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2007年3月21日 (水)

覆面パト応答せよ

「危ねえ奴だなー、コイツ。」
私の周りを取り囲むのは屈強な刑事さんたち。本気とも冗談ともつかないつぶやきの中で私は一人悦に入っていました。
彼らが「危ねえ」とつぶやくのも無理はありません。
私の手には今も世界の名銃として名を馳せる一丁が。
「ブローニング・ハイパワー ミリタリーモデル」実銃でした・・・


テレビのお仕事を長くやっていると、普段皆さんが足を踏み入れない現場を数多く経験します。これは私にとって非常に貴重な人生経験となりました。テレビとは関係ない先日の「夜のお仕事」なども、こんな私のディレクターとしての探究心がさせた事かもしれません。
いろいろな経験を重ねることで見聞は深まりますが、同時に「普通の刺激では満足できない」という危ない精神レベルになってしまう事もしばしばで(笑)。
これは両刃の剣と自分を戒めていますが(笑)。

今日こんな事を思ったのも、夜7時から日本テレビ系で放送された特番「愛と勇気のマル秘実話映像 世界の超決定的瞬間!! まさかの大事件SP」をなんとなく見ていたからでした。
私だって普通にテレビぐらい見るんですよ(笑)。

「日テレの番組って、相変わらず身も蓋もないタイトル付けるなー」などと思いながら眺めていました。でも今日の番組は、件の「決定的瞬間」なる映像だけを羅列した構成が非常に良かったと思いまして。
スタジオにお笑い芸人や女性アイドルを並べてVTRの感想を思いつきで喋らせるようなレベルに陥らなかったことにより、ギリギリでチャンネルを変えさせない訴求力を保たせていたような。(スタジオ収録の大変さも分かるんですが)

ああいう「決定的瞬間」の現場って、取材する方はそんな事が起こることを予想なんてしていないから物凄く心に残るものなんですよ。
私は今日の番組ほどの大事件に遭遇した事はありませんが、やはりジャーナリストの端くれとして怖い現場を経験した事はあります。
冒頭の「刑事部屋」などはほんの余興程度に過ぎませんが、ちょっとその時のお話を。

数年前。いわゆる「警視庁24時」的な番組の取材で、ある県警の捜査一課にお邪魔した事がありました。
オタクの私はこの手の取材も大好きで。取材当日は頭の中で「大都会PARTⅢ」のサントラがかかりっぱなし。(警察関係に従事される読者の方、ごめんなさい。)

暴力団から押収した拳銃を見せてもらった私は狂喜乱舞。
提供された数丁はトカレフなどいわゆる「定番」がほとんどでしたが、その中に一丁だけ混じっていたのが件の「ブローニング・ハイパワー」。
イギリスの名作アクションドラマ「特捜班CI☆5」で、私が最も敬愛するアクションスター、ルイス・コリンズ様が使っていた銃です。

この銃、通常コマーシャル・モデルかカナディアン・モデルを見かける事が多いのですが、なんとこの日見かけたのはミリタリー<ボーディー>モデル。撃鉄に特徴があるのですぐ分かります。頭の中はもうあのローリー・ジョンソンのテーマ曲が大音響で。どういう経緯でこんなモデルが・・・
刑事さんに食い下がりましたが、「そんな事答えられねーよ」とにべもないご返事で。そりやそうですよね(涙)。

何度も持ち替え、重さを確かめて舐めるように見つめる私。
その妙に慣れた手つきを周りの刑事さんたちも不審に思ったのでしょう。弾丸は入っていないのに皆さん自然と周りに集まってくるんですよ。「あのー、あんた・・・」って(笑)。

いっこうに動きをやめない私に、刑事部長さんが搾り出すように放った一言が冒頭のセリフでした。あまつさえ「撮らせてよ」と業を煮やしたカメラマンに肩を叩かれる始末。
だって一生に一度ですよきっと。実銃を触れるなんて!

この日は科学捜査研究所、通称「科捜研」なんてかっこいいネーミングのセクションも取材できまして。この科捜研では、刑事ドラマでよく見る「銃弾の発射痕検査」なんてものも手掛けています。拳銃発射と同時に銃弾に刻み込まれる「ライフルマーク」の照合(「間違いない。あの拳銃から発射された弾だ!」という奴です)ですが、テレビで見るものよりもこまかくはっきり見えるんですね。「科学捜査は日進月歩」という刑事さんのセリフに大きく頷いてしまいました。
おまけにこの日は「実銃の発射実験」なんてものまで見せてもらえて。
専用の実験室に通された私達はいきなり機動隊が持つ楯を渡されました。「跳弾に備えて下さい。」えーっ!この部屋、弾が跳ね返るの!?
おかげで大迫力のカットが撮れました。後日、編集室でこのカットを何度スロー再生した事か。その時の私の顔は喜びに満ち溢れていた事でしょう。
(アブなすぎますね。女子ですからね私。女子(笑)。


以前お話した、覚せい剤密売の現場潜入も怖かったですね。
地方都市ながら私が住む街はいわゆる「四大都市」の一つ。
今は根絶されましたが当時、駅前で不法入国の外国人が一般の人々に覚せい剤を売る事件が続発していたのです。会社帰りのサラリーマンやOLに近づき、「面白いものあるよ」とささやく彼ら。興味を示した客が連れて行かれる物陰には、一生を台無しにしてしまう恐ろしい薬が・・・という訳。

この実態を探る為、私が囮になって彼ら客引きに声をかけられる一連を撮影しようという事に。言いだしっぺは私ですから私が体を張らなきゃスタッフがついてこない。
ただ、カメラマンを従えて歩いていては目立ちすぎるし、第一声をかけられる訳が無い。カメラマン以下スタッフは現場を見渡せるロケ車に配置、カーテンを閉めてレンズだけを覗かせました。囮の私はワイヤレスのピンマイクを体に仕込み、声だけはクリアに収録できるようにして一人現場へ。

怖いですよ勿論。取材だって事がバレたら彼らは何をしでかすか分からない。場合によっては顔を見られた彼らが刃物を持ち出す事だって考えられます。
「なんでこんな事言い出しちゃったんだろ」と後悔にさいなまれながら彼らの前を歩く私。
しかし事態は意外な方向に展開しました。

彼らは私ではなく、撮影クルーが乗るロケ車に気がついたのです。カーテンの間から覗く、テレビカメラのレンズに。
(「裏窓」みたいですね。)


取材行為に気づいた彼らは雲の子を散らすように隠れてしまいました。結果的に取材は失敗。「さすがに警戒してるねー」とロケ車に戻った私にカメラマン以下スタッフはつぶやきました。
「もし奴らが車に迫ってきたら、お前を置いて逃げる準備をしてたんだよ!」
えーっ?私置いてけぼり?かよわい女一人残して?
今は笑い話ですが、その夜は興奮して眠れませんでした(笑)。


夜の道路を我が物顔に占領する暴走族。この取材も、今まで味わった事のない興奮が私を待っていました。
都心部へ繋がる幹線道路に出没し、独特のフォーメーションで全ての車線を塞いでしまう暴走族の存在を聞きつけた私は、彼らが現れる土曜日の深夜を取材日に設定しました。
以前取材に協力して下さった県警の交通機動隊も出動。ただ彼らがハトカーで派手に動くとターゲットの暴走族は散ってしまい検挙できません。
こういう時、交通機動隊は隠密行動を取ります。
「覆面パトカー」の出動です。
このパトカーには暴走車のナンバーを撮影できる暗視カメラが装備されており、このカメラで撮影した映像を証拠にして後日車の使用者を検挙する訳ですね。


取材日当日。暴走族出現の一報が県警に入りました。私達も覆面パトカーの後ろについて出動です。
なるほど彼らは都心へ続く一本道をほぼ封鎖、ノロノロ運転で大渋滞を引き起こしています。彼らは数十台の車・バイクを扇状に展開、4車線もある広い道路を自分達の意のままにしているのです。
興奮したカメラマンがつぶやきます。「こりゃ大迷惑だな。」

「側道へ回って彼らの前へ出ます。」覆面パトからの指示を受けた私達は素早く側道へ。
しかしどこまで行っても彼らの前に出る事が出来ません。側道から本線に出る道は限られている上、彼らの台数が半端ではないのです。


私の携帯が鳴りました。巡査部長からの指示です。「ちょっと冒険ですが、彼らの真ん中に入ろうと思います。何かあったら助けますからなるべく短時間に撮影して下さい。」
私を含めスタッフの興奮は絶好調。どんな映画も叶わないアクションシーンの幕開けです。
ドライバーに指示するカメラマン。「しっかり運転しろや!」
満を持して私達2台は側道から暴走族のど真ん中に躍り出ました。しかし彼らはそれを予測していたのです。


突然取材車の前を一台の暴走車が塞ぎました。横、後ろにも数台の車が。つまり族は私達の取材車を取り囲み、前を走る覆面パトカーとの分断を仕掛けてきたのでした。
あわてて前を見ると、暴走車に煽られ側道へと追いやられる覆面パトの姿が。
「孤立した!」唯一の連絡方法・携帯を鳴らしてみても覆面パトの返事がない。
「出る余裕がないんだよ!」カメラマンの叫びが取材車にこだまします。

ホーンを鳴らし、私達を威嚇する暴走車たち。私は一瞬ひるみましたが、ああいう時って逆に一種の興奮状態に陥るんですね。「撮って!あっちも!この横のバイクも!」なんて車の中で叫ぶ私が(笑)。
カメラマンも興奮しちゃって「オラー!」なんて叫んでいましたが(笑)。


ちょっと落ち着いたところで覆面パトから電話が。
「大丈夫ですか?」「今の所は。」「なんとか前に出られましたからそのまま走って下さい。奴らはスター気取りですからあなた方に危害は加えませんよ。」
「そうみたいですねー。」カメラに向かって手を振る族のお兄ちゃんを見ながら、私はほっと胸を撫で下ろしました。


・・・とまあ、毎日がこんな現場ではないですが、こういう体験をすると、映画など作られた興奮が色あせて見えてしまうのも事実で。どんなに凄いアクションシーンも「これ、安全に撮ってるんだろーなー」なんてどこか醒めてしまうのでした。
やはり本物の迫力には叶わない。

私が映像作品をある種「作品」として捉え、登場人物に感情移入できないなどの弊害を持ってしまう理由はそんなところにあるのかもしれません。

でも大丈夫。そんな矮小な私の鑑賞眼をせせら笑うような名作も、世の中には数限りなく存在するのです。
だからオタクはやめられない。
「現実よりスゴイ!」と驚嘆させてくれる作品との出会いを夢に、明日もロケに出かけます(笑)。

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