマンマスクの完成形として抜群の認知度を誇ります。
スタッフのこだわりは、人々の中に浸透していくものなんですね。


いやー今回もおバカなお話を長々と。ごめんなさい。
それはやっぱり最近の我が家の明るさゆえでしょうね。
読者の皆さんに見守られ、コタクイーンに癒されて、
私の顔は毎日「Cタイプ」です(アルカイックな微笑)。にほんブログ村 その他趣味ブログ 特撮へ

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コメント

あのウルトラマンの笑いは「へっへっへっ・・・」にも聴こえますね。
あれだけ聴くと、すんごい不気味です。
私がハヤタなら「堪忍して下さい」と言ってます(笑)

というのはさておき、アルカイックスマイルを持つ現代の神仏としての宇宙人(ウルトラマン)をはじめ、成田氏の作品群は非常に素晴らしいですね。
今もって「第1期ウルトラ」の怪獣達が色褪せないのは、その高い芸術性とシンプルさ故なのではないかと思っています。

以前にもオタクイーンさんにお聞きしたことがありましたよね(*^^*)。
私はやっぱりAタイプが好きだな。
あのボコボコした感じが、表情にも見えて味があった。しわしわのコスチュームとも合ってませんでしたか?
その後、マスクにあわせてコスチュームも変わったのかは知りませんが、私はのっぺりとしたツルツルした顔にはとても違和感があります(笑)。
それにしても口元の幅と微笑みですか~~いや、さすがクイーン!!
こんな風に二つ並べて見せていただくと、オタクイーンさんの言ってることが よく分かります。
制作側のウルトラマンへの愛情とこだわりが感じられますね!

オタクイーンさん、コタクイーン登場は頼もしい相棒って感じで微笑ましいです。
そのうち、大怪獣と絡む日がくるのでしょうか(笑)
アルカイック・スマイル、、、、深いですね。。
自分はAタイプの人を超越した存在を感じさせるぬめり感が好きなんですが、Cタイプの微笑みのこだわりも捨てがたくなりました。
Bタイプは、うーん口が小さいせいで精悍にみえるのですが、どことなく心の狭い人間?に見えます^^;;
ノアの神のエピソードでも、その「慈悲の心」で民を照らしていた様が伺えて、好きなシーンのひとつです。
ゼットンに敗れる時、Cタイプは悲壮感を漂わせていますが、Aタイプなら倒れても「強いな~。。ハッハッハッハッハッ」って軽く笑い飛ばしているやも知れないなんて空想してしまいます。

自分なんかのコメントで喜んでいただけるなんて光栄です。。楽しませていただいているのはこっちなんですけどね~

メルシー伯様 コメントありがとうございました。
不思議な事に、ウルトラシリーズ第二期以降でリメイクされたヒーロー、怪獣の造形は、ことごとく第一期シリーズのそれに遠く及ばないものでした。近年「マックス」「メビウス」でリメイクされたものも、ある意味成田デザイン、高山造形に近づける事を一つの目標に掲げていたような気がします。
この流れは、視聴者による第一期怪獣への郷愁だけでは語れないものがあるのかもしれません。

デザインセンス、造形技術ともに完成された作品の魅力が第一期ウルトラのキャラクターには溢れているのでしょう。
これ以上でもこれ以下でも成立しないシンプルさ。
メルシー伯さんのおっしゃる通り、シンプルなものは時を越え、これからも素晴らしい魅力を放ち続けるのでしょうね(笑)。

ポン太様 コメントありがとうございました。
なるほど。ポン太さんのお好みはAタイプですか。
この機会にウルトラマンマスクの人気投票なんかすると面白そうですね。かなり票が割れそうな気もします。
いや、そもそもそんなマニアックな呼びかけに答えて下さる方がいらっしゃるかと言うと・・・
そうでした。ここはマニアの集い「ネヴュラ」でしたね(笑)。

実際、目の前でBタイプ、Cタイプマスクが並んでいると、そのイメージの差に驚きます。
同じキャラクターなんですが、「表情」が違うと言うか。
当時の円谷デザインスタッフは、そんな風にいつも「もっと良くする」「思いを伝える」事に心血を注いでいたんでしょうね。
エポックとなる作品には、いつもそんな影の努力が共通しているのでしょう(笑)。

大和少年様 コメントありがとうございました。
そーなんですよ。大和少年さんがおっしゃる通り、同じシーンでもウルトラマンの造形が違うと、対決怪獣へのリアクションも変わっちゃうような気がする所が面白いですよねー。
ゴジラ映画だってあのキングコングだから「キンゴジ」が似合う訳で、あれがメガロゴジラだったらああはならなかっただろうという。
それと通じる感覚じゃないかと。
ごめんなさい。また脱線しました(笑)。

アルカイック・スマイルなんて難しい言葉を書いちゃいましたが、私だってほとんど理解できていないんです。
なにしろウルトラマンは宇宙人ですから。あの口元が人間にとっての「笑い」に相当するのかさえ判然としないですしね。
ウルトラマンから真実を聞き出すには、「バン・スペース・インタープリター」が必要なようです。
でもその時もきっと彼は「ハッハッハッ」と笑うだけなんでしょうね(笑)。

謎の笑みを残して去っていくキャラクター。私たちはそんな存在に底知れぬ魅力を感じるのかもしれません。
大和少年さんの楽しいコメントにも、そんな魅力が息づいているんですよ(笑)。

MIYUKI様、こんばんは!
ウルトラマンの顔って3タイプあったのですね。
何となくボコボコした顔と、ツルツル顔の2パターンあるのかな〜とか、今まで漠然と思ってたんですが・・・。ツルツル顔のBとCのタイプも見比べると本当に口の幅が違うんですね。MIYUKIさんの観察力すごいです!
Aタイプの初期の設定の口を開閉して喋るというのも、とっても面白いですね。 口をモゾモゾさせて喋ったら、なんか可愛いな〜。私はAタイプが好きです。

hikari様 コメントありがとうございました。
いやーこの3タイプの分け方は私の発見じゃないんですよ。
随分昔から先輩マニアの間で囁かれていた事で。
私みたいなおバカは「あ、ホントだ」と驚く事しかできませんでした。

でもhikariさんはじめ、「ネヴュラ」コメンテーターの皆さんは圧倒的にAタイプ派が多いんですねー。ちょっと驚きました。
それだけインパクトの強い顔立ちなんでしょうねー。
放映当時発売されていたソノシートではウルトラマンは「口から光線らしきものを吐く」なんてビックリの技を持っていましたから(映像化はされませんでしたが)口の開閉にはかなりのこだわりがあったんでしょうね。
「ウルトラマンの口から怪光線!」
ちょっと見てみたい気もします(笑)。

 バルタン星人(初代)やレッドキング、アントラーなどと闘ったAタイプなのですが、私はあの「つり目」と「後頭部の赤い部分の細さ」が好きではなくて‥‥。
 そしてバルタン星人(2代目)やレッドキング(2代目)ばかりでなく、私の好きなテレスドンやケムラー、グビラと闘ったBタイプ。しかしそれよりも、胸の厚みも増し、肉体の強靭さと知性を感じさせるCタイプが私は好きです。

 ウルトラマンの口元ってきちんと下唇に見えるのですが、セブンの口を見ると、いつも開いているように見えてしまいます。森次さんによるアフレコの「ヤァーーッ!」という声の所為かも‥‥。

 それにしても、「ウルトラマン」の顔って、よくぞここまで単純化されたと思います。鼻は無いし、口と目以外には凹凸の無いツルンとした顔なんて、常人では思いつきませんよネ。やはり成田氏の天才故の表現力でしょう。

 そういえば、変身シーンのバンクフィルムに登場する、パースのついた右手の大きな人形は、顔がBタイプのようにツルンとしていますネ。そしてカラータイマーが取り付けられる前の完成スーツの写真では、顔はFRP製のままです。

自由人大佐様 コメントありがとうございました。
自由人大佐さんはCタイプがお好きなんですね。なるほど。おっしゃる通り、確かにCタイプは強靭さと知性を兼ね備えていますね。
その「知性」という部分が実に微妙なさじ加減で。

マスクの違いはあるものの、初代ウルトラマンに「激情のファイター」的な香りを感じないのは、あの極限まで単純化されたデザイン故だと思ったりします。あのデザインに何を追加しても「後付け感」は拭い去れない。
「触れない」デザインなんですよね。

初作にして正解を提示できた成田氏の才能は素晴らしいと思います。その後誕生した全てのウルトラヒーローのデザインが、初代を目標にしながらも決してそれを越えられなかった事実が、その突出した才能を証明しています。

でももうそろそろ、成田デザインとは別の方向性を持ったヒーローを見たいものですね。
時代を彩ったキャラクターは、リメイクされても初作をお手本とするしかない。期せずしてヒーロー黎明期に立ち会ってしまった私たちは、その事が骨身に染みている訳ですから。

ところで自由人大佐さん、さすがですねー。
確かに変身パースの人形、カラータイマー取り付け前のスーツとも顔がツルツルです。いやー気がつかなかった。
ウルトラスーツはまだまだ奥が深いですね(笑)。

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