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2007年5月15日 (火)

秘密結社シネマK

1982年7月。私の手には一枚の封筒が握られていました。
それを手にした私の口元には恍惚の笑み。
「また、あの至高の一時が。」


「ネヴュラ」をご覧の皆さん。中でも私と同じく特撮作品に見入られた方たちは、今のように映像ソフトを気軽に入手できなかった頃のご記憶をお持ちの事と思います。
地上波の再放送や、勇志が開く上映会を追いかけたあの頃。
今日は、そんな頃私を魅了した、ある志高い人々のお話です。
まだお手持ちであろう、昔エアチェックした番組をBGVにお付き合い下さい(笑)。

お話は少し前に遡ります。
1982年当時。まだDVDはおろかレーザーディスクなども一般化されていなかった時代。
この頃、私達オタクにとって究極のマシンと言えば、その2年ほど前に一般家庭に普及し出したVHSビデオでした。「部屋でいつでも、好きな番組を見られる!」そんな夢のような状況に心惹かれた私は必死で貯金に勤しみました。当時発売直後のビクター・セパレートタイプのデッキを買い求め、初めて映画「大脱走」をエアチェックした時の驚きと喜びは今も忘れません。

しかしながら当時、私達が見たかった過去のウルトラシリーズやゴジラシリーズは地上波では放送されていませんでした。1979年あたりの第三次ウルトラブームもそれら旧作品のリピートという所までは加熱せず、放送局各社がその偉業に注目するまではあと3年を必要としたのです。巷に出回るビデオソフトも非常に高価で私達にはとても手が出ませんでした。初作「ゴジラ」のビデオソフトが一本5万円、という事実が、当時の状況を切実に物語っています。
(5万円って!今ならビデオデッキが5台買える値段ですよ(笑)。
それから2年あまり。82年に至っても、まだウルトラなど円谷作品はソフト化されていませんでした。私達はビデオデッキという超兵器を持ちながらも日々の乾きにあえいでいたのでした。
「見たい!ウルトラQが、マンが!セブンが!」
(本当にこんな調子だったんですよ。)


そんな私達にも心強い味方がありました。
地元情報誌「プレイガイドジャーナル」。
82年当時、私の地方はまだ「ぴあ」が創刊されておらず、街のイベント情報はすべてこの「プレイガイドジャーナル」で入手していたのです。
新聞の文字より小さな字がビッシリと埋まったイベントページを、私達は目を皿のようにして追っていました。
目指すは「怪獣映画上映会」。

当時本当に過去の作品を追いたければ、この手段を取るしかなかったのです。なんかこんな事をブログで書くと、あまりの時代の移り変わりに目まいを覚えちゃいますが(笑)。

Photo_807 そんなオタクなある日、同好の友人が血相を変えて連絡してきました。
「これ、行ってみない?」
彼が指し示したページにはこう書かれていました。
「今また甦るテレビヒーローの世界」それは古の名作ドラマの上映会でした。

スーパージェッター。ウルトラQ。月光仮面。快傑ハリマオ・・・
主催者の欄には誇らしげにこう書かれていました。
「映画サークル シネマK」。


シネマK。当時、おそらく全国各地で同時多発的に起こった特撮ファン活動の、それは一つの形であったのでしょう。
私達にとってまさに、伊藤和典氏語るところの「喉がカラカラになった時に出された、キンと冷えた飲み物」に近い感触でした。


おそらく読者の皆さんの中にも、こういう上映会に参加された方は多いのではないでしょうか。
「シネマK」はあくまで一般ファンの活動でしたから、上映場所も街の会館の視聴覚室など質素なところでしたが、それでも私達は嬉々として上映会に通いました。
「あのウルトラQが、マンが、快傑ハリマオが見られる!」

それは今の目で見れば粗末な会でした。
集まったのは30人程度でしたが、しかし決して広くはない部屋に同好の士が集まり、固唾を呑んで過去の名作を凝視する濃密な時間は、私達を一種のアンバランスゾーンへ誘うに充分な魅力を放っていたのです。
「同好の士が集まる。」これは今、氾濫するDVDソフトを部屋で個人鑑賞するのとは全く異質の、「秘密の時間の共有」的な感覚を与えてくれたのでした。


Photo_808 シネマKの上映会は続きました。最初の上映会で会員登録を済ませた私の元に次回の通知が届く度、私は冒頭のように口元を緩め、あの至高の時間に思いを馳せるのでした。
実際「シネマK」の作品チョイスは実に的を得たものでした。あまたある昔の特撮作品やアニメなどから、今も語り継がれるベストエピソードが選りすぐられていたのです。

私が生まれる前の作品、月光仮面や快傑ハリマオ、隠密剣士や豹の眼の面白さなども、このシネマKで知った事でした。
前述の二作品はともかく「隠密」や「豹」などはDVDソフトも限定発売されたきり、今も万人の目に触れにくい作品であるだけに、もしシネマKがこれらをチョイスしていなかったら、私は霧の遁兵衛やスマトラ・ベンの勇姿に一生出会えなかったかもしれないのです(皆さんついてきてますよね(笑)。


Photo_809 「ファンコレ」などのデータだけで、当時その全貌が掴みにくかった「ウルトラQ」「怪奇大作戦」一挙上映も、私達にとって魅力的なイベントでした。両シリーズのベストエピソードを五日間通しで上映したもので、曰くつきの問題作「狂鬼人間」もこの上映会が初鑑賞。
本放送時怖くて飛ばし飛ばしに見た「怪奇」でしたが、まさかこんな所で「狂鬼」に出くわすとは!


シネマKの上映会は82年にほぼ集中しています。
この後それら過去の名作が商材の鉱脈という事に気づいたメーカー側が、本格的に作品をビデオソフト化し始める直前、私達ファンの乾きを実に癒してくれました。

おそらく私が、同年齢の仲間たちに比べ「鑑賞経験の時期」のみほんの少しリード出来たとすれば、それはこの時期の浴びるような旧作体験が大きいと思います。
今考えてもあの時期、あれだけの作品ラインナップを誇った上映会は皆無だったのではないでしょうか。
何しろ、本放送以来ほとんど再放送の機会に恵まれなかった「マイティジャック」(「戦え!」じゃない方ですよ)を、事もあろうに16ミリ鑑賞する事さえ出来たんですから。
その日の記憶を紐解いてみましょう。


その日はMJの他、ウルトラQ第5話「ペギラが来た!」第20話「海底原人ラゴン」がラインナップされていました。100インチを超える大画面で展開するそれらエピソードは、モノクロ画面の雰囲気、35ミリフィルムマスターゆえのキメ細かさが堪能でき、いずれ劣らぬ名作との思いを強くしたものです。
「Q」の興奮冷めやらぬまま、いよいよメインイベント、MJの上映となりました。ところがそこでちょっとした番狂わせがあったのです。

Photo_810 ご覧の通り、案内パンフ右上欄には第3話「燃えるバラ」が予定されていたのですが、何故か当日は上映作品が第10話「爆破指令」に変更されていたのです。
主催者の説明はこのようなものでした。(記憶なので詳細はご勘弁を)

「当初は「燃えるバラ」を予定していたが、ご覧の通り今日は大スクリーン上映なので、より大画面に映えるエピソード「爆破指令」に変更した。」
なんというこだわり。実際、テレビ番組として製作されたにも関わらず、MJ号の勇姿は大画面にも決して負けない、素晴らしいものでした。
後年発売されたビデオソフトで「バラ」と「爆破」を見比べた時も、当日の主催者の判断が間違っていなかった事に驚嘆したものです。
シネマK恐るべし。
そんな英断も、作品への愛あればこそでしょう。


私達を楽しませてくれたシネマKでしたが、何故かその後の活動は霧に包まれています。
82年の上映会ラッシュの後、サークル名を「Fantastic Televisions」と改名、何通かの案内が手元には残っていますが、代表者の住所も東京へ移転、今はこの住所にいらっしゃるかさえ判然としません。

おそらくその頃からのメーカー側の作品ソフトリリースにより、作品鑑賞スタイルが「上映会」から「家庭鑑賞」に移行しつつあったのでしょう。
ただ、たとえソフトがDVDに変わり、高画質、高音質が楽しめる現在でも、私の中では82年、乾きを癒してくれた一瞬の光芒、「シネマK」を忘れる事は出来ないのです。


膨大な作品ラインナップ。それを実現する全国ネットワーク。業界とのパイプ。そして作品選定の確かなセンス。今にして思えば、彼らはきっと業界関係者だったのでしょう。
今だ謎の多い「シネマK」。
その代表者の名が記された封筒には不思議な感触が漂います。82年、特撮界の裏で密かに暗躍した秘密結社の香りを感じずにはいられないのです。

どなたかこの謎のサークルについてご存知の方、是非ご一報下さい。
(なんて余韻が好きだったりします(笑)。

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