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2007年1月15日 (月)

バニラのお香で

しじまを破って、部屋に鳴り響く電話のベル。
待ち構えていた私は受話器を取らず、その調べの流れるままに任せていました。
5回目のコール音の後、聞き慣れた「ピー」というFAXの送信音が・・・


フリーでお仕事をする私にとって、自分の部屋は半分、仕事部屋の役割を果たしています。先日お見せした「オタク部屋」の他に、私には仕事専用で使う「オフィス・ネヴュラ」とでも名付けたい(笑)場所があるのです。
実は冒頭のFAXは、本来2日前に届いていなければならないはずの仕事の企画書。私はこの企画書に基づいて台本を書きロケに臨み、ナレーション収録、編集を経て一本の番組をでっち上げる訳です。つまりこの企画書は番組の設計図とも言うべき大事な資料という訳で。その企画書が遅れれば、後の仕事も押していくのが自然の摂理。
しわ寄せはすべて私に来るのでした(笑)。

ついさっき届いた企画書を元に、なんとか台本一本を作り上げた私は、今安心して「ネヴュラ」の記事作成に向かえるという喜びの境地に。あー心配した。今日台本が出来上がればなんとかロケには間に合いそう。
まあ似たような事はどんなお仕事にもありますよね。私も今まで場数だけは多く踏んで来ましたから、ことさら大慌てすべき事でもなかったのですが。

自宅でお仕事をしていると、労働と私事の切り替えが非常に難しい時があります。
とりわけ私のようにテレビのお仕事などをしていると、自分の手掛ける番組がたまにリアルテイムで放送していて、それをすっかり忘れたままテレビを点けてしまう事もあったりして。ギョッとする時もあるんですよ。
特にCMなんかを作った時などはいつ流れるか分かったもんじゃない。(番組、CMともローカルの低予算作品ですので、特定地域の方しか目にされる事はありません。ご了承を)テレビを見ている時も気が休まらないのでした。

娯楽として楽しんでいる筈なのに、不意に自分が現実に引き戻されてしまう感覚って言うんでしょうか。
この感覚、最近は特にエスカレートしていて。

私など実力も無いのにキャリアだけ積んでくると、いわゆる「タレント」と呼ばれる人たちとそれなりに接する機会もありまして。一緒に仕事をした方々の顔をブラウン管で目にする度に、「あーあの人と仕事をした現場は大変なコンディションだったなー」「あの人、取材した時目が真っ赤だったけど、前の日撤夜だったのかな」なんて番組の内容以外の事ばっかり頭をよぎってしまうのでした。
「あの芸人さん、昔はスベりっぱなしだったけど、最近腕を上げたな」なんて事も(笑)。


そんな風に、虚構であるはずのテレビというものが舞台裏まで見えてしまうリアルな世界に感じられてしまうと、好きで入った業界なのに本当にこれで良かったんだろうかなんて考えてしまう事もありまして(笑)。
皆さんにお話できない、ひどい裏話もいやと言うほど聞いたものですから。


それでもお仕事ですからやらなきゃならない。それも今日のように、じらされて待たされてやっと手にした企画書で、実に夢のある内容を書かなきゃならない時には。
今日の企画書についてちょっとお話しましょう。
差し支えない程度に。


それはお店紹介の番組でした。あるイタリアンレストランで、一ヵ月後のバレンタインデーに向けた特別メニューを出すとの事。それはカプチーノ系のコーヒーの表面に、バリスタと呼ばれるお店のスタッフがチョコレートで絵や文字を描くというもので。
ここまではよくあるメニューなんですが、この後は・・・
企業秘密(笑)。


バレンタインデー。イタリアンレストランのティータイム。
熱々のカプチーノにバリスタが小粋に描く愛の言葉。
どうです?「ネヴュラ」にはとても不似合いのキーワードばかりでしょ(笑)。


こんなキーワードを元に、ちょっと洒落た謳い文句を並べ立てなければいけないんです。とっくに締め切りは過ぎ、カット割りからロケで使うカメラのレンズ、ライティング、恋人役のエキストラは誰に・・・まで混乱した頭で考えながら、気の利いたナレーションの一つも浮かべば私もいっぱしのクリエイターを気取れるんですが、悲しいかな「オタク部屋」で毎日怪獣に囲まれて暮らしている私(笑)。おいそれといいセリフなんて浮かんできません。

そんな時、私にはちょっとした気分転換の技があります。
これは最近のマイブームなんですが。


インドのお香。それもバニラの香りの。
部屋でこれを焚くと、少し気分が落ち着くんです。
気分が「オタク」から、「女子」に変わっていく感じでしょうか。


私が手掛けている番組のメインターゲットは20代から30代の女性。そういう意味では、私の思考回路は若干このお仕事に向いているとは思います。彼女達の気持ちに少しでも近づく事が、番組を成功させるコツとも言えるからです
今日の企画書のようなお題で一本書き上げようとする時は、私はバニラのお香の中で主人公の女性になり切る事にしています。お香に酔う訳ですね。(そこの貴方、「キモイ」って言わないで。私が一番思ってるんですから)
無理矢理にでも思わないとこんな台本、書き上げられない。
バレンタインデー。このレストランの片隅に座り、相手に差し出したチョコへの反応をじっと窺う女性。彼の返事はバリスタの描くカプチーノの表面に。YESかNOか。
彼女はカプチーノの表面を見つめられず、その表面が映る彼の瞳を静かに見つめるだけ・・・


あー恥ずかしい(笑)。でも考えてみると、この、私が今書いたシチュエーションって、主人公目線じゃないですよね。
これはカット割りを考えた「監督目線」ですよ。

主人公になり切るなんて言っておきながら、それを操る者の立場に立ってしまっている。
これがテレビ屋の悲しい性なのかもしれませんね。

私は「ネヴュラ」で、よくデッチ上げのストーリーをお話しますが、どうもこういう性癖は職業病、もっと言ってしまうと妄想癖を活かせる職業に就いてしまったゆえの所業なのかもしれません。前述の恥ずかしい妄想も、考えている時はお仕事である事を忘れ、「BGMはこう」「照明はこう」「カメラワークはこう」なんて、勝手に超大作気取りですから。実際は予算も時間もなく、ひどい出来になるのは分かっているんですが(涙)。

でも、こういう風に演出の真似事ができるお仕事って、今まで自分が観てきた映像作品がいい引き出しになりますよね。
よく仕事仲間と映画やテレビの話をする時、メンバー各々が心酔している作品を聞いて「あーだから彼は、あの番組の時ああいう演出をしたのか」「あのタレントを使ったのはそういう事だったのね」なんて分かって、つくづくこの業界がオタクの集まりである事を痛感します。
私より10歳以上年上のカメラマンが「ウルトラQ」のカメラ割りについて真剣に語るのを見た時は正直感動しました(笑)。

お仕事のスケールは天と地ほど違いますが、映画監督や番組ディレクターは私にとって「先輩」なんですよね。
それは今、映像業界で生きる人がみんな思っている事だと思います。そんな先輩の偉業を少しでも勉強して、自分の芸の肥しにできれば、なんて思ったりするんですが、観ているとやっぱり「勉強」どころか楽しませてもらっちゃって。
でもきっとそんな風に「勉強する気持ちを忘れさせるほどのめり込ませる」作品ほど、監督にとっては誇らしい筈。
私もそんな作品を作ってみたいものです。


今日はこんな独り言でごめんなさい。まだちょっと「バニラの香り」の酔いが醒めていないようですね。もういい加減にしないと。

今日の最後はこんな笑い話で。ある日どこかのディレクターが「凄い作品を作ったぞ」と意気込んできました。
問いただすと「劇場へ行ってみろ。スター・ウォーズの同時上映だから。」また嘘ばっかり。さらに問いただすと、彼が手掛けたニュース映像が、スター・ウォーズ上映前の「ご当地ニュース」(市町村が作るローカルニュースですね)で使われた、というオチでした(笑)。

これはもちろん作り話ですが、ディレクターの功名心は時としてこんな現れ方もするのです。私も気をつけないと(笑)。

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コメント

オタクイーンさん、こんにちは!
お話しを聞いていると、「趣味を活かせる好いお仕事をお持ちだな〜」なんて、うらやましく思います。(*^^*)
もちろん、そんな甘いものではなく「隣の芝生」であることは十分わかっておりますが(笑)。
よい番組(CM)に仕上がるといいですね!

それにしてもカプチーノの泡の上に絵を描くのは見事ですよね!
昨年のトリノオリンピックで、NHKのオープニングに使われた 砂(coffee?)を使って描かれた絵も とっても素敵なものでした。覚えてますか?

ポン太様 コメントありがとうございました。
こんなとりとめのないおしゃべりにまでコメント頂けるとは。
本当に感謝の極みです。(涙)。

私のようなお仕事は、色々な職業に携わる方々を取材し、それぞれのお仕事の大変さを垣間見る事も多いので、そのご苦労の様子も僅かながら感じる事ができます。苦労の無いお仕事など存在しませんよね。本当に皆さんを尊敬してしまいます。
私なんてまだまだ甘いです。今だに毎日が失敗の連続で。

でもそんな中、私が少しでもこのお仕事に喜びを感じられる所があるとすれば、それは取材の現場で出会う人々の「最高の瞬間」を見られる事。皆さん、困難なお仕事に臨む時ほど「いい顔」をしているんですよ。そんな表情を捉える事ができた時、私は思います。
「その顔、いただき!」
人が真剣に頑張っている時の顔って、美しいんですよ。これはテレビディレクターとして、カメラの傍らに立つ私が皆さんからもらった、大切な宝物です。きっとポン太さんも、職場で頑張っている時のお顔は輝いているはずですよ。

カプチーノの取材は18日の木曜日。バリスタの方が絵を描いている所も撮影しますが、私はその人の顔を注意深く見る事にしましょう。きっと美しいはずですから。
(NHKのトリノオープニングですが、お恥ずかしい話私は未見で。コメントがカッコよくまとめられない私は相変わらずツメが甘いです(涙)。

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