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2007年3月10日 (土)

三本首のロマン

Photo_570 「見ろ!何か形になっていくぞ!」
歯切れのいい小泉博のセリフに乗って、吹き上がる炎から実体化していく金色の巨躯。

「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964年東宝 本多猪四郎監督)で鮮烈なデビューを飾った宇宙怪獣、
キングギドラ初登場のシーンです。


この一連のシークエンスは、あの「同ポジ」の残念さを割り引いても充分に印象的な名場面で、初見で「これは地球製の怪獣ではない」という事を観客に意識させる、見事な演出だと思います。
後年、このキングギドラに匹敵するインパクトを持った新怪獣登場シーンは、「ゴジラ対メカゴジラ」(1974年 福田純監督)のメカゴジラまで待たねばならなかった程です。

Photo_571 宇宙怪獣キングギドラ。超科学文明を誇った金星を滅ぼし、隕石に乗って宇宙を移動、圧倒的な破壊力を秘めた反重力光線で都市を一瞬にして破壊する「空飛ぶ災厄」。
あの巨大な体躯と、地球の生物には無い「金」という体色は、独特の咆哮音と相まって私達に怪獣映画の新時代を感じさせてくれました。

「三大怪獣」が公開された64年に東宝が公開した特撮映画は実に3本。予算、制作期間共に通常の作品よりはるかにリスクが高い怪獣映画を一年に3本も公開した事実を省みるにつけ、当時の日本映画の活況、東宝の体力、円谷英二の特撮技術の充実ぶりが偲ばれます。

Photo_572 さて。この「三大怪獣」ですが、この作品が公開されたのは年も押し迫った12月20日。
この前作、8月11日に公開されたのが、以前「ネヴュラ」でもお話した「宇宙大怪獣ドゴラ」(本多猪四郎監督)でした。「ドゴラ」は東宝特撮に「宇宙怪獣」という新しい視点を加えた野心作でしたが、試行錯誤の跡が見られながらもドゴラの造形、演出に若干未成熟の部分があり、それが興行成績に響いてしまったようです。

「三大怪獣」の制作はこの直後ですが、東宝首脳部がこの「ドゴラ」興行不振の反省を次作「三大怪獣」に反映させようと画策したと考えると、「キングギドラ」というキャラクターに込められた新しい解釈が生まれるような気もするのです。

「三大怪獣」の前に制作されたゴジラ映画は、同年64年の4月29日公開のご存知「モスラ対ゴジラ」(本多猪四郎監督)。東宝が誇る二大怪獣スター、ゴジラとモスラが正面切って激突する超娯楽大作でした。ストーリーの面白さ、連続する見せ場、特撮の充実ぶり。さらに独特の存在感を持つこの作品のゴジラは「モスゴジ」と呼ばれ、前作「キングコング対ゴジラ」の「キンゴジ」と人気を二分している事はファンの皆さんには周知の事実でしょう。

当時これほど人気の高かったゴジラ映画でしたが、東宝がこの「モスゴジ」の次作として「ドゴラ」を選んだ理由はどこにあったのでしょうか?
やはりそれは特撮映画の可能性を求める東宝、そして円谷監督の探究心に追うところが大きかったと思います。

しかし残念ながらその試みが結果に繋がらなかった事によって、東宝内部でも「やはり売れる怪獣はゴジラがらみ」という空気が漂った事は想像にかたくありません。それが「三大怪獣」の企画に繋がったとすれば、前述のギドラ誕生の理由はほぼ明確になってきます。

Photo_573 東宝首脳部、田中友幸プロデューサー、さらに本多、円谷監督らクリエイターは一度ドゴラの設定を捨て、ゴジラ達地球怪獣のみで新ストーリーを再構築しようとしたのではないでしょうか。しかしここに大きな壁が。
当時公開されていた怪獣映画の登場怪獣で、ゴジラの敵役として適当な相手はほぼ残っていなかったのです。
「ゴジラの逆襲」で戦ったアンギラス、「モスゴジ」で戦ってしまったモスラを除けば、64年当時存在した怪獣はラドン、バランのみ。
「獣人雪男」の雪男や「妖星ゴラス」に登場したマグマ、「地球防衛軍」のモゲラなどは敵怪獣としてはちょっと異質な部類に入りますし、何より相手役が務まりません。前述のバランにしても体長が10メートル程度でゴジラとは釣り合わない。

さて、どうするか。残った「ゴジラ対ラドン」というマッチメイクが集客に繋がるのか?
おそらくこれが、当時の首脳部の悩みの種だったと思います。
いつの世もマッチメイクという物は頭が痛いものなんですね(笑)。

さて。「ドゴラ」公開後、そんな経緯の中で彼らは「ドゴラ」の「宇宙怪獣」という設定に再び注目し、新怪獣の発案に力を注いだのではと思うのです。
無限に広がる宇宙空間。暗黒の銀河から襲い来る新たな脅威。それが形になったのが「キングギドラ」だったのでしょうね。


Photo_574 「キングギドラ」の形態で一際目を引くのは、とりも直さずあの「三本首」でしょう。しかし何故「三本首」なのか?この理由には諸説ありますが、私は前述の経緯から推し量ってみたいと思います。
まあいろんな推論が発表されていますし、どれかにカブるとは思いますが(笑)。

まずこれは、やはりストーリー上の要求「宇宙から来た新怪獣」という設定から発案されたものと思います。
宇宙怪獣が地球を滅ぼしに来たのなら、当然ゴジラ他全地球怪獣との対決、という図式になると。それは物語のスケールアップを狙った制作陣の目論見にも合致する事で。
そしてここがミソ、ゴジラとタッグを組ませる地球怪獣のメンバー選定が難しいところですよね。


当時の制作陣の立場で考えてみましょう。
この宇宙怪獣はゴジラより強く、華が無ければ話題性に結びつかない。となれば対抗する地球怪獣はなるべく多い方が敵怪獣の強さをアピールできる。
しかし今「手持ち」のカードはゴジラ以下・・・
こう考えていくと、「三大怪獣」の地球怪獣チーム、ゴジラ・モスラ・ラドンというメンバー選定は実に理にかなった選択に思えて来るのです。

ゴジラ・モスラ・ラドン。この三頭の怪獣に対抗する為のデザイン。敵が三頭なら・・・
そうです。キングギドラの「三本首」というデザインは、地球怪獣のメンバー数に合わせたものじゃないか、と推察するのです。
おそらくこの程度の思いつきは怪獣ファンの皆さんなら先刻ご承知、「何をいまさら」と思われるでしょうね。

でも、ギドラのデザインが「ドゴラからの繋がり」と「ゴジラ以下三頭」という「ストーリーの要求から逆算された」という事が、私には驚きなんですよね。

Photo_576 ある意味それだけの「限られた条件」の中からあれだけのデザイン、設定を生み出せたクリエイターの創造力には驚きを隠せません。
それは「正義の宇宙人」という条件から「ウルトラマン」という驚異のデザインを発案した芸術家、成田亨の先見性に通じるところがあります。

実際「宇宙怪獣」で「地球の怪獣達を相手にする」という条件で、ギドラ以上のデザインを考えられるでしょうか?
ゴジラ同様、あれ以上でも以下でも成立しないギリギリの意匠があのデザインにはあるのです。
諸説の一つ「日本に伝わる八又の大蛇伝説」が根底にあったものとしても、あのデザインは突出している。
メカゴジラのデザインは時代ごとに変化していても、キングギドラの基本デザインはほぼ変わらない所がそんな事実を裏付けているのです。

あれだけの存在感を持ちながら単独出演の作品が制作されないキングギドラ。これも「何故?」と昔からファンの間で話題になっていました。
事実私も友人と一緒に「宇宙超怪獣キングギドラ」なるタイトルでオリジナルストーリーを妄想、大迫力のシーンを夢想して一人悦に入ったものです。
でも、もしギドラ誕生の経緯が今日のお話に近かったら、単独作品が制作されなかった理由も推測できますよね。「ゴジラ以下三頭が居なかったら、ギドラは生まれようがなかった」訳ですから。でもそんな台所事情さえ思わせない魅力があの三本首にある事も、皆さん頷かれるのではないでしょうか。

個人的にはゴシラ映画の新作が休止している今こそがギドラ単独出演のチャンス、なんて勝手に思っているのですが(笑)。

さて。ここからはお遊びの妄想です。
この「ギドラの法則」をもしガメラ映画に当てはめたらどういう事になるのでしょうか?

この妄想には理由があります。
1971年。「ガメラ対深海怪獣ジグラ」公開後、大映は次回作として「ガラシャープ」という怪獣を設定していました。これはコブラをイメージした大蛇の怪獣。
以前「ネヴュラ」でもお話しましたよね。


「ガメラ4 蛇獣復活」
http://spectre-nebura.cocolog-nifty.com/cultnight/2006/10/post_b91c.html

Photo_577 ところがこの「ガラシャープ」、当時の大映から発表された新作予告タイトルは、「ガメラ対双頭怪獣W」という物だったのです。実際のガラシャープのデザインは双頭ではないのでこの予告タイトルには少し謎が残りますよね。

Photo_575 まあ映画界にある「いつもの事情」である事はよくわかるのですが、この「双頭怪獣W」がもし「ギドラの法則」に従っていたとしたら、あるいは対するガメラ側は怪獣同士のタッグチームだったのでは、なんて突飛な発想が生まれて来るんですよ(笑)。
ガメラ映画初のタッグマッチ。ガメラの相棒として「双頭怪獣W」に挑むのは・・・
そのネームバリュー、実力から言っても「ギャオス」でしょう!


「ガメラ、ギャオス組」対、大映怪獣史上おそらく最大の脅威となろう「双頭怪獣W」。
ガラシャープ戦以上に興奮する闘いが期待できそうです(笑)。
 

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