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2007年5月30日 (水)

現場の嘆き

「えーっ!そーだったんですか?」
局のアナブース。いつも一緒にお仕事する女子アナからお話を聞いた私はビックリしました。

実は彼女、先日愛知県長久手町で起こった拳銃立てこもり事件で、現場の中継を担当していたのです。
「私が他の人と中継を交代してから1時間後に、犯人が逮捕されたんですよ。
もーちょっと逮捕が早かったら私が実況できたのに。」


彼女の思いはしごく当然のものでした。別に彼女は決定的瞬間を実況し、顔を売りたかった訳ではありません。
「実況担当って、カメラが繋がってなくてもずっと現場に居なきゃいけないでしょ。しかも事件はいつ解決するかわからない。
終わらない実況って辛いものなんですよ。そうなるとスタッフ全員、ここまで頑張って現場に居るんだから最後まで見届けてやる!って気持ちになるんですよね。」


この気持ちは私もよくわかります。実はテレビって、カメラが回っている時間より回っていない時間の方が長いんですよ(笑)。
ですから待ち時間もかなり苦痛だったりして。
ましてや事件の実況のようにいつ終わるか分からないお仕事の場合、常に緊張を強いられる現場では、スタッフは「解決を見届ける」という事ぐらいしか目標が持てないんですよ。


「大変でしたねー。」彼女の実況をウチで見ていた私はつぶやきました。
「そういえば、別の方の事でちょっとお聞きしたいんですが。」

実はあの事件、緊張の現場は全国ネットで実況されていましたが、東京キー局のスタジオがCMに切り替わる時、現場局のある私の地方ではCMを流さず、地方局のスタジオに切り替わっていたんですよ。つまり全国的にはCMが流れていても、私の地方だけはローカルスタジオによる実況があったわけです。その地方局の女子アナに関する事でした。
彼女も私とよくお仕事をする仲間だったんですが。


スタジオで実況していた彼女は、左手に大きな包帯をしていたんです。

事件が事件だけに、なにか現場で怪我でもしたのかとちょっと心配になってしまいまして。前述の彼女は当人とは同僚ですから、事情を知っているだろうと。

「あー、あれは事件の関係じゃありませんよ。なんでも彼女、
フードプロセッサーに手を巻き込まれたらしくて。」
「えーっ、それはそれで大変じゃないですか。」

私はフードプロセッサーなんて高級機械は持っていないですが、あれって食材を粉々にするものですよね。手なんか巻き込まれたら大変じゃないかと思うんですが。
「まーそうですよね。包帯グルグルだったでしょ。ちょっとビックリしますよね。」
彼女は笑っていましたが、それもきっと当人の順調な回復を知っての事でしょう。
いやー怖いわー。
やっぱり食材は自分の手でほぐすのが安全ですねー。

その時私は思いました。冒頭の、中継現場に居た女子アナの彼女は事件解決のわずか一時間前に現場を離れた為、自己の目標であった「逮捕の瞬間」に立ち会えなかった。
一方スタジオの女子アナは、フードプロセッサーにより大怪我をした左腕を延々と見せながら事件の状況報道を続けなければならなかった。
この皮肉。そして現場の混乱。


本来カメラの前に立つ者は、普段の生活でも身体の故障などには気を配る必要があります。自分の不注意で視聴者に不快感を与えてはいけないからです。そういう意味で彼女は自己管理を怠ったと言えます。ベテランの彼女の事ですからそれは何よりも分かっていた筈。本来なら上司に申請して、顔出しは控える必要もある訳です。
ところが皆さんご存知の通り、あの事件は全国規模の大事件になってしまった。
緊急事態で人手が足りないアナウンス部としてはそんな事も言ってられなかったと。
つくづく「お仕事というのはままならないものだなー」と痛感しました。


あの事件では私の街のローカル局全局でもかなりの混乱があったようです。
なにしろあれだけの大事件でありながら、現場の実況はすべてローカル局のスタッフのみで行ったそうで。通常あの規模の事件なら東京キー局がスタッフを投入、ものものしい報道体制を引くのが普通なんですが、今回はそうならなかった。
やはり解決のめどがつかない事件に、キー局のスタッフを張り付かせる訳にはいかないという事情があったのでしょうね。そういう考えもよく分かります。

冒頭、女子アナに事情を聞いた同じ日、お仕事をしたロケスタッフからも興味深いお話が聞けました。

彼は現場の照明マンなんですが、今回の立てこもり事件は昼夜を問わず実況が続いたので、現場の照明スタッフは大変な思いをしたそうです。彼は言いました。
「だって考えてみて下さいよ。ちょっとした明かりで犯人を刺激するかもしれない。現場のSATが照明を発砲と誤認するかもしれない。警察からは「光を当てるな」ってきついお達しがあったんです。でももし犯人が逮捕されたら照明OKの許可が出る。我々はその時の為だけにずっと待ち続けたんです。
事件はいつ解決するか分からないのに。」


そうですよねー。確かに照明マンのみならず、あの事件は他の番組の放送中もずっと画面の片隅に実況映像が放送されていましたから、カメラスタッフの心中も察するところがあります。「いつ終わるか分からない」というのは大変ですよね。
それはきっと、現場を仕切る警察側も同じ事だったのかもしれません。


事件解決後も、あの撃たれた現場巡査の救助について、また残念ながら死者も出してしまったSATチームへの作戦指示など、警察には色々な批判がなされていますが、私はこれら報道スタッフの生々しい証言を耳にする度に、一つの思いを強くします。
確かに現場での警察の動きには問題もあったかもしれません。後に噴出した色々な事実も追求されてしかるべきでしょう。
でも、所詮取り巻きでしかないマスコミの現場でさえこれだけの混乱があったわけです。
事件を解決せねばならない警察当局に与えられたプレッシャー、そして混乱は想像を絶するものがあったと察するのです。


後々ワイドショーなどで、評論家と称するコメンテーター諸氏が様々な批判を繰り返していますね。でも彼らが現場に居たら、果たしてそんな事が言えたのだろうかと考えてしまいます。

まさに「事件はスタジオで起こってるんじゃない。現場で起こってるんだ」という事です。

まー私だって彼らコメンテーターと同じ。現場を知らずに好き勝手言ってるだけですから同じ事なんですが。
ただ、「事件報道から休みがなくて。ほとんど寝てないんですよ」と笑う照明マンの彼を見る度、私は現場に居た者とそれ以外の方々の温度差を感じてしまうのです。
ともあれ報道現場というものは、常にそういう混乱と共にある事を痛感しました。


後日、番組の編集で局を訪れた時、いわゆる「スーパー字幕」を制作するセクションのスタッフと談笑する機会がありまして。
彼は私の古くからの馴染みでしたが、ここ数年でものすごく太ったそうです。
「スーパー作りって一日中パソコンと格闘してるでしょ。ほとんど運動しないんですよ。だから太っちゃって。」
ベルトの穴が一個外へズレたと笑う彼。それはそれでエキスパートゆえの嘆きかもしれませんね。

どんなお仕事も大変。現場で頑張ってらっしゃる皆さん、皆さんの努力あっての社会です。
これからも張り切っていきましょうね。私も応援しています。
(自分自身にも言い聞かせてます(笑)。

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コメント

オハヨゴザ-ス(業界風?)、オタクィーンさま。今回のテーマはお仕事関係ということで、とても面白い内容でした。ギョーカイのお話はとても生々しくて興味深々です。裏事情また教えてください。アッザース(ありがとうございます)!

のん様 コメントありがとうございました。
こんな内輪のお話にどれほど興味を持っていただけるか心配でしたが、職業人である私にはこういう一面もあるという事をご理解頂ければ幸いと(笑)。

テレビのお仕事ってちょっと特殊に思われがちですが、実際にやっている事は皆さんのお仕事に通じる事がすごく多いんですよ。
事務処理やメンテナンス、打ち合わせなんかがほとんどなんです。
派手な面ばかりが目立つ世界ですが、決して遊んでる訳じゃないんですよ(笑)。
でも確かに、自由度の広い業界ではありますね。
私みたいなのが居るくらいですから(笑)。

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