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2006年9月 2日 (土)

仕置人からの手紙

私の「必殺」好きをご存知の方は、かなり昔から「ネヴュラ」をご覧の方でしょう。
以前、その思いを書いた記事に久しぶりにコメントを頂き、「必殺」オタクの血がまた騒ぎ出しました。(カテゴリー「必殺シリーズ」から入っていただければ、記事をご覧頂けます)

必殺シリーズに関しては、どれくらい語っても語りつくせない思いがあります。「特撮好きは必殺好き」なんてよく言われますが、どうもあの作品には、オタクの血を騒がせる何かがあるようです。なにしろ私が今の仕事を決めた動機の一つはこの作品にあるのですから。Photo_148
特に最高傑作の呼び声も高いシリーズ第10弾「新・必殺仕置人」(1977年)についての思い入れは尋常ではなく、昔の記事にもある通り「念仏の鉄」を演じた名優、山崎努氏に手紙を送った程。

シリーズ一作ずつを語っていてはハードディスクもオーバーフローするくらいなので(笑)今回は山崎氏から送られたご返事の手紙を元にしながら、「新・必殺仕置人」のみについて私見をお話しましょう。

1980年代に吹き荒れた「仕事人ブーム」のおかげで一気に上がった「必殺シリーズ」の知名度。実際、その時期までは、この異色時代劇の評判は一部のマニアを除いてさほど高いものではなく、私などはそのマイナー加減に喜びを感じていたのです(笑)。

その番組内容もとても一般受けするものではなく、いろんな意味でハードそのもの。深いテーマ、斬新な演出などに魅了された私は、他の番組に無い「鋭さ」を見ていました。
そんな私も、シリーズ第17弾「新・必殺仕事人」(1981年)あたりから加熱するアイドル的人気に応じ、徐々にソフト化する内容、殺しの「ショー化」に、古くからのファンの方々同様、幻滅を禁じえなかったのは事実です。

Photo_149 そんな私の唯一の心のよりどころは、前述の「新・必殺仕置人」最終回で、壮絶な最期を遂げた「仕置人・念仏の鉄」の存在でした。
旧作「必殺仕置人」(1973年)での初登場以来、その強烈な存在感で、必殺シリーズ出演の全キャラクター中かなり人気の高いこの男に、私は理想の「仕事師の姿」を見たのです。

「鉄」を演じた山崎氏に私が書いた手紙には、ある大きな質問が書かれていました。
「鉄」の役づくりについてでした。「鉄」をどんなキャラクターとして受け取ったのか。演じるに当たってどんな演技プランで臨んだのか。

まだ今の仕事に就く前でしたから、思えばぶしつけに失礼な質問をしたと反省しています。いわゆる普通のファンレターではなく、質問状のような内容だったんですね。
しかしながら山崎氏は、そんな素人の失礼な質問にも、実に丁寧に答えて下さいました。

私のお話より、本当は文面をそっくり見たいでしょ?でもそれを勝手にやっちゃうとご本人には失礼ですし、何より私宛の「ラブレター」ですから、ちょっとご勘弁下さい。差し支えない部分の内容をかいつまんでお話しましょう。
必殺ファンには当時の山崎氏の役作りの考え方が分かる、貴重な資料だと思います。
もし、(あり得ないお話ですが)山崎努さんご本人がこれをご覧になっていたら、なにとぞお許しいただきたいと思います。

意外にも山崎氏は、「鉄」の役を「力を抜いて楽しく演りました」と語っています。なるほど。鉄の「殺し屋にあるまじき余裕」は、そういう山崎氏の姿勢の表れだったんですね。
水戸黄門ほどではないにしても、最後は悪玉が退治される時代劇の通俗的パターンの中で、どれだけ遊べるか、というのが、山崎氏の願目だったそうです。

Photo_152 「仕置人」を憶えていらっしゃる方、ちょっと思い出してみて下さい。それまでの時代劇、とりわけ「殺し屋」と呼ばれたキャラクターの中で、「鉄」のようなキャラって居たでしょうか?
当時の「必殺シリーズ」プロデューサー、朝日放送の山内久司さんは語っています。「それまでテレビ時代劇に登場した多くの主役キャラは、剣一筋、女も要らぬ、信じるのは正義のみと言うものが多かった。それを全部ひっくり返したのが「必殺」のキャラ。」

プロデュースサイドの制作方針に乗ったとはいえ、前作「必殺仕掛人」の藤枝梅安(緒方拳)の影響も残しつつも、また違った役へのアプローチを、山崎氏は行った訳です。
そのアプローチが成功したのは、その後のシリーズに「仕留人」の大吉(近藤洋介)や、「仕置屋稼業」の印玄(新克利)など、鉄のイメージを踏襲したキャラクターが登場した事でも明らかです。

キャラクターとして、正義の味方ぶりにどこか照れているところ、が出来てきた、と山崎氏。水戸黄門や大岡越前に笑ってしまうお客さんと同じレベルで役を作ったとの事です。
なるほど。そういうことだったんですね!当時、私のようなおバカなマニアは、前述の二作品の良さに気がつかず、「これのどこが面白いの?」なんて笑っていましたから、ここは山崎氏の策略に見事にハマった訳です。
そしてこの後の一文が、私の思いと見事にシンクロした、素晴らしい名文。

「日常原則で生きている人間への毒矢のようなものを鉄に持たせました。」

そうですよね!鉄が魅力的なのはまさにこの部分。「あんたそんな人生で楽しいの?」と、常にアイデンティティーに揺さぶりをかける存在感が、まさに鉄の真骨頂。私が鉄に憧れるのはここなのです。「楽しい」と胸を張って言い切れない後ろめたさが、皆さんにもありませんか?
必殺シリーズの看板キャラクターとしてご存知の「中村主水」(藤田まこと)。その対極に立つキャラクター、「念仏の鉄」。当時、「昼と夜の顔を使い分ける、<羊の皮を被った狼>。サラリーマンの憧れ」として人気を博した主水の、さらに上を行くイメージが、私の中にはありました。

「鉄は世の中のシクミ(原文ママ)など、はじめからどうでもいいと思っているのです。だから世の中に対するありきたりな怒りなどありません」

そうです。鉄には世の中のルールとは別の、自分だけのルールがあり、それに触れた物だけに激しい怒りを表しました。最終回、筋に合わない殺しを行う組織への所属を示唆された時に、彼がつぶやく「外道にだけはなりたくねえよ」というセリフが、彼の心情をはっきりと物語っています。

人間、社会通念に沿って生きなければ社会というものが成立しません。しかし心のどこかに、「法では認められているけど倫理上自分は許せない!」というルールがある筈。そんな、誰にでもある自分だけのルールに忠実に生きられる鉄の姿が、人々の共感を得ない訳が無いのです。
これは近年、大人気を博したドラマ「踊る大捜査線」の主人公、青島刑事のキャラクターに酷似していますね。(そりゃ私には、鉄の方が魅力的ですが)

実はこのキャラクターは、往年のアメリカのハードボイルド作品、とりわけレイモンド・チャンドラーあたりの世界に近いのです。必殺シリーズが時代劇のハードボイルドと言われるのは、作品に流れるそんな香りのせいかもしれませんね。(後期の作品にはちょっと?も付きますが(笑)。

「必殺仕置人」オープニングの口上(新・旧共通でしたね)にある、「この世の正義も当てにはならぬ」という一文は、自分のルールを貫き通す鉄の、心の怒りをも表しているのです。

Photo_151 さて、実は山崎氏からの手紙には、まだお話していない部分があります。実は一番キモかもしれません。

「念仏の鉄」の役づくりには、元ネタがあったんです。

ただ、これは彼と私だけの秘密。ここではお話しません。
一つくらい、二人だけの秘密があってもいいでしょ(笑)。

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「必殺シリーズ」カテゴリの記事

コメント

またまた楽しいお話に興味津々です。

その秘密が知りたい!
元ネタですか・・(考え込む・・考え込むでもわからない)

「必殺シリーズ」は、おっしゃるとおり「特撮好き」の公式に、ぴったんこ、はまってしまいました。婿殿の主水が、てなもんや以来の再会で、その変わりぶりに驚きました。ホームドラマのいいお父さんの山村総が、笑顔を見せませんでした。そして、何よりも梅安がセクシーでした。たたみバリをぬめっとなめ、口に挟むと空気が、変わるように感じました。オープニングのギターから、まばたきもせず見たドラマは、そうありません。・・・むろん、そこから始まるシリーズは、見逃すはずはありませんでした。
よって、「二人だけの秘密」、うらやましー。(笑)

オタクイーンさん、お早うございます。先日は必殺4にTBとコメントをいただいて有り難うございました。

役というのは脚本などで すでに作り上げられているものだと思ってましたが、違うんですね。
その役者さんが 自分でプランを持って役を作り上げるのだということがよくわかりました。
それにしても、「鉄」という人間像を作り出した山崎努さんに対する、オタクイーンさんの想いは、ハンパじゃありませんね!
私などには思いも寄らない境地に達してらっしゃいます。
1973年当時からこのような目で「鉄」を見ていたとしたら、スゴイですね。
封筒に書かれた直筆のサインも、何とも無骨で男らしさがにじみ出ています。

オタクイーンさんの記事を読んでいると、昔のことがいろいろと思い出されます。
今回は不思議と「狼・無頼控」のことが頭に浮かんできました。
仕掛人と同じような時期に放送されたこのドラマもまた、必殺色の強い内容でしたね。
私はよく親を先に寝かして(笑)一人でこっそりと見てました。なぜか?オタクイーンさんならお判りですよね!
今では考えられないくらいHなシーンが多かったですよね・・・(^^ゞ
すみません、またまた余談でしたね。
また来ます。

ブラボー様 コメントありがとうございました。
ごめんなさいね。こういう、どマイナーネタまで覗いて下さるなんて本当に申し訳ありません。
私の中では溝口も小津も、成瀬も石井も(どういうラインナップだか)この必殺と同列なので・・・
ご立腹でしょうね(汗)。

「秘密」の暴露はご勘弁下さい(笑)。
このまま墓場まで持って行きます。愛しの努さまと共有する唯一の財産ですので(夢見る目)。
また楽しい記事を拝見させて下さいね。

hiyoko様 コメントありがとうございました。
そうか!おっしゃる通りです。梅安をはじめ、必殺シリーズに登場するキャラクターは「セクシー」なんですよね。
なんでこの言葉を思いつかなかったかなー。
hiyokoさん、さすがですね。

彼らが「仕事」にかかる時、胸躍る「殺しのテーマ曲」とともに、まさに空気まで変わるドラマの面白さ。
単にカタルシスを覚えるだけに留まらない、人間の業を描ききった事が、現代まで続く高い人気の理由だと思います。
「必殺シリーズ」は、あの時代を生きたテレビマンの、創意の結晶だと信じてやみません。(ひどい思い込みかも(笑)。

ポン太様 コメントありがとうございました。
そうなんですよ。私も今の仕事に就くまでは分からなかった事なんですが、「役」というのは漠然とした設定の元、演出側と出演者が手探りで作り上げて行くものなんです。
ドラマシリーズのDVDを何本も見ると、出演者のキャラクターが第一話と最終回で違っている事も多いですもんね。あれはシリーズが進むにつれ、キャラクターが完成されていくからなんですよ。
「最終回でやっと役が掴めた」なんて言っている役者さんも居たりしてね。面白いものです。

「狼・無頼控」については、ごめんなさい。恥ずかしながら当時、見ていませんでした。極端に偏った知識しかないもので(泣)。1973年放送の傑作時代劇でしたよね。
ネットで調べましたが面白そうですね。見たくなりました。

「必殺」「影同心」など、あの頃の時代劇はダーティーで大人受けする内容が多かったですよね。「狼」もなんとなく、番組内に流れる空気が分かります。
機会を作ってぜひ一度見てみようと思います。
耳よりな情報、ありがとうございました!

茶色い封筒に
ザクッと書かれた字が、焼き物のように見えて、素敵です。

鉄に元ネタ!

すごい秘密ですね…
知りたい(>ε<)


鉄をはじめて観たとき、「明日死んじゃうかもしれないから今を楽しんじゃえ」
みたいに感じましたが、世の中のルール無視というゴーイングマイウェイさが大好きになりました。

世の中の仕組みを知り尽くした上での無関心さが

「世の中裏目ばっかりよ」
ってまさにそんな感じで、またもや鉄ちゃん大好きになっちゃいます。

おみち様 この封筒に書かれた直筆サインhappy01 は、私の一生の宝物です。
本当に個性的ですが、山崎さんの人となりをよく表している、硬質な字体ですよね。

鉄の元ネタは、私もビックリでした。
これだけは誰にもお教えせず、棺桶へ持って行きますのでご勘弁下さいhappy01
でもこれ、他のファンレターのお返事にも書かれていると思いますから、私だけの秘密ではありませんがhappy01

このお手紙を読むたびに、山崎さんが『鉄』という人物をいかに熟考し、キャラクターを作り上げていったかがよく分かります。
同時に、山崎さんの鉄への愛着も窺え、微笑ましい限りです。
きっと藤田まことさんも、中村主水に深い愛着をお持ちなんでしょうね。

「仕置きは仕置きだ。この癖はなかなかやめられねえぞ」
とうそぶく鉄の心中には、きっと自分のさだめをしっかりと見極めた、壮絶なプロの決意があったのでしょう。
そんな思いを持つたびに、私も鉄に心酔せずにはいられないのですhappy01

私は仕置屋市松 新仕置人鉄さん 仕事人おでん屋 激闘編壱あたりが好み

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