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2007年4月17日 (火)

灼熱のイメージ・リーダー

「ガンダムって、カッコ悪いよね。」
三日近くの沈黙後、いきなりの問題発言でごめんなさい。
これで何人の読者を敵に回した事でしょう(汗)。

ただこの過激なセリフは私のものではありません。
実に数十年前、懇意にしている模型好きの先輩の口から出た言葉でした。

「機動戦士ガンダム」。「ネヴュラ」読者ならずとも今更説明する必要の無い大ヒットタイトルですね。
1979年の初作から現在まで新作が連綿と作り続けられるアニメシリーズの金字塔です。20世紀の子供文化を語るとき、ウルトラマン、仮面ライダーと並び時代を超えて愛され、今もその人気は留まる所を知りません。

この「機動戦士ガンダム」については、実は私はあまり語る術を持ちません。
言えるのはせいぜい初作のオンエアを全話リアルタイムで見た事ぐらいでしょうか。

この作品が放送された当時、私はご他聞に漏れず「宇宙戦艦ヤマト」あたりから盛り上がった70年代SFブームの波にもろに飲み込まれ、「ウルトラマン」の再編集劇場版や「スター・ウォーズ」などをむさぼるように追いかけていました。

購読していた雑誌「アニメージュ」の新作ニュースでこの作品の放送開始を知った時もその扱いは非常に小さいもので。同時期に放送を開始した東映作品「未来ロボダルタニアス」の派手なビジュアルの影で、ページの隅に小さく掲載された安彦義和画のアムロ・レイを見た時は「これが果たして「無敵鋼人ダイターン3」の後番組として成立するの?」なんて不安を掻き立てられたものです。

あれからもう28年。「ガンダム」がこれ程の人気を獲得し、ロボットアニメの一つのジャンルを形成するまでに成長するなどとは、当時誰も想像できなかったのではと思います。
実際、あの作品は数々のエポックにあふれていました。
私などがここでお話しても中途半端な知識と思い入れに過ぎませんし、なによりもっと深く研究されている方々に失礼ですから、作品の先進性や魅力については岡田斗司夫さんにお任せするとしましょう(笑)。
今日のお話を始める上では、まず「ガンダム」本放送当時私が感じた「世界観のシンボル」についてお聞きいただかなければならないと思いまして。

実は冒頭のセリフは、件の先輩だけのものではありません。
「ガンダムはカッコ悪い」。毎週土曜日午後5時30分、ブラウン管の前に座り初作「ガンダム」を身じろぎもせず見ていた私達仲間の間には、漠然ながらもそんな思いが広がっていました。

でもこのセリフだけ言ってしまうと、言葉ばかりが先に立ってしまってよくありませんね。こう続けると分かりやすいと思います。
「ザクの方がカッコいいじゃん。」

なにしろ本放送です。ストーリーは制作側以外に誰も知らない訳です。視聴者にとってドラマの先進性や設定のハードさは毎週見ていく内に判明していくもの。その素晴らしさを理解できるのは全話が終わった後なのです。
第一話を見た私達は、まず目に飛び込んでくる「ガンダム」「ザク」といったモビルスーツたちのデザインに反応してしまったのでした。
これは自然な成り行きですよね。ですからこの「ガンダムはカッコ悪い」という思いはまさに直感。仲間のほとんどがそう思っていたと知った時、やはり思いは間違ってなかったと胸を撫で下ろした記憶も(笑)。


アニメーションに限らず、テレビシリーズのような長期間の作品には、「作品の世界観を代表するイメージ・リーダー」的な意匠が必要不可欠です。
「他の作品と決定的に違う事」が作品の大きな魅力となり、人気獲得の牽引的役割を担うからです。

「ウルトラマン」であれば、それまでになかった巨大宇宙人ヒーローという主人公、科学特捜隊という組織などが他のヒーロー番組と一線を画す「イメージ・リーダー」と言えるでしょう。かつてのヒーローに見られなかったウルトラマン自体のデザインも大きく影響していると思います。

「ガンダム」はどうでしょうか?
「鉄人28号」の昔から始まる巨大ロボットは、過去の作品に於ける「遠隔操縦」から「マジンガーZ」あたりからの「搭乗式操縦」に代わるも、その武器や戦い方などは大きく見てさほど変わっていません。
これは異論もおありでしょうが。
元来巨大ロボットという存在はあまりバリエーションを持たないものなんじゃないか、というのが私の考えです。「ガンダム」もその流れの一バリエーションと思います。
やっぱり「鉄人」「マジンガー」の子供ですよね。
ですから制作側としては「バリエーションを持たないロボットというアイテムで、他作品とどう差別化を図るか」というのが大命題になってくる訳ですね。


確かに多くの評論で語られているように「ガンダム」はそこの所がエポックだったのは間違いなく、ロボットを「兵器」として捉えただけでこうもストーリーが膨らむものかと思いました。
ただ、主人公が乗り込む「ガンダム」というモビルスーツの設定。これは従来どおりじゃないかと。
アムロ・レイが操縦する「RX-78-2ガンダム」は地球連邦軍の新型モビルスーツ。ワンオフの試作機でした。

「主人公側のメカは一機のみ。」
ご存知の通り、これはロボットものの定石です。ロボットドラマがヒーロー番組の一バリエーションとして「主人公をパワーアップさせるためのアイテム」として生まれたものでしょうからそれも当然。人間である主人公はロボットに乗る事で一種の『変身』をとげ、超人化する訳ですよね。
ですから主人公は目立たなければならない。他のロボットより強くなければならない。「ガンダム」も当初、新型という事でジオン公国軍の「MS-06ザクⅡ」より高性能という設定が与えられていました。

(これは番組後半大きな変化を見せますが、このあたりもガンダムの先進性ゆえでしょう。)

Photo_691 こう考えてみると、ガンダムという主人公メカはそれまでの作品とさほど大きな違いはないと思います。あの派手なカラーリングからしてとても「兵器」には見えない。
「ヒーローカラー」ですもんね。
ガンダムが他の作品と違うのは「ザク」の方なのです。

「量産型」「モノアイ」「ミリタリー・テイスト」「地域戦独自のマイナー・チェンジ・・・」
その設定、運用の迫真性、それらリアルな設定から逆算されたあの無骨なデザイン。

この「ザク」というモビルスーツに込められた制作陣の思い入れには頭が下がります。
「ガンダム」を初作から見ていた方ならなんとなくお分かりではないでしょうか。第一話冒頭、サイド7に潜入したザクのモノアイの発光を見た時の感動を。
「これは今までと違う!」この瞬間、私の中であまたあるロボットのデザインはすべて過去のものとなったのでした。


Photo_692 「ガンダム」の世界観を形作る大きな意匠、言わば「イメージ・リーダー」は「ザク」ではないでしょうか。「ガンダム」のデザインは多少変わってもまだ許容範囲ですが、「ザク」のデザインが違うガンダム世界は考えられない。それほどこの作品の世界観は「ザク」によって支えられていると思うのです。
初作から28年後の今は「ガンダム」のデザインも基本ラインが定着し、変えようがなくなっていますね。今、ガンダムに熱中する方々にはちょっと理解できないかもしれませんが、私達初作ファンにとってガンダムの世界観を代表するイメージ・リーダーが「ザク」である事はまぎれもない事実なのです。

「ガンダム」に限らず、この「イメージ・リーダー」という作品独自の意匠は、その多くが主人公側とは別の部分に現れることが多いと思います。
というのはこれまでのお話どおり「主人公側のデザインは意外とバリエーションが少ない」と思われるからです。ヒーローには番組のテーマを背負わせているだけに、ある意味「遊び」が限られている。敵役の方がデザインの自由度が高いんですね。
大河原邦男氏をはじめ、多くのメカデザイナーが「デザインは敵側の方が楽しい」と語る理由は、「発想の幅の広さ」や「遊び心」が発揮できるフィールドゆえかもしれません。


1980年代に花開いたサンライズ系の代表的ロボットアニメ作品を大まかに思い出してみると、各々の作品の印象を強く残すのは敵側のデザインである事が多い事に気づきます。
Photo_693 「伝説巨神イデオン」(1980年)では、主人公側のロボット(遺跡という設定はともかく)「イデオン」は私達の間では「赤いガンダム」的な印象を残すほど従来のイメージを脱しておらず、敵異星人バックフラン側の重機動メカの方が独自の意匠を持っていました。
ただこれは作品の高い完成度とは全く別のお話。むしろ制作側の意識はそのデザインよりもストーリーのSF性に向いていたのではと思います。


Photo_694 1981年。「太陽の牙ダグラム」のロボット「コンバットアーマー」は人間の顔に当たる部分がコクピットになり、新しいイメージを打ち出しましたが、そのデザインラインは「ガンダム」の「ザク」を抜けきっていないような印象を受けました
「H8ソルティック」などの頭部に配された口の部分、動力パイプなどにも「ザク」の呪縛が大きく表れています。
Photo_695 「ダグラム」ではむしろ、「クラブガンナー」など、現用兵器に近いデザインが大きく印象に残りました。「戦車に足」という発想が、当時大変斬新に見えたものです。

11 1982年。「戦闘メカ ザブングル」に登場する「ウォーカーマシン」などはガンダム型の発想が最も現れた例でしょう。ヒーロー然としたデザインの「ザブングル」「ウォーカーギャリア」などに対し、本来土木作業用の重機であるウォーカーマシンのデザインは実に無骨。
「トラッド11」「クラブタイプ」などが作品世界を表現していたと思うのは私だけでしょうか。
「パターン破り」が謳い文句のザブングルでしたが、その謳い文句はむしろ「主人公メカが2体存在する」事や、「番組途中での主人公メカ交代」に表れていたと思います。

さて、ここで本来は「聖戦士ダンバイン」「銀河漂流バイファム」(1983年)にお話を持って行きたいところですが・・・
時は私、この二作品だけはどうしても苦手なんですよ(笑)。「ロボットアニメとファンタジー世界の融合」や「少年達の夢と希望の宇宙旅行」というのがどうしてもダメで。当時二話ぐらいでギブアップしてしまいまして。
ごめんなさい。この作品だけは語ることが出来ません。放送後いくらデザイン画だけ見ても、番組内での雰囲気を感じ取れなければ語る資格が無いですもんね。
「オーラバトラー」「ラウンドバーニアン」共々、独特の魅力がある事もよく分かるのですが。

気を取り直して1984年。「重戦機エルガイム」に登場した「ヘビーメタル」は、従来のロボットという概念を完全に廃したハイブリットな存在でしたね。
先の大戦でオリジナルが失われ今残っているのはコピーのみ。製造方法が失われているロボットという設定が斬新でした。
ただこの「ヘビーメタル」はある種、登場キャラクターの肉体の延長的なところがある為に、一機一機が全て違うデザイン。
一見、統一された意匠など無いように思えます。

ところが思い出してみると、私などは記憶の隅に一機のヘビーメタルが浮かぶのです。
Photo_696 A級ヘビーメタル「オージェ」。デザイナー・永野護が「女性の服をイメージした」と語るその優美なデザインは、ヘビーメタルの「戦う美術品」という位置づけを真正面から表現していて見事です。この「オージェ」のフィギュアはポーズによってロボットと言うより一個のオブジェにも感じてしまうほどで。これが作品世界と見事にシンクロしていたのです。
こういうのをイメージ・リーダーというんでしょうね。作り手側の意識外で作品を代表してしまうデザインという意味で。

Photo_697 番組後半、主人公メカの交代劇で颯爽と登場した「エルガイムMK-Ⅱ」の凶悪さあふれるデザインも捨てがたいですが。このいでたちもある種の優美さを感じさせますね。
でもやっぱりエルガイムと言えば「オージェ」。
MK-Ⅱはデザイン変更が許されますが、オージェの居ないペンタゴナ・ワールドは考えられないと思ったりして。

Photo_698 「エルガイム」後、ロボットのデザインラインは若干行き詰まりの様相を呈します。
「丸いコンバット・アーマー」とでも呼べる「SPT」(1985年「蒼き流星SPTレイズナー」)、「ガンダムの亜流」と呼べそうな「メタルアーマー」(1987年「機甲戦記ドラグナー」)などですね。
この後、イメージリーダー的なロボットの登場はかの「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)まで待たねばなりません。「エヴァ」は主人公側が敵役的、という実に画期的なドラマ構造を持つのですが、これはまた別のお話で。ガイナックスですし(笑)。

「ガンダム」総監督、富野由悠季氏がかつて新作発表時、語った言葉があります。
「またロボットドラマか、と思われる方も多いでしょう。しかし恋愛ドラマだって無限のバリエーションがあるのです。ロボットドラマだっていろいろなストーリーが作れる。」

作品の世界観を体現するロボット達には、制作者たちのそんな思いが溢れているのです。
その思いが敵側に表れるというのも面白い所ですが。


さて。賢明な「ネヴュラ」読者の方々は、今日のお話にはまだ登場していない作品がある事をお気づきでしょう。その作品こそ、全アニメーション作品の中で私が最も愛する一本であり、今日のお話中唯一の例外作品でもあります。
Photo_699 語れと言われれば何日でも語れてしまう名作。これはまた別の機会にお話しましょう。
「主人公がザクに乗っているようなもの」と言えば、もうお分かりですね。

「遺伝確率250億分の一」のアニメでもありますが(笑)。

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コメント

自分もガンダムより、他MSのほうが好きでした。
怪獣ソフビ→ガンプラにハマった流れだったので、華奢なガンダムよりボリュームあるザク・ドム・ガンキャノンのほうが思い入れがあります。

文中、「なぜ○○○○に触れないんだ!」と思ってたら、別の機会に話してくれるんですか。
○○○○は作品もさることながらオープニング曲『炎のさだめ』が名曲ですね。当時は「歌ってる人はイマイチだなぁ」と思ってたので、まさかあんなにヒット曲連発する人になるとは予想できませんでした。

mana様 コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、私の周りでもモビルスーツのデザインに関しては圧倒的に「ジーク・ジオン」なメンバーが多いです。
やはり革新的なデザインだったのでしょうね。
ロボットのデザインを「ザク」以前と以後に分けて語らなければならない程、その登場は衝撃的でした。

○○○○に関してはとても一度や二度の記事では語れない思い入れがあります。今年の新作も楽しみなところで。今でも「炎のさだめ」は毎日のように聴いています(笑)。そうですよね。まさかあんな有名な人が歌ってたなんて。
主題歌をはじめ、あの作品は各方面の才能が結集した名作と思います。予告編も含めて(笑)。

驚きました。
ザブングルで検索して、ここにお邪魔しました。そして、 灼熱のイメージ・リーダーを読ませていただいて、私の大好きなロボットものの流れを、そのように分析しているとは!なるほど、と何度も思いました。そして、私にとってもライフワーク、宗教で言えば聖書、コーランとも言うべき’あの作品’を同じように愛していらっしゃることも感激です。ぜひ!あの作品の記事を書いてください。楽しみに待っております。
PS:掲示板やってますのでおひまな時にどうぞ。

またお邪魔してすみません。少し言い足りないところがあって、失礼します。私にとって、あの作品は聖書といいました、そのハードな物語、リアルな設定、(当時弾丸の音が他の作品と違ってました。)そして、キリコの強烈な個性、(当時OP曲の最後のキリコの影と自分をいつもダブらせていました。髪型も似せたりして・・)とにかくのめり込みました。それと対照的に自分にとってコーランとも言うべき(?すいませんフィーリングです)作品は、ザブングルでした。あの底抜けの明るさ、見た後の心地よさは群を抜いております。そして、次回予告が2作品ともすばらしい!銀河万丈さんがともに担当しているのは偶然?それとも運命・・
ながながとすみません、つい語ってしまいました。

のん様 はじめまして。ようこそいらっしゃいました。
コメントに込められた熱い思い、しっかり受け止めました(笑)。
”あの作品”(もう隠す必要も無いんですが)は、一度見てしまうと離れられなくなる魅力を持っていますよね。「出会ってしまった」という感覚は、まさしくあの小惑星リドの二人の邂逅と同じ。
「炎のさだめ」とは、作り手と私達受け手の関係でもあるのです。
よくファンの間でガンダムと比べられる本作。時代に応じた変化を続けるガンダムに対し、こちらは一つの世界観を頑なに守り続ける頑固さが魅力ですね。そんな無骨な作品の在り方にも魅了されます。
いずれお話しますので期待せずにお待ち下さい。

「ザブングル」も、富野作品中重要な位置づけの一本ですね。
前作「伝説巨神イデオン」とはまったく逆方向の明るさがファンを驚かせた作品でした。
放送当時、発売されたばかりのバンダイ「トラッド11」のキットを友人と探し、近所の模型店でやっと見つけて作り比べ。各々の作風の違いに驚いた記憶があります。思えばあの頃「ドライブラシ」の面白さに気づいたものでした。
もちろんサントラLPも揃えましたよ。アニメ作品には珍しく、BGMが組曲形式で収録されていたのが新鮮でしたね。
派手な作品の影となり、ちょっと損をしている作品ですね。もっと評価されていい一作と思います。
こんなおバカなブログですが、またのお越しをお待ちしております。
今後ともよろしくお願い致します。

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