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2007年3月26日 (月)

『ちょんまげディレクター』

「オンエア枠入りました!」
スタジオに響くのはフロアディレクターの声。
生放送の現場です。

出演者・スタッフ・一般観覧者の皆さんそれぞれに、生放送ならではの緊張感が走ります。
観覧席に向け、台本を回し拍手を指示するフロアディレクター。
こんな風景、皆さんもご覧になった事がおありでしょう。
でもこの日は少し違いました。
台本を回すフロアディレクターが「白衣」を着ていたのです。

テレビ番組収録の現場は、番組の内容によって様々です。近くは局内のスタジオから遠くは極地まで。それこそ地球のあらゆる場所へ飛んで映像を手に入れる訳です。
場合によっては宇宙へ飛び出す事だってありますね。

結局私達テレビ屋は、そのロケ現場そのものを「スタジオ」と化して中継や収録を行っている訳です。ある意味道路工事など、肉体労働に従事されている方々と同じなんですね。
ツルハシがカメラに変わっただけで、現場で行う事はほとんど変わりません。朝の情報番組で屋外の中継を予定し、たとえ当日が大雨でも中継を中止する訳にはいかないのです(笑)。
そんな時は女性リポーターの笑顔の後ろでスタッフ達の怒鳴り声が飛び交っていると思って下さい。私も随分怒鳴られました。

そういう過酷な現場ですから、スタッフ達は自然と職務を円滑に進めるための「自分だけのノウハウ」を身につけていきます。
今日は私が見聞きしたそんな「業界ならではの現場の空気」をお話しましょう。


実は冒頭のお話は先輩のディレクターから聞いた「伝説」。
皆さんピンと来ないかもしれませんが、フロアディレクターというのは副調整室(サブと言います)で番組進行を指揮をするディレクターからの指示で、スタジオ全体を仕切る役割。

フロアの指揮次第でスタジオの雰囲気が決まるほど重要な存在なのです。たとえ親分のディレクターと言えど、スタジオに降りて行って現場を指揮することは出来ない。
「スタジオはフロアディレクターのもの」なのです。彼らの心づもり一つで拍手の量を調整する事さえ出来るんですよ。
ところが、スタジオにはいろいろな魔物が棲んでいまして(笑)。


これは一言ではとても言い表せませんが(ご同業の読者の方、大きく頷かれていると思います)中でも大きいのが「出演者の指示無視」。
スタジオ収録の放送でタレントがカンニングペーバー担当のスタッフにツッこんでいる場面を目にされる事も多いと思いますが、あれは実はタレントがスタッフに「気を抜くな」と激を飛ばしているんですね。「ちゃんとカンペを出せ」と。
たしかにスタジオに於いてスタッフと出演者のコンビネーションは最需要項目ですが、出演タレントの中にはへそを曲げてしまってスタッフの指示を聞かない人も居るのです。どんなに指示を出しても「見えなかった」「聞こえなかった」とトボける人が。
冒頭のフロアが「白衣」を着ていた理由がお分かりでしょうか。


そのタレントの無視に悩んでいたフロアの彼は「絶対無視させない!」という気合の元に、衣裳部屋から白衣を借りスタジオに立ったのでした。「どうだ!この姿なら無視できないだろう!」という彼なりの主張だったんですね。
彼の気合は功を奏し、そのタレントは彼を無視できなくなったそうです。当のフロア本人が後に大きな番組を数多く手掛ける大プロデューサーになった事を知った時には、「やっぱり大物はやる事が違うなー」と感心したものです。


彼の例に漏れず、スタジオで目立つ事を第一目標に挙げるフロアディレクターは多く存在します。声が大きい事は最低条件。普段絶対にしない格好をスタジオでは進んでやる者、そのフロア独特の「トレードマーク」的な衣装を常に身に着けている者などなど。
傍からは滑稽に見えますが、これはスタジオという戦場でタレントという存在と戦う上で彼らが生み出した武器とも言えましょう。
「空気に絵を描く」と言えるテレビの世界では、こんな風にスタッフもタレント並の「芸」を磨かなければならない。特異な感性を売る存在・タレントを相手にするからには、普通の事をやっていては追いつかないのです。

このスタッフの感性はスタジオの中だけではなく、局を飛び出した屋外のロケ現場でも発揮されます。

皆さんが「テレビマン」という言葉から想像されるイメージは、おそらく「軽薄」「変わり者」「人生を遊んでいる」などの、ちょっと社会通念から外れたアウトサイダーではないでしょうか。これはある意味当たっています。
以前「ネヴュラ」でお話した事もありました。テレビマンとは「醒めない夢」を追いかける子供のようなものなんですよね。

ですから普通の人から見てビックリするような奇行をする事も多い。私の存在からしてそうですが(笑)。
実際の所「あいつ、変わってるねー」「テレビ屋だからね」なんて会話の末、その奇行が許されてしまう事も多いです。あるスタッフのご親族が亡くなられた時、そのお通夜に駆けつけたスタッフ達の姿が目に痛いほどカラフルだった事も日常茶飯事で(苦笑)。

しかしその一面でスタッフ達には「空気を作る」という、やや説明しがたい才能が要求されます。
私を含めたテレビマンに目立つ奇行は、「いつも明るく、現場の笑顔を保ちたい」という強迫観念めいた使命感がなせる業なのです。
私が長年現場を共にしたカメラマンも、そんな感性を持っていました。


彼は昔、いにしえの名番組「とんねるずのみなさんのおかげです」のコーナー「仮面ノリダー」のスタッフで、とんねるずの二人と多くの現場を共にした経験を持ちます。おそらくかなり過酷な現場であったことが想像できたあの番組。そんな現場で揉まれた彼も、独特のノウハウで私達を楽しませてくれました。
彼はロケ車での移動中、ずーっと喋りっぱなしなのです。


それはおそらく、過酷な現場で出演者やスタッフを退屈させないために彼が培ったノウハウの一つだったのでしょう。
お笑い芸人さんが同行するロケなどの場合、駆け出しのスタッフなどは芸人さんから「何か面白い話ない?」なんてフリを受ける事が多いのです。
相手は言葉のプロ、芸人さんですから、おざなりのお話では馬鹿にされるだけ。ましてやとんねるずの二人です。彼にとってそのフリが熾烈なものであった事は想像にかたくありません。
彼はそのフリに耐えたわけです。


実際、彼のトークは抜群のキレを見せます。
車中から見かける通行人一人からでも独自のトークを展開してしまいます。

「この時間にあんな格好で歩いているあの男はきっとこれからお忍びで不倫相手に会いに行くんだ。その相手は20代のOLで」
「あのラーメン屋はきっと夜飲み屋になって、そこは藤達也みたいな陰のある男が常連で」なんてトークは序の口で。「あるある」と想像させ、ちょっと毒を交えたトークがいかにも「とんねるず好み」を連想させるのでした。

そんな彼のトークの中で、私が妙に気に入っているネタが今回のサブタイトル「ちょんまげディレクター」というもので。

彼は「ちょんまげディレクター」。
この平成時代にマゲを結い、粋な江戸装束でロケに臨みます。
ロケ現場への移動は常に愛馬。現場にひづめの音が高らかに響き渡る時、ちょんまげディレクターが華麗な演出を炸裂させるのです。


ちょんまげディレクターは横文字を使いません。ディレクターと言えば横文字ばかりというセオリーを無視するのです。
カメラマンは「撮影役」。リポーターは「案内役」。
もちろん台本は巻紙で全部筆書き。
カメラワークの指示も全部日本語。
「撮影役、この辺りから撮影機材を静やかに上手に振ってたもれ。振りの速さは牛が横を向く按配で」
「案内役はその振りと共に速やかに状況説明をせよ。」
ロケ中、ファーストフードでの昼食も彼は絶対「箸を所望じゃ。」

武士のたしなみ、刀の手入れを常に忘れない彼はリポーターのNGを許しません。
ちょっとでもリポーターが間違えようものなら「打ち首じゃ!」
哀れ彼女の首は、彼の自慢の名刀の露となり・・・


彼のトークは止まる所を知りません。で、これがまた私のようなおバカも混ざったスタッフ達ですからこの手のお話は嫌いじゃない。話が膨らんでいくんですね。
ハードワークが予想される現場では、こういう他愛の無いお話で空気を和らげる事でスタッフ間の連帯も高まり、いいお仕事が出来るものなのです。
この空気を画面に封じ込めようとするスタッフの努力がお分かりでしょうか。


どんなお仕事でも職場の空気は大切です。これは皆さんの職場でも同じですよね。
テレビマンの奇行はそんな空気を作りたい一心の賜物。
サービス精神が高じて過激になっちゃう事もありますがそれもご愛嬌の一つです。

撮影が始まったら人が変わったように真剣になるスタッフの姿。
「やる時はやる」という彼らの心意気は、いつも私に感動を与えてくれます。
たまには「打ち首じゃ」と怒りたい時もありますが(笑)。

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コメント

こんにちは~
改獣模倣地帯、ナイスな題にほのぼのしました~
家につれて帰るって表現が、すごくわかります。。自分も「君、うち来る?」って心の中で問いかけている時があります(笑)
最近の記事はお仕事関係が多いですが、これはこれでなかなか興味深いですよ。。!
「カット割り」のご説明で、ドラマ見ていても、このシーンは別のカット割りで表現できないのかな?とか、まるでプチ監督気分に浸っております。。
こうなってくると、ワイド-ショーのちょっとしたコーナーのワンカットも興味深く見始めてしまいますね~
また楽しく新鮮な業界話、期待してます。
オタクイーンさんに続きまして、我が家も42インチプラズマTVを購入しました。
で、最初に見たDVDは「撃つなアラシ」です。なんだか映画館でウルトラマンを見たような変な感覚でしたよ。まあ慣れるのでしょうけど。
うちのチビは毎日ウルトラマン見ないと気が済まないようで、夜はウルトラ夜話に付き合っていますが、何回見ても面白いですよね。
チビにはメビウスの方が面白いと思うのですが、なぜか初代マン好きなんです。。なんででしょう?
プラズマで見るべくラスト3話は見ないで我慢していましたが見終われば禁断のウルトラQを観賞します。

大和少年様 コメントありがとうございました。
「改獣」の皆さんは今日も私の部屋で元気に暮らしています。
大和少年さんがおっしゃる通り、たとえ異形の存在であっても「連れて帰れ」ば家族同様。彼らをガラスケースで飾らない私は、たまに彼らの埃を綺麗に拭いてあげる時、最も愛情を感じます。
「あー気持ちいい」なんて声が聞こえそうで(笑)。

性懲りもなく続く業界話に呆れられているのでは?
私もなぜかここ数日お仕事の事を思い出すことが多く、「ネヴュラ」も業界ブログ化していますがご心配なく。相変わらずのオタクですから(笑)。おバカな私の気まぐれとお笑い下さい。
でもカット割を気にしだすと鑑賞体制もプロ寄りになるので、今のテレビなどは楽しめないかもしれませんよ。ほどほどに(笑)。

42インチテレビご購入おめでとうございます。これで「劇場支配人仲間」ですね(笑)。しかもそちらはプラズマテレビ!私のはただの液晶ですから実にうらやましー!
大画面で観ると、今まで見慣れた作品もまるで違う印象を持ちませんか?私も毎日感動と再発見の連続です。しかし「射つな!アラシ」とは。またマニアックなエピソードを・・・
でも私も同じですね。私が「マン」のソフトを入手した時、最初に見たのが「噴煙突破せよ」でしたから(笑)。

お子さん、メビウスより初代がお好きなんですね。やはり分かりやすいんでしょうか。ぜひ「ウルトラ夜話」に参加させていただきたいです。
「Q」も大画面で初体験される大和少年さんが羨ましい。
またご感想をお聞かせ下さいね。

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