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2007年3月18日 (日)

『ボーイ・ミーツ・ガール』の呪縛

今日はお仕事で。いつもの台本作成でした。
このお仕事を始めてもう20年近く。台本作成のノウハウもなんとなく身に付き、駆け出し当時ほど四苦八苦することはなくなりましたが、相変わらず悩む部分はあるものです。

ただ、この「悩む」という部分がなくなってしまうと、面白い台本は作れない。
「悩む」という事は、それだけ「以前と変えようとしている」事だと思うからです。

経験上、これだけははっきり分かった事ですね。
出来上がった台本の良し悪しは別として(笑)。

Photo_597 ここ数日、寝る前に必ず「G×G」の場面を思い描いてしまう癖が付いてしまいました。
一度考え出すと、その作品の事がなかなか頭から離れないのが昔からの習慣で。

良くも悪くも、その「しつこい」という癖は「ネヴュラ」の文面にも表れていると思います。
一つの作品を何度も何度もテーマにする「ネヴュラ」は、読者の皆さんにはきっと呆れられているでしょう。「またこの話か」なんて(涙)。
私も分かっているんですよ。ただ、好きになった作品をあらゆる角度から語らないと気が済まない性格は昔からのものなので、こればかりは直しようもなく。
この性格がディレクターという職業に向いているとも言えますが。

以前、ボスであるプロデューサーから聞いたお話がありました。
「ディレクターに求められる条件」のお話です。
「ディレクターとは時代を切り取るバランス感覚と、自分が興味を持ったことをとことんまで追いかけるしつこさが大事」だそうです。その為には、「広く浅く、狭く深く」が両立していなければならない。

一般的な事は一通り「広く深く」理解していて、ある専門分野だけは「狭く深く」知っている。「この分野だけはあいつより上が居ない」と言われる所まで行けばお前の勝ちだ。と言うんですね。それがたとえ怪獣でも映画でも。

確かに言いえて妙な教えです。テレビの世界は言ってみれば何でも屋が重宝されるので、「自分はこの分野しか知りません」ではお仕事が来ない。どんなテーマが来ても一定レベルの作品が創れなければお払い箱です。そういう意味では職人的と言えます。先輩のディレクターは「町の絵描き」と表現しましたね。芸術家では駄目なんです。
ところがそれだけではそのディレクターは大成しない。代わりがいくらでも居るからです。
「オンリーワン」の部分が要求されるんですね。ですからディレクターは自分の得意分野を大事にするし、またそれを徹底的に極めようとする。
ディレクターは個性的な人物が多いですが、それは「誰にも真似できない自分だけの世界」を誇りにできる自信ゆえなのです。

私も局務めの頃には、「怪獣」という得意分野を周りに触れまくり、「怪獣ネタは任せなさい」的な勢いで局内を堂々と歩き回っていました。面白い事に、テレビの世界はそれを認めてくれるんですね。
そうでなければ東宝撮影所の取材など許される訳もなく。
ただ実際は私の上を行く怪獣オタクが局内に二人も居て、三人でシノギを削る事になっちゃったんですが(笑)。

さて、そんな風に育ってしまった私は、「G×G」なる魅力的なテーマも「企画の一つ」として考える癖が付いてしまっています。これはもう職業病と言ってもいいでしょう。ですからたとえお遊びでも、自分が納得行かないとどうしても先に進めない。
昔読んだある本に、著名な小説家が紡ぎだした二行の文章に接続詞の「の」が四個付くことを悩み、どうしても「の」を三つにしたくて一晩悩んだ末、諦めたというお話が載っていました。
記憶なので正確ではありませんが、ものを考えるというのはそれほどまでに身を削るものなのかと、いたく感服した覚えがあります。

それがどこかに引っかかっているんでしょうね。

Photo_595 以前もお話したように、「G×G」に関しては以前から頭に漠然としたアイデアがありました。それは本当に思いつきの域を出ないもので、そのワンアイデアだけではとてもストーリーとして成立しない。
ストーリーの背景には説得力を持つバックボーンの存在が必要と考えてしまうんですね。
「真実を知らなければ嘘に真実味を与えられない」という事で。

「面白いから」というだけの理由でやみくもに好き勝手書くことは簡単ですが、私の場合は「これは本当は違うんだけど、この作品の世界観なら許されるだろう」と自分を納得させないとダメなんですよ。因果な性格で(涙)。
今のお仕事でもそういう局面はよくあります。「お前、この世界観でこの場面は成立しないだろう。」なんて会話は頻繁にありますから。


とはいえ、この考えに縛られすぎても想像力の幅を狭めてしまい、発想の大胆さを削いでしまうので決して良くはありません。
求められるのは「世界観ギリギリの所で遊ぶバランス感覚」なんでしょうね。

サスペンス映画の巨匠であり、私が尊敬する監督の一人であるアルフレッド・ヒッチコックがフランソワ・トリュフォー監督との対談中に「ある小話」としてこんなようなお話をしていました。
「ある脚本家が真夜中、就寝中にとんでもなく独創的なアイデアを夢に見た。彼は飛び起きるとそのアイデアを忘れないうちにメモに残し、安心して床についた。
翌朝彼が見たそのメモにはこう書いてあった。
「ボーイ・ミーツ・ガール」と。」
「ボーイ・ミーツ・ガール」。世の中に溢れる全てのストーリーの中で、基本にして普遍のものとして言われる言葉です。

「真夜中に浮かんだアイデアは、昼間見直してみると本当に下らないものが多い」とヒッチは語っています。日本にもこれに似たお話がありますよね。「真夜中に書いたラブレターを昼間見ると赤面する」というものです。
でも、果たしてそれは真実でしょうか?


真夜中。夢の中で浮かぶアイデア。それは人間の深層心理に浮かぶ一つの「物語のパターン」じゃないかと思うんですよね。
つまり「ストーリーとはこうであって欲しい」というような「刷り込み」というか。それが残っていて、夢まで支配してしまうというような。

この「ボーイ・ミーツ・ガール」というパターンに支配されてしまうと物語が広がっていかない。作品を貫くストーリーのパターンというものは、それほどまでに人の心に残り、またそのパターンの料理の仕方によっては、観客に著しい拒否反応を与える事になるのでは。

怪獣映画もそんな気がするんですよ。

怪獣映画にはいくつかの約束事がありますよね。「怪獣は基本的に一体ずつしか出ない」とか、「怪獣は必ず都市を破壊する」とか、「自衛隊の武器が通じない」とか。
「最後にはなんらかの決着が付く」というのもそうです。

ここをクリアしていないと「怪獣映画として認めない」的な考えがどこかにある。私も同じです。これは怪獣映画の「ボーイ・ミーツ・ガール」なんじゃないかと思うんですね。
多分「怪獣映画のベタドラマ」なんて作ったら、この他にも約束事が山ほどあるんじゃないでしょうか。

「ガメラ 大怪獣空中決戦」公開当時、この作品の成功要因の一つに「古い皮袋に新しい酒を盛って」的な感覚がある、という批評がありましたが、それはとりも直さず「ボーイ・ミーツ・ガール」を守ったがゆえの賛美ではないかと思うのです。実際、観客もそういう「パターン化された怪獣映画」を望んでいた訳ですし。
それは決していけない事ではないと思います。「怪獣映画ってそういうものじゃない?」という思いは私にだってあるし、多分皆さんの心の中にもおありじゃないかと思います。

ところが実は、今私の頭の中の「G×G」は、それとは別の方向へ進んでいます。
ですからこれはおそらく「怪獣映画」にはならないんです(笑)。

確かに、国内のみならず海外にまで名を馳せた両Gですから、その設定やストーリーを下敷きにすればどうしても「ボーイ・ミーツ・ガール」になってしまう。おバカな私にはどう考えてもそんなストーリーしか思いつきませんでした。お許し下さい。
今日の前半でお話した「世界観を成立させる為のバックボーン作り」についても、「これまでの両Gの世界観では創り上げられないストーリー」ゆえの苦労なのです。

「そんなに大風呂敷を広げて、本当にできるの?」「言い訳ばっかり言ってないで、作品を見せて下さい」とおっしゃるのもごもっとも。その通りなんですよね。
なんだかんだ言っても作品を発表された方々の方が遥かに立派です。今まで何度もお話しましたが「作った人が一番」なんですよ。本当に尊敬します。


Photo_596 以前にもお話しましたが、私の「G×G」は非常にパターン破りの部分が多く、ネット社会の功罪か参考資料もいくらでも集められてしまいます。その為、「これは使える」という背景資料の整理をするだけでも一苦労。でも集めれば集めただけ怪獣映画からは距離が離れてしまうと言う悪循環に(涙)。
「このままじゃ、江戸川乱歩の「悪霊」と同じ轍を踏むかも」なんて恐怖におののきながらも、この「G×Gを巡る旅」はやめられません(笑)。

よもや期待されている方などいらっしゃらないと思いますが、今日現在、私の思いはこんな所です。
「ボーイ・ミーツ・ガール」の呪縛から逃れる事ができるかどうか。
そもそも完成できるのかどうか。無知な私の事ですから「努力はしましたが」になる確率の方がはるかに高いです(涙)。
頭の無い私には難関です。でもやってみたいんですよね。
「悩む」というのは「以前と変えようとしている」事ですから(笑)。

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コメント

いつもコメントにお返事頂いてありがとうございます~
「ウルトラQ」実は一度も見たこと無いんです、、、会社の同僚(年上)がカネゴンのエピソードが子供心に強烈だったと話してくれた事があります。
面白そうだなって思っていましたので、「ウルトラマン」終了後、試しにレンタルで借りてみます。
ソフビでもQ関連は人気ありますよね~またまたソフビ散財してしまいそうで・・・(笑)
最近我が家の二歳児がウルトラマンキ○ガイとなりつつありまして、嬉しいやら、煩わしいやら・・・
やまなやマンを買い与えていたのですが、最近購入したマルサン風マンの方が気にいって返してくれません~やはり子供にとってユルユルの方が魅力なんでしょうか?不思議です。
子供用にミニソフビを購入しようか真剣に考えています~
夜のバイト?のお話、人の生き様といいますか、人間模様が感じられてオタクイーンさんの感性が伝わってきますね~
自分も以前ホステスさんとお付き合いしたことがありますので、少しは内情を知ることがあったのですが皆さんいろいろと葛藤を持ちつつ日々の生活を送っていて、もしかしたら一般の人々より懸命に生きている方が多いのではないかと感じましたね。若輩者が失礼しました~

とんでもない「G×G」、、、楽しみにしております。。。

 船越英二さんが死去されたそうで・・・
昭和は遠くなりにけり、でございます。

 それぞれのG×G、ご当人の思い次第では怪獣映画の枠を飛び出してしまう事態もありなのかもしれません。それもまた一つの方向性かと思います。時間を掛け思いのたけを盛り込んだG×Gが、一層熟成されます様に、なるたけ静かにお待ち申し上げております。
 それではこれにて。

大和少年様 コメントありがとうございました。
「Q」を未体験という方が本当に羨ましいです。(本心から)
世の中にまだ楽しみが残っている事ほど幸せな事はないですよね。「Q」にはそれ程の価値があります。もしご覧になる機会がありましたら是非感想をお聞かせ下さい。ご質問等も大歓迎です。
「Q」について語る機会を与えて下さるだけでも私はもう(喜)。

お子さん、純粋培養(笑)されてますね。でもやまなやマンって高額じゃないですか?なんてセレブなウルトラファン(笑)。
私の友人も子供にゴジラのおもちゃを与えていますが、やはり最近の物より昔のマルサンソフビがお気に入りのようです。
やはり当時のマルサンの戦略は正しかった訳ですね(笑)。

実は先日の「夜のお仕事」篇は自分の中でもかなり大きな位置を占めておりまして。普通の男性には絶対出来ない事を経験したと思っています。記事はすべて実話ですし、文中に登場した「彼ら」もすべて実在の人物。嘘は書いていません。
彼らの生き様は私に新しいものの見方を教えてくれました。
彼らの人生の傍観者としてしか存在し得ない自分の無力感。
それでも逞しく生きて行く彼らの姿に襟を正された思いです。
「ネヴュラ」では決して書くまいと思っていたエピソードでしたが、これも私の一面、どんな人間にも轍はあるもので。

「G×G」に関しても同じ思いです。こうやって悩む姿が書けるのもブログのいい所。どんなクリエイターだって作品をものにする為には七転八倒しているんですから。凡人の私などいわずもがな。
まあ忘れた頃にお披露目すると思います。
期待しないでお待ち下さい(笑)。

ガメラ医師様 コメントありがとうございました。
こんな記事までご紹介していただいて良かったんでしょうか(汗)。

船越英二さんはガメラ作品の出演作品が少ないながらも、その独特の存在感が光る名優でしたね。
ご冥福をお祈りしたいです。

「G×G」に関しては、もう私の中では従来のストーリーラインを無視した「反則の作品」となっています。友人にちょっと概略を話しましたが、彼は呆然としていました(笑)。
とても貴ブログでご紹介頂けないような作品となるでしょう(涙)。
でもそれくらいしないと、今の閉塞感に溢れた怪獣映画の世界は「一回転」しないと考えています。(私だけでしょうが)

でもきっとそんな「夢の一作」を夢想している自分に酔っているのかもしれませんね。毎度のおバカです。お許しを(笑)。

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