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2006年9月12日 (火)

「ホムラ」は恐怖に濡れて

ここ数日、私の住む地方でははっきりしないお天気が続いて。
気分もすっかりブルーです。

こんな日はつい、「雨」繋がりの映画なんぞを見たくなるもので・・・
今日もお休みなのに、朝6時から見ちゃいました。

「美女と液体人間」(1958年)。先日も「ネヴュラ」で触れた、東宝特撮映画の傑作です。
「美女液」(化粧水みたいですね(笑)とマニアの間で呼ばれるこの作品、一連の「変身人間シリーズ」の中でも最初期に制作されたもので、本多猪四郎監督、円谷英二特技監督の「ゴジラ」コンビが作ったものだけに、同時期の「トリック映画」とは一線を画す出来栄えがいっそうの楽しさを与えてくれます。

Photo_167 この作品は私が生まれる前に公開されたので、劇場で観た事はありません。古いレーザーディスクをひっぱり出して(このジャケットの大きさが、往年のレコードを思わせて大好きだったりします)再見しました。これは実は、先日書いた「電送人間」に次いで好きな作品で、レーザーディスクの発売と同時に飛びついたような(恥ずかしい)過去があります。

Photo_168 「ネヴュラ」読者の方には今更説明の必要もないこの作品ですが、今日のお話の為にちょっとさわりだけ。
ある雨の夜、麻薬が入った鞄を抱えビルから現れた男。待ち受けていた一味の車に乗り込もうとした瞬間、恐るべき出来事が起ります。彼は鞄と衣服を残して忽然と消えうせていました。
麻薬ルートを追う警察の捜査線上に現れたのは、消えた男・三崎と同棲する女性・荒井千加子。彼女の身辺には警察の他にも、三崎が麻薬を持って失踪したものと信じる仲間のギャングが現れ、千加子の命は風前の灯に。
しかしここに、第三の人物が現れます。生物化学を専攻する青年・政田。彼の推理と行動力により、三崎の失踪がある現象によるものである事が明らかになっていきます。
人知を超えたその現象とは・・・そして千加子を襲う「液体人間」の恐怖とは!

Photo_169 なーんて。まあ題名が「美女と液体人間」ですから、最初からネタは割れているんですが(笑)。
要は、この消滅する人間は、液体人間と呼ばれる怪生物(いい響きですねー)の犠牲者となったと。
「液体人間」とは、水爆実験の現場近くを航行していた漁船の乗組員が水爆の放射能で液体化した生物な訳です。その姿はアメーバ状で、人間のようなフォルムにも変形可能。
部屋の片隅にアメーバ状の液体人間が這い回る姿は、一種生理的な嫌悪感を与えます。このイメージが後に「ウルトラQ」のケムール人が操る転送装置や、「怪奇大作戦」の燐光人間に受け継がれたのは有名なお話ですよね。

「液体人間」には、人間の精神活動が少なからず残っているので、漁船の乗組員が故郷を求めて東京に上陸するという理屈も通っています。
また自分が生きるために必要な栄養素を求め、人間を襲うんですね。襲われた人間もまた、液体人間のお仲間になると。


言ってみれば「液体ゾンビ」って所でしょうか(笑)。

劇中では、失踪した(液体人間の犠牲者になった)三崎の意識を持った「液体三崎」(笑)が、千加子を求めて彼女の部屋や、彼女が働くキャバレー「ホムラ」へ現れます。
私はこの映画全編の中で、この「ホムラ」というキャバレーのシーンが最も印象に残っています。

ヒロイン千加子を演じたのは白川由美。「ホムラ」のトップ歌手です。当時のキャバレーは、ビッグバンドによる歌、ダンス、お酒など大人の社交場としての洒落た雰囲気に溢れていました。
その美貌を存分に発揮して、艶っぽく歌いながらお客のテープルを回る彼女の姿は、ある意味女性の魅力の極限のように見えたものです。「私もあんな風になれたらな」なんてね(笑)。

そして「その舞台裏」が描かれている点がまたステキ。要は彼女達の楽屋の様子。決してリアルではないんですが、化学者政田(佐原健二)が最初に楽屋に現れたとき、彼を三崎の仲間と勘違いした千加子は、彼を通じて三崎にお金を渡そうとするんですよ。「せめて半分は三崎に渡してね」なんて言って。ステージで洋楽を妖艶に歌っていた彼女のこの落差。「本多監督、こういう所もうまいなー」と感心しました。

1954年の「ゴジラ」で、ゴジラ本体の出現シーンが思いの他少なく、それでいて強烈な印象を残す事に言及して、本多・円谷両監督の演出手法を賞賛する評論を読んだ事があります。
考えてみるとこの作品も、液体人間そのものが出現するシーンはさほど多くないんですよね。それでいて、人間体になる液体人間の印象は強く残ります。襲撃シーンの白眉はやはり後半「ホムラ」の場面ですね。

麻薬の行方を追うギャング一味と、ギャングを追う捜査陣。その視線が交差するキャバレー「ホムラ」。一触即発の危機の中、ステージでけだるいスローナンバーを披露する千加子。歌が終わると同時に鳴り響くドラムのビート。一斉摘発のゴングです。次々と手錠の餌食となるギャング達。
その頃楽屋では、ギャングと内通したボーイがその一人を逃がそうと奔走しています。そこへ現れ、人間体となってボーイを捕食する液体人間。その直後、踊り子の女性を「仕留める」液体人間のカット!実際に見て下さい。「踊り子の目」を(怖)。

その後、液体人間は千加子をも狙います。ここはおぼろげに三崎の記憶が残っていた液体人間が、千加子に会いに来たんじゃないかと思わせるんですが、それは愛情ではなく記憶だけ、というのが怖い訳です。
ただ会いたい、でも相手を液体化してしまう事には何の罪悪感も持っていないというあたりが。
そして結局千加子は逃げ、液体人間は追ってきた刑事を犠牲者にする訳ですが。

Photo_170 この作品、なぜか私には「濡れた映画」というイメージが付きまといます。
設定として液体人間は、海や下水、川や雨など「水」を媒介にして移動するという設定なので、液体人間が都会で人を襲う時には必ず雨が降っている(秀逸な設定ですねー)という事もありますが。他にも湿度の高い要素は多分にあるような気がして。

ホムラで歌う千加子の「艶」「濡れた瞳」。当然の事ながら店の随所に現れる「お酒の入ったグラス」。楽屋で千加子が液体人間に襲われる時も、彼女は口紅を塗って「濡れた唇」を演出する途中でした。
夜、雨の「ホムラ」近くを徘徊する液状生物、というイメージにしてからが、まさに液体人間の作品カラーを決定付けているのでしょう。

本多・円谷両監督はこの作品にどう臨んだかは知る由もありませんが、「液体」というイメージ戦略は見事に功を奏しているのです。

Photo_171 この作品はどんな結末を迎えるのか。これもまた「液体」なイメージ満点。独特の余韻も強く印象に残る一篇です。ご覧になった方、この作品にどんな感触を持たれましたか?

今、カーテンを開けてみました。
昼間だというのに垂れ込めた雲が日差しを遮る、グレーの空。
しとしとと長い雨が降り出しそうな、いやなお天気です。
まさに「液体人間」日和。もう一回見ちゃおうかな(笑)。

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コメント

「うまいな~ やっぱり・・・」
あっ! こんばんは、オタクイーンさん。ポン太です(*^^*)

時期早々、失礼とは思いましたが、コメント&TBさせて頂きました。m(_ _)m

『美女と液体人間 見ましたよ。さすがです「濡れた映画」というイメージ、まさにピッタリでした。
華やかで明るいキャバレーと、液体人間が行動を起こす激しい雨の暗い街も なんとも好対照で、この作品に独特の雰囲気を作りだしていましたね。
で、別の側面から・・私の第一印象、この作品は 「人間版ゴジラ」でした。
原水爆による変化、そして襲われる街 東京、逃げまどう人々、燃え上がる炎と街を重ねて まるで街全体が炎上しているかのように感じたし、ラストの「核」への警告も含めて・・・』

ポン太様 コメントありがとうございました。
「美女液」ご覧になりましたか。
さすがですね。拝見した記事やいただいたコメントに記されていた「人間版ゴジラ」という表現は、実は色々な評論でも語られていることなのです。
それを一度ご覧になっただけで解析できるとは。

この頃の東宝特撮映画は、「ゴジラ」を起源とした核反対のメッセージが強く込められたものが多く、それが単なるキワモノ的な作品と一線を画しているのだと思います。
後年に残る作品からは、どこかしら強いメッセージを感じるものなのでしょうね(笑)。

こんばんは!いつもありがとうございます!
あたしの印象は、まず、エロい、ですね。
ダンサーの露出したエロさじゃなくって、白川さんの露出しないエロさ。
ウエストを思いっきり絞って、胸を強調した、肉体の曲線、
エロいですなぁ、、、
ぁ、おっさんになってしまっています??

中毒猫姫様(改名されました?)
コメント&TBありがとうございました。
「エロさ」にはいろいろありますよね。
この作品の「エロさ」は大人の色気。
白川由美さん演じるシンガーは、公開当時も盛況であったであろう、この手の「大人の社交場」に不可欠なスターだったのでしょう。
今、お色気と言えば露出を意味するだけに、この手の「曲線を意識させる」大人の表現がかえって新鮮に映るのでしょうね。

あはは、、、ごめんなさい。
他のココログで、1回だけ使った中毒猫姫が、
この情報を登録する、と言う機能で残ったままでした。
改名していませ~ん!

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