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2007年1月28日 (日)

ブラウンは泣いている

「あいよ!毎度ありい!」
なぜか威勢のいい宅配便のおにいさん。その手から受け取ったのは待ちに待った「東宝特撮 巨大生物箱」。

予約していたDVDがついに届けられたのでした。

Photo_467 以前は単品発売されていた東宝特撮映画のDVDを数作品ずつボックスにて発売する今回の企画。今月と来月の2ヶ月連続リリースと言う事で。
不覚にも東宝特撮のDVDをほとんど持っていない私にとってはまさに渡に船。ここしばらく市場から姿を消していた作品を一挙に手に入れるまたとないチャンスと飛びついたのでした。

今月リリースの「巨大生物箱」は、「空の大怪獣ラドン」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」という、まさに夢の組み合わせ。
東宝特撮黄金期の諸作品をDVDの高画質で観る事ができるとあって嬉しい限りなのですが、私を狂喜させたのはなんといってもこの3作品に加え、ボックスにしか付かない特典ディスクなのでした。このディスクを手に入れる為にボックスを入手された方も多いのでは?

Photo_469  「フラバラ」と「サンガイ」(もうお分かりですよね。)に海外公開バージョンがある事は有名なお話で、それぞれ国内公開版とは内容が微妙に異なる事もよく知られています。「フラバラ」のラストシーン違いなど、1980年代にオタクな青春を過ごした私には楽しい研究課題でした。
今回の「巨大生物箱」特典ディスクは、この「フラバラ」「サンガイ」2作品の海外公開バージョンを一枚に収めた、まさにファンが待ちに待ったコレクターズ・アイテムなのです。

Photo_470 いそいそと部屋に持ち帰りパッケージを開けた私は、すぐさま件の特典ディスクを開け、「ネヴュラ座映写室」にセット。目指すは「サンガイ」海外バージョンです。
レア度で言えば今回初のディスク化となる「フラバラ」海外版の方が上なんですが、「サンガイ」に魅力を感じる私としてはどうしても(笑)。

「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」(1966年 本多猪四郎監督)。この作品については今もさまざまな評論、感想、研究などが乱れ飛んでいるので説明の必要もありませんね。
この前年公開された「フランケンシュタイン対地底怪獣」(本多猪四郎監督)の「姉妹編」として公開された、いわゆるフランケンシリーズ第2弾です。

1965年当時、東宝はゴジラ映画をやや子供向け路線に変更し、怪獣というキャラクターが本来持つ怪奇、恐怖性を全面に押し出した新路線を模索していました。このフランケンシリーズはそんな試行錯誤の一つの回答として非常にユニークな位置を占めています。
怪獣に怖さ、強さなどを求める私にとって、この2作品はまさに一つの到達点。
平成ガメラの制作陣が「大怪獣空中決戦」制作時、「サンガイ」のテイストを目指した事は良く知られています。

Photo_471 で、「フラバラ」と「サンガイ」を見てよく抱く疑問が一つ。「サンガイ」に登場する「サンダ」という怪獣は、「フラバラ」に於けるフランケンシュタインなの?という物。
確かに劇中そういう描写はあります。でも出演者は2作を通じ、同じキャラクターは怪獣の母(笑)水野久美さんのみ。しかも彼女はそれぞれ違う名前で出ています。他のキャラクターは総入れ替えされ、肝心のフランケンシュタインも「サンガイ」に出演する子供時代の風貌は「フラバラ」の時とは似ても似つかない物で。
私も長年の謎だったのですが、今回このディスクのライナーノートを読んで納得がいきました。

それはどうやら様々な事情が重なったものらしいという事で。「フラバラ」のニック・アダムスは出演不可能となり「サンガイ」のラス・タンブリンに。フランケンの造形も海外キャラクターゆえの権利問題で変えざるを得なかったらしいです。
そういう事情に合わせ、水野さんの役名も若干変わったと。

なるほど。「姉妹編」という微妙な位置づけは、本来やりたかった事ができなかったゆえの措置だったんですね。

でもこの場合、このお家事情はプラスに働いたと言っていいのでは?もし「サンガイ」の2怪獣の造形が「フラバラ」に順ずるものだったらあそこまでの醜悪さ、恐怖感、迫力が出せたかどうか。つくづく運というものは作品に大きな影響を与えますよね(笑)。

「サンガイ」は前作「フラバラ」で海中に沈んだフランケンシュタインの細胞が、「サンダ」「ガイラ」という二体の怪獣に分離、闘争を繰り広げるといったお話です。
こう書いてしまうと身も蓋もないですが(笑)、前作のフランケンの人間らしい性格を受け継いだのが「サンダ」。そしていまひとつ、「ダークサイド・フランケン」と化した一体が「ガイラ」という訳ですね。

劇中でも「二体は兄弟ではなく分身」と言われる通り、彼らはお互いを補完するような関係なのです。だから敵対している訳ではない。「二人で一つ」的な位置づけなんですね。だから引かれあうように争う。こういうテーマの怪獣映画は今までに無かったものです。
痛々しいんですよ。二体の闘いが。

この痛々しさは国内版、海外版通じて同じですが、私には海外版の方がよりテーマを強調しているように感じました。せっかく海外版を鑑賞したので、国内版との味わいの違いを少々お話しましょう。
ガイラというのは、本来一つの体であったフランケンシュタインの「本能」のみが分離したもの。自分のアイデンティティーは「本能の赴くままに生きる事」なんです。
だから自分の行いに疑問を持たない。
「理性」という概念があるから「本能」が認識できる訳で、彼の中には本能しかないからそもそも二つの区別がつかない訳です。やって良い事、悪い事という概念が無いんですね。それに対して「サンダ」は理性という概念を持っている。自分はやりたいんだけどそれは悪い事、という判断ができるわけです。
ここに対立が生まれる。


ガイラは人食をします。おそらく他の動物なども食物にしていたんでしょうが、ガイラは人間の味を知ってしまった。
これはガイラにとって禁断の実だったんですね。
人間を食糧にすべく都市に現れます。当初ガイラは光を嫌い、夜しか現れないといった性質を持っていましたが、人間の味を知ってからは昼間でも堂々と現れる。
自分が生まれ持つ性質を生存本能がねじ伏せてしまう。
そんな恐ろしさもこのドラマは物語っています。


作品前半、ストーリーにはガイラしか現れません。羽田空港に現れ、人々を次々と貪り食うガイラ。海外版ではここで国内版には無い、胸を締め付けられるような演出があります。
おそらく国内版では刺激が強すぎると判断されたのでしょう。ほんのワンカットにすぎませんが、ガイラの恐ろしさ、「巨大生物の怖さ」を感じるカットです。「ガメラ 大怪獣空中決戦」では、このあたりのテイストをうまくアレンジし、ギャオスの恐怖感を表現していました。
このカットがあるかないかで、ガイラの「食人」というキャラクターがかなり違ってくるのでは、なんて思うのですが。

ガイラ掃討の為自衛隊が出動します。東宝超兵器の中でも一二を争う人気メカ、「メーサー殺獣光線車」(喜)。この山中を舞台とした一連の対ガイラ作戦は本当に血湧き肉踊るものがありますが、海外版ではかなり雰囲気が異なります。
カット割りは同じなんですが、BGMが違うんです。
国内版では「L作戦マーチ」と名付けられた伊福部昭さんの名ナンバーがファンの心を盛り上げるシークエンスなんですが、何故か海外版ではこのあたりのBGMがそっくり差し替えられているのです。

白状しましょう。
私は海外版のBGMの方が好きなんですねー(笑)。

こればっかりは好みの問題なのでお許し下さい。
実は国内版を観た時から、「どーもここのBGMって間延びしてない?」なんて思いに囚われてしまって。(L作戦マーチファンの方々、ゴメンナサイ!)
海外版のアップテンポナンバーの方があのシーンにピッタリくるような。
作戦の切迫感、追い詰められたガイラの焦燥感が強調されていると思います。


この山中で絶体絶命の危機に陥ったガイラの元に現れるサンダ。しかしサンダは自衛隊員を蹴散らしてガイラを守るような暴挙には出ません。
あくまで人間を傷つけない事が彼のポリシーなのです。前作「フラバラ」で人間に育てられたという記憶が彼の食人本能にブレーキをかけているのでしょう。
国内版では「サンダ」「ガイラ」と呼称されたこの二体。山のサンダ、海のガイラという事ですね。海外版ではそれぞれの体色をとって「ブラウン・ガルガンチュア」「グリーン・ガルガンチュア」と呼ばれます。「巨大な化け物」という意味を持つガルガンチュア。二体は人間社会に受け入れられずひたすら闘争を続け・・・

最後の戦い、港を前に争う二体の姿は、本来一つであったものが引き裂かれたゆえの悲劇を感じます。
そのリアルな照明効果、ラス・タンブリン・日本人離れした風貌の水野久美が見せる演技はもはや洋画のテイスト。
海外との合作ですから当然の事ですが、この味わいは英語吹き替えの海外版に軍配を上げたいと思います。ここでも差し替わったBGMを含め、「外国映画」の風格があるんですよ。

ブラウン・グリーン(海外版ですからここからはあえてこの呼び名で)を戦いに駆り立てたものはいったい何だったのでしょうか?二体で共闘し、人間に襲いかかる事さえできた筈なのに。
本当は本能に殉ぜず、理性を持ってしまったブラウンの方に悲劇が宿ってしまったのかもしれません。

巨大生物にあるまじき「人間性」を宿してしまったゆえの悲劇。

私はこのシーンを観て感じる事があります。
「ブラウンの目は泣いている。」


これはグリーンへの相容れなさに感じる涙と共に、本能に忠実に生きられない自分に対しての涙だったのではないでしょうか。
理性を持ったブラウンにとって本能のまま暴れるグリーンは言わばもう一人の自分に見える筈。その行いが粗暴であればある程、自分の醜悪な部分を見せつけられているように感じる、悲しい構造。
それでいてブラウンはそんなグリーンにどこか憧れを抱いているのでは。

「サンダ対ガイラ」をご覧になる機会があれば、是非一度決戦シーンの「彼の目」を観てください。本来スーツメーションによって表情など作れないはずの、着ぐるみのマスクを。
海に墜落した、もつれ合った二体が迎えるあのラスト。あれはひょっとして絶望の淵に立ったブラウンがグリーンと共に迎えた「理性ゆえの犠牲」だったのかもしれません。


「ジキルとハイド」をもう一歩進めたドラマの深みが、この作品には感じられるのです

テーマは同じでも、国内版とは若干異なるテイストの海外版。色々な所で新しい発見がありました。やっぱり怪獣は怖く、テーマを持ってなくちゃ。
私はイケメンのブラウンが好みだけど、やんちゃ坊主のグリーンも好き。食べられる程愛されたい、なんて(笑)
シリアスな感想ぶちこわしですか?
こんなもんですよ私は(理性なき涙)。

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コメント

こんばんわ。
「サンダ対ガイラ」傑作ですよね。
子供の頃は単純に「善」と「悪」に分けてたけど、
後々観直して奥の深さにビックリでした。

ラドンやバラゴンはゴジラと競演出来るけど、
サンダ&ガイラは無理ですもん。
数ある東宝特撮怪獣映画にあって、
この作品はひたすら孤高の存在ではないかと。

あと個人的には、
ネーミングが素晴らしいと思うのですが。
フランケンシュタインに全く被らず、
しかも二体に共通の言葉(~ゴンとか)もない。
でも、インパクトがある。
そういう意味では海外版よりもセンスを感じるのです。
ブラウン&グリーンもストレートで良いですがね(笑)。

さすがです!オタクイーンさん。
読んでいて涙しました。こんなにも奥深い作品だったのですね!
制作側が意図した以上の解釈・メッセージが、このオタクイーンさんの記事に込められいるに違いありません。
いやお見事です。素直に感動しました。
TBして頂いて感謝します。

こんにちは~
ますます快調のネヴュラ座ですね。。。
このブログに出会って以来、昔の特撮、ソフビにはまりつつありまして。。。。(笑)
まもなく「GR」フィギュアのプロ塗装が到着します。。。どんなシチュエーションで飾ろうか思案中です。
「サンダ対ガイラ」はまだ見た事ありません。
近所のレンタルで見つけているのですが、他の怪獣ものと違って怖いって感じ敬遠しておりました(笑)
なんか妙にナマ生しいというか着ぐるみのはずなのに嫌悪感があるといいますか・・・・しかしオタクイーンさんレビューで俄然見たくなりましたよ。。
そうなると海外版も見たくなって「東宝特撮 巨大生物箱」も購入することになるのでしょうね。

ジャリゴン様 コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、「サンダ対ガイラ」はゴジラ世界とは異質の、完成された世界観の作品と思います。この魅力的な世界をもう数作品堪能したいと願う心理は、多くのファン共通のものでしょう。

ネーミングについても当時のスタッフの卓越したセンスを感じますね。海外版の「ガルガンチュア」という響きも魅力的ですが、やはりあの二体には「サンダ」「ガイラ」という呼び名がふさわしいのかもしれません。前作「フラバラ」では名前の無かった彼も、このネーミングにはきっと納得したでしょうね(笑)。

ポン太様 コメントありがとうございました。
思い入れだけが先走る毎度のおバカ記事です。本当にお恥ずかしい限りで。しかしながら、「サンダ対ガイラ」程再見する毎に違う一面を見せる怪獣映画も珍しく、見る度に「なるほどなー。ここはこういう意味なのか」と新たな発見があります。
映画は見る人の年代によって受け取り方が変わると言いますが、「マタンゴ」などと並び、「サンダ対ガイラ」もそんな奥深い作品なのかもしれませんね。

学の無い私などは、その本質のほんのひとかけらを垣間見ただけですが(笑)。

大和少年様 コメントありがとうございました。
「GR」フィギュア!しかもプロ塗装!なんて羨ましい!
貧乏な私などには夢のまた夢で(笑)。
いつか拝見したいものですね。

「サンダ対ガイラ」は皆さんが絶賛している通り、東宝怪獣映画シリアス路線のひとつの到達点と思います。その遺伝子(ガイラ細胞?)はスクリーンやブラウン管から世界中にばら撒かれました。その帰結のひとつが「ガメラ 大怪獣空中決戦」であると信じて疑わない私。(あ、「キル・ビル」もありましたか(笑)
通な作品に影響を与え続けるこの作品、ご覧になって損はないと思います。おっしゃる通りある種の嫌悪感は付きまといますが、それにも増して「業」というものの奥深さが堪能できますよ。

稚拙な私のレビューがその魅力をどこまで伝えられたかは疑問ですが(汗)。

オタクイーンさん、おはようございます。
ちょっと伺いたいのですが…
このブログの携帯用のアドレスって有りますか?
お知らせ頂くと有り難いのですが…

ポン太様 返事が遅れ申し訳ありませんでした。
実は「ネヴュラ」には、携帯用アドレスが無いのです(涙)。
始めた当初はこれほど続くとは、ましてやこんなに皆さんに見ていただけるとは思いもよらなかったので、携帯用アドレスを取得する事などまったく考えていなかったのでした。ごめんなさい。

今回のようなお問い合わせは夢のまた夢。そんなに気にしていただけるなんて感謝の極みです。さっそく近日中に取得するべく事を進めようと思います。嬉しい問い合わせありがとうございました。
でも冷静に考えると、毎回よけいな文章が多い「ネヴュラ」、携帯で見るにはかなりの忍耐を必要とするのでは?
簡潔な文章を心がけないと(笑)。

オタクイーンさん、ありがとうございます。
最近は携帯でもPCサイトが見られるのですが、データ量を考えると、やっぱり携帯サイトがあると有り難いです。
確かにオタクイーンさんの記事は、いつも読みごたえがありますが、私は結構携帯で読んでるんですよ。(*^^*)
そのままコメントを打つことも多いです。
なので、お願いできると嬉しいです。
勝手なお願いですが、m(_ _)m !

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