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2006年11月11日 (土)

東宝謹製ID4

ここ数日、お仕事の環境が変わった為、その進行も違うペースになっちゃって。
でも撮影や編集の機材、スタッフが変わっただけで、番組ってこんなにやり易くなるものかと驚いてもいます。
いやーテクノロジーの進歩は本当に日進月歩ですねー。

お仕事そのものは凄く楽に進んだのですが、ペースの関係でちょっと更新ができませんでした。ごめんなさい。
でも、こうしてお仕事が一段落すると、「ネヴュラ」の事が気になっちゃうあたり、私もつくづくおバカだなーと思ったりして(笑)。

さて、こんな風にお仕事が一つ片付くと、ちょっとストレスから解放されたくて見てしまう映画ってありませんか?
これまでも記事でいろいろ書いている通り、私はシチュエーション毎に同じ映画を繰り返し見る癖があります。「食事時は電送人間」とか(笑)。
考えてみると、こういう、お仕事が気持ちよく終わったときに見る映画も大体決まっていまして、私の場合それは「スカッとする映画」なんですね。それも壮絶な宇宙戦争物とか。
それも、変な理屈を振り回さない「ガチンコ勝負物」が精神衛生上良い様で。

要は「頭を使わない作品」を求めているんですよ。もともとおバカなので考えなくていい映画を脳が欲しているんでしょうね。

以前もこんなシチュエーションで「インデペンデンス・デイ」(1996年アメリカ ローランド・エメリッヒ監督。いわゆる「ID4」ですね。)なんかをよく見ました。
あれ、本当に頭を使いませんよね。もう「円盤が来た!」「武器が通じない!」「地球壊滅!」「反撃!」「勝利!」ってだけの映画で。いやー気持ちいい気持ちいい。
この作品についてはいろいろ言われていますが、頭の悪い私にとっては実にスカッとする映画なんです。スピルバーグの「宇宙戦争」より見やすい。

で、この「ID4」を見る度に思う事があります。作品内に流れる「イケイケ」の空気。潔ささえ感じる娯楽作への愛って言うんでしょうか。まったく同じ空気を感じる邦画を思い出すのです。
「これって、『宇宙大戦争』じゃん!」

Photo_332 「宇宙大戦争」(1959年東宝 本多猪四郎監督)。「ネヴュラ」でも何度かお話している、東宝特撮映画の名作です。(これは言い切ってしまいますよ。オタクイーンの太鼓判です。何の権威もありませんが(笑)。
実は昨夜も、この作品に手が伸びました。

この作品、東宝が円谷英二特技監督という逸材を擁し、特撮映画の可能性を模索していた1950年代に作られた超大作で、この2年前に公開された「地球防衛軍」の姉妹編とも言うべき位置づけとされていますね。

「超科学戦争物」とでも言うべきこの2本の作品は、当時の少年雑誌の口絵から抜け出してきたような空想兵器が画面狭しと乱舞する、夢と爽快さに溢れた作品でした。特に「地球防衛軍」は、登場する兵器のデザインを有名なSF画家、小松崎茂先生が手掛けていた事もあって、そのまま「動く口絵」的な魅力に溢れた作品。
バトルにつぐバトルという展開も飽きさせないものでしたね。

で、「宇宙大戦争」なんですが、これは「地球防衛軍」に比べると、SF作品としてはちょっと空想力が弱い作品なんです。二作品のテイストの差はそのタイトルが実に端的に表しています。

「地球防衛軍」は、突然地球に来襲した「怪遊星人」ミステリアンを「迎え撃つ」地球防衛軍の戦いを描いた作品。要は戦闘の舞台は地球上なんですよ。
侵略者ミステリアンの性格も描かれ、「知的生物同士の戦闘」という図式がはっきりしていました。
ミステリアンが操る地中掘削ロボット「モゲラ」や、地球側の兵器「マーカライト・ファープ」など、空想科学兵器も大活躍しましたよね。私も大好きな作品です。
でも、私の好みから言うと「地球防衛軍」は「宇宙大戦争」に一歩譲る感があります。

Photo_333 「宇宙大戦争」は、そのタイトルの通り、戦いは地球だけでなく宇宙空間にまでその舞台を広げます。月の裏側に前線基地を設け、地球を植民地化するべく攻撃を開始する遊星人ナタール。地球の科学力を凌駕する彼らの力は既に作品オープニングで明らかになります。僅か数機の円盤の攻撃で、地球上空の宇宙ステーションは宇宙の塵と化すのです!
さらに特殊兵器「冷却線」で地球に大きな被害を与えるナタール。さらには地球人を洗脳し、侵略の尖兵として操るのです。
ここで怖いのは、ナタールが作品後半までまったく姿を現さない事。

「地球防衛軍」では、怪遊星人(この言葉が大好きで)ミステリアンは、地球人と明確に意思の疎通ができました。しかし「宇宙大戦争」のナタールは、地球人の意思などまったく関係なく、ただ侵略するだけの目的でやってくるのです。
前線基地が「月」という事、敵の目的が「ノーピース・ダーイ」である事など、このあたり実に「ID4」に通じる部分がありますよねー。
どうも私は、「侵略宇宙人は地球人と意志の疎通をしない」という部分が好きなようなんです。
「そもそも次元が違うでしょう」という感覚なんですよね。

月の裏側にナタールの前線基地があるらしい事を掴んだ地球側は国際会議を開き、宇宙船スピップ号で月への強行着陸を決定します。
こういう「人類一丸」的な描写は、映画全盛期の作品ならではのスケール感ですねー。会議場に並ぶ各国代表の人数も尋常ではありません。こういう「画面の贅沢感」が作品の厚みを生み出しているんでしょうね。
さて、この作品が制作された1959年は、当然の事ながらアポロ11号の月着陸よりも前。月面の表面の様子はまったく分かっていなかったんですが、円谷英二以下特撮スタッフは宇宙船着陸の様子から月の表面の様子などを実にリアルに描写しています。後に円谷氏が実際の月からの映像を見た時に「やった事は間違ってなかった」と語ったことは有名なお話です。
この着陸シーンは私も感動しましたね。あれがアポロ前とは思えません。流線型のロケットが反転しながらゆっくりと月に吸い込まれていく様子は「これこそ円谷マジック」と思わせるものがありました。

ナタールの「冷却線」に対抗して開発された「熱戦砲」を携え、月面探検車でナタール基地に挑む地球軍。わずか2台、「アルマゲドン」的な強行作戦です。この探検車のデザインや光沢感が、1960年代に子供時代を過ごした私にはたまらないんですよ(笑)。
ああいうのを「いつか見た未来」的な感覚と言うんでしょうね。私の子供時代にはああいうデザインのプラモデルが山のように売っていました。子供時代の、未来への憧れを凝縮したようなこの探検車を見るだけでも、この作品の価値は充分にあると(笑)。

ちょっと脱線しましたね(汗)。月面基地でナタール基地を攻撃した地球軍は初めてナタール人と遭遇します。その姿は・・・未見の方の為に伏せておきましょうか。ここも「ID4」的にミステリアスな展開で。いいんですよこの「人間とは異質」な感覚が。

さあ、蜂の巣をつついた格好の地球軍は、いよいよナタールとの全面戦争に突入します。
「ネヴュラ」でも何度か紹介していますが、実は私はこの宇宙戦闘シーン、かなりのお気に入りなんですよ。「宇宙大戦争」にあの戦闘シーンが無かったら、私はおそらく「地球防衛軍」に軍配を上げていたでしょう。

月面基地を叩いたおかげで、ナタールの地球襲撃までには若干のタイムラグが生じました。その時間を使い、地球軍は「試作中の小型宇宙偵察ロケット」を急遽戦闘ロケットに改造、大気圏外でナタールを迎撃する作戦に出ます。
凄いですよね。ナタールの基地建て直しと地球軍の戦闘ロケット建造の競争という。
このロケットに人類の未来がかかっているわけです。

いよいよXデー。ナタールの襲来です。「あのロケットに人間を乗せることになるとは思いませんでした。」「人類の平和の為にはこれもやむを得ないでしょう。」科学陣によって交わされるこうした会話、戦闘ロケットパイロットの男性に向ける、恋人らしき女性オペレーターの悲しげな目が、命を賭けた戦いである事を物語ります。
偵察部隊の報告を受け、満を持して防衛司令官が放つ「第二次戦闘集団、直ちに発進!」の声を皮切りに始まる、ナタールの円盤と地球軍戦闘ロケット隊の宇宙戦!
これを見ずに「スター・ウォーズは凄い」とか「ID4のドッグファイトこそベスト」と言われる方、一度ご覧になって下さい。
未見の方はおそらく「このシーン、スター・ウォーズともID4とも違う」という印象を持たれると思うからです。
でも「違うけど凄い」と思う筈。

私もあんな戦闘シーン、他の映画で見た事ありません。これ、本当なんですよ。
まさに「動くSFイラスト」の世界です。まさにこの時代でしか成しえなかったセンスと、円谷英二特技監督の卓越した技術が結実したシーンでしょう。

私の中の東宝特撮ベストシーンに、永久にランクインする名場面です。伊福部昭の戦闘マーチがこれ程画面にあった例も珍しい。「宇宙空間にマーチが流れているような感覚」さえ与えられます。このシーンを見るだけでも、「宇宙大戦争」を鑑賞する価値は充分にあると思いますよ。
ちょっと褒めすぎでしょうか。でもこのシーンも「未見の方は幸せ」と言いたいですね。
この後、まだまだ見せ場は続くんですが、これは言わないでおきましょう。エンディングも本多監督らしい、すばらしいものです。

Photo_334 いつも思うんですよ。「宇宙大戦争」を見てから「ID4」を見ると、「エメリッヒ、『ゴジラ』をリメイクする前に宇宙大戦争をリメイクしてるじゃん」なんて。
でも地球軍の戦闘機は日本の勝ちですね。「ID4」のF-18は宇宙を飛べませんから。
(子供のケンカかって(爆笑)

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