2021年12月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

ネヴュラ・プライベートライン

無料ブログはココログ

« 桜井Pとの約束(接触篇) | トップページ | 閉ざした部屋に雨が降る »

2007年4月24日 (火)

桜井Pとの約束(発動篇)

「せっかくですから、皆さんご質問などあれば。」
水を打ったように静まり返るトークショー会場。
チャンスは逃がさない!私は反射的に手を上げていました。


【接触篇】をご覧頂いた皆さん、今回はその続きです。
ご覧になっていない方は、大変お手数ですが前回の記事からご覧下さい。

今月21日に行われた、「ウルトラマンシリーズ40周年[オブジェクツ・サブジェクツ]トークショー。桜井「由利ちゃん」浩子さんをナビゲーターに迎え、原口智生特技監督、照内潔カメラマンなどと盛り上がったトーク開始45分後。不意に「質問タイム」は訪れたのでした。

実は私、こんな機会に備えて質問をいくつか用意していたのです。
いずれも長年気になっていたウルトラ世界の疑問でした。
でも今日のメンバー、前回の記事より続くトークの流れからしてあまりにトンチンカンな質問もどうかと思って。
弱気な私をお許し下さい。質問は今回の写真集[OBJECTS]に関する事になってしまいました。
でも内容は以前の記事(4月19日)で心を打った事柄について。
決して手を抜いた訳でもなく(笑)。

「ウルトラも今年で「Q」から数えて41年。プロップもそれだけの歴史を経ている訳ですが、その経時変化によりプロップに刻み込まれた「味」のようなものは、今回の写真撮影で意識されたのでしょうか?」
これが私の質問でした。

Photo_720 Photo_721 「いや。まったく意識していません。」
すかさず答えたのはカメラマンの照内氏。

かぶせるように原口監督も「そこにあるものをプレーンに撮る。それが今回の「当初の」コンセプトだったんです。」とのお答えでした。
「ところがですね。」と原口氏。
実際撮った写真が一冊の本になった時、そこにはなにやらストーリーめいたものが感じられると言うのです。


それは撮影の途中、照内氏が撮る写真に原口氏が感じたエモーションに起因していたようです。さらにもう一つ要因が。
40年前のプロップなので骨組みが見えたり、表面がはがれたりしているのは当たり前で。それはそういうものとして撮る。それが方針だったんですが、実はそのアプローチには若干の心配もあったそうです。
「カサカサした写真集になってしまうのでは」というもので。

原口氏はその危惧を解消する為、一つの仕掛けを考えました。
レプリカプロップの撮影です。

今回の写真集、展示会の出品プロップには、コンディションの悪化や現物の廃棄により展示不可能の物もあったそうです。
そういうプロップはレプリカを作ることにより現物の雰囲気を味わってもらおうという意図があったとか。


Photo_722 「ジェットビートル」の50センチサイズプロップを、オリジナルの木型を使い精密に再現したレプリカがある事は、ファンの皆さんにはよく知られた事実です。
同じような経緯で科学特捜隊の超兵器「スパイダーショット」もレプリカが作られました。
これら、ディテールも良く表面処理も美しいレプリカをオリジナルプロップに加え、ある意味「スパイス」とした事が、写真集のストーリー性を際立たせた要因なのだそうです。


Photo_723 「これらレプリカはオリジナルの木型から作られたもの。他のレプリカとは違う由緒正しいプロップなんですよ。」と会場を沸かせた原口氏は、今度は少し真顔で「新しいものを入れていくのも大事」と結びました。
そういう仕掛けや照内氏の感性が、写真集にストーリー性を加えたと言うんですね。

私はここで、丁寧に答えてくれた原口氏にお礼を言いたかったんですが、話は思わぬ方向に展開してしまいました。原口氏の言葉を受けて桜井「フジ」浩子氏から当時のビートルについての証言が出たのです。それも私の目を見ながら(喜)。
「当時のビートルのプロップはもっと汚かったんですよ。私が見たビートルはあのレプリカみたいに綺麗じゃなくて。赤の部分はもっと朱色っぽくて、シルバーの部分もテカテカだったのをヤスリで削り落としたような感じでした。」
なんて貴重な証言!そんなお話初めて聞きました。それも関係者ご本人から。

桜井氏は続けます。
「当時のビートルはあんなに艶々で色っぽくはなかった。
原口さんなんか物凄くビートル好きでしたもんね。
女性とビートルとどっちが好きなの?」
フジ隊員の暴走に原口監督も「・・・ビートルです」と合わせるのが精一杯。
優しい人ですね(笑)。


お話はこんな感じで続いたのですが、私の質問からここまてで約15分。随分お話が広がっちゃったなーとちょっと罪悪感も。でもお話はまだまだ展開したのです。
「ジャミラプレート」にまつわる実相寺昭雄監督のエピソードです。

Photo_724 今回撮影の為、集められたプロップは門外不出のものがほとんど。
中には監督など、当時の関係者に渡ったプロップもあります。
ウルトラマン第23話「故郷は地球」で登場した悲劇の宇宙飛行士ジャミラ。彼の名が刻まれた「ジャミラ・プレート」は、このエピソードの監督、実相寺昭雄氏の元に渡っていました。

今回の写真集制作に当たり、プロデューサーである桜井氏は実相寺氏にプレートの貸し出しを求めたのですが、桜井氏曰く「へそ曲がりのオヤジ」の実相寺氏は無理な条件を要求。
その条件とは「撮影期間中、実相寺氏が横でずっと付いている事」。


「ありえない事ですよ。無理な事なのに要求してくる。」怒り半分、冗談半分の桜井氏の横で「いや、僕が頼んだら貸してくれましたよ」と原口監督が涼しい顔で話していました。
実相寺監督の性格、ジャミラへの思いがよく分かるエピソードですね(笑)。

質問コーナーも終わりトークショーもエンディング。
ここでまたしても原口監督から貴重な情報が。
Photo_725 「ネヴュラ」4月19日の記事で採り上げた「ラゴンヘッド」についてです。
このラゴンヘッド、私は今回の展示会で現物を初めて見ましたが、原口監督によるとどうやらこのプロップは「今回が最後の展示になるかもしれない」と言うのです。


ラゴンヘッドと言えば、今まで専門誌などで比較的露出の多かった物は故・高山良策氏が後年制作したレプリカでしたよね。今回展示のオリジナルはその存在さえ知られていなかったはずです。それもその筈。高山氏のご夫人、利子さんが工房外への持ち出しを禁じていたのです。
劣化もひどく、もう何年も形を保てないプロップですからお気持ちもよく分かります。

今回の展示に関しても利子夫人はかなりの難色を示したそうですが、写真集[OBJECTS]を見てなんとか展示を許可していただけたのでした。
[OBJECTS]は2004年の発売ですから、撮影から3年を経てまだこの写真集は関係者を感動させるお仕事だったんですね。


いやー本当に貴重なお話が聞けました。
今までのウルトラ関連のトークショーの中で最も充実した時間を過ごせた一時間あまりでしたねー。
ところがその後、さらに感動の時間が待っていたのです。

「サイン会を開催しますので、ご希望の方は並んで下さーい。」
いい年してサイン会に並ぶのも気恥ずかしかったんですが、やっぱり機会があれば並んじゃう私。実は当日、そんなチャンスを予想してバッグには「ペギラ」のソフビを忍ばせてあったんです。
でも残念ながらペギラちゃんの出番はありませんでした。
「なんて可愛い!」
私の目は、売店に並ぶその一頭に釘付け。

Photo_726 M1号製、100体会場限定の「蓄光ジャイアントナメゴン」ソフビ。
目まで入れて高さ33センチもあるんですよ。結構大きい。
でも何と言っても私を虜にしたのはその色でした。この蛍光グリーンがなんとも言えない可愛さを発していたのです。

「ペギちゃんごめんね。」とばかりにこのナメちゃんを抱え、レジへダッシュ。ご覧のとおり、ナメちゃんに直接サインしてもらったのでした(笑)。

「先ほどはいい質問をありがとうございました。」
桜井さんはここでもしっかり私の事を覚えていてくれました。
ナメちゃんを見るなり「うわーすごいですねー。この色。」なんて言いながらサインする桜井さんに私は声をかけました。

「私も映像関係の仕事をしているので、今日のお話は大変興味深かったです。」
その瞬間、桜井さんの目が変わりました。
「えっ?名古屋でですか?」「はい。そうです。」
「お名刺お持ちじゃありませんか?」


なんて急展開。桜井浩子さんと名刺交換のチャンスが。
ところがその日に限って持ち合わせがなく。
「ごめんなさい。今日は持ってないんです。」
「じゃあ展示会の会期中に、受付にでもお持ちいただけませんか?是非お願いします。」
「あー、はい。」


その時、私は思いました。
この人はもう、かつての「由利ちゃん」「フジ隊員」じゃない。
円谷プロを盛り立てようと奮戦し、全国各地につながりを持とうとするプロデューサーなんだなと。
「同じ土俵に立っている。」
不意に浮かんだのはそんな感慨でした。
と同時にもう一つの思いも。

目の前に居る女性は、あの「毎日新報」の由利ちゃんが成長した姿なんじゃないかと。
田島義文さん演じるデスクに怒られながらも頑張っていた由利ちゃん。
その彼女が一つの仕事を背負って立ち、気負っているような。
そんな不思議な感覚にも捉われてしまったのでした。


Photo_727 桜井さんのサインが入った怪獣がまた一体増えました。
でもその位置づけはまったく違います。
以前「バゴス」にもらったサインは「女優としての桜井浩子」
今回は「プロデューサー・桜井浩子」。
私などにもつながりを持とうとしてくれた「職業人」としての顔を持つ、一人のスタッフなのです。


「名刺を届ける」という、彼女との約束は果たします。
「由利ちゃん」でもなく「フジ隊員」でもない。
「円谷プロの桜井プロデューサー」との約束ですから。
それがたとえ桜井氏の社交辞令だったとしても(笑)。

にほんブログ村 その他趣味ブログ 特撮へ

« 桜井Pとの約束(接触篇) | トップページ | 閉ざした部屋に雨が降る »

ウルトラマンクラシック」カテゴリの記事

コメント

 オタクイーンさん、こんばんは。

 詳細なレポート、たいへん興味深く読ませていただきました。桜井さんとのアイコンタクトと名刺交換の話には、ドキドキしました。ウルトラ世代には「由利ちゃん」はやはり特別な方ですよね(^^;)。

 「接触編」の文中で触れられていた写真集『OBJECTS』について、製作の経緯としてクリエータの集う現場の雰囲気がいいですね。

 この写真集の名前を思い出したかったので助かりました。うちの記事でのリンクと、TBを勝手ながら送らせていただきました。

 今後ともよろしくです。

BP様 コメント&TBありがとうございました。
本当はこの記事作成後、こちらからコメント・TBも合わせてお礼したいと思っていたのですが、あまりにおバカな内容なので気後れしてしまい・・・
申し訳ありませんでした。

おっしゃる通り、我々の世代にとって「由利ちゃん」は特別な存在ですね。ご本人と再会して、今尚健在な「おきゃんぶり」に感銘を受けました。あの毎日新報の江戸川記者は、今尚健在なのです(笑)。

お探しの写真集がこの「OBJECTS」であれば幸いですね。
私も事あるごとに眺め、ウルトラプロップの美しさを堪能しています(笑)。こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 桜井Pとの約束(発動篇):

» ■東海地区 2007春 幻想の美術館たち [★究極映像研究所★]
 今年の春、東海地方のアートは、なかなかシュルレアリスム的様相を呈しています。 [続きを読む]

« 桜井Pとの約束(接触篇) | トップページ | 閉ざした部屋に雨が降る »