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2006年7月 6日 (木)

現場に棲む魔物

「いやーさすが。ベテランはやっぱり違うわー」いつもの番組ナレーション収録。NGが一つも出ない、すばらしい出来にため息も出そうな、見事な仕事ぶり。こんな気持ちのいい現場も珍しい、なんて思ったその直後、あり得ないトラブルが勃発してしまいました。
収録機材のトラブルでなんとナレーション素材(声の事)がまったく録音されていない!
そりゃ慌てましたよ。青くなる録音担当者を後に、再度アナウンサーにナレ読みを依頼しましたが、本人はお忙しく今日はこの後NG。(地方局とはいえ看板アナ。キー局にもたまに出演するので全国区でもある有名女子アナですから。)頭を下げまくってようやく明日の再収録をセッティングできました。とりあえず、大事に至らなくてよかったー。

ディレクターなんてお仕事を何年もやっていると、いろんな現場に棲む「魔物」に出くわします。今日のような機材トラブルから始まって、ロケ現場の天候不順、現場付近の渋滞、取材相手のスケジューリングミス、現場状況の不測の事態、タレントの演技設計ミス・・・・
どちらかと言えば「トラブルなし」の現場の方が珍しい。
その度に臨機応変な対応に迫られる訳ですが、これがまた笑えるほど「うまくいかない」。
後で出来上がった作品を見て「あんなに頑張って撮ったカットなのにいー」と、そのあまりのさりげなさに愕然としたりね。そんな事ばっかりです。(笑)。
これはどんなお仕事でも同じですよね。どんな現場にも「魔物」は棲んでいるんです。

今日のような事がある度に思い出すエピソードがあります。
いずれももうすぐ公開の超大作「日本沈没」の樋口監督がらみのお話です。

一つは監督が「素晴らしき円谷英二の世界」という本に寄せたコメント。「キングコング対ゴジラ」(1962年東宝)のクライマックス、キングコングとゴジラが戦いながら熱海城を壊すシーンで、ゴジラとコングと「壊れる」熱海城が同一場面に収まったカットはワンカットもない。という趣旨のお話です。。つまり、あの場面ではフルショットでの熱海城の壊しが現場として成功していないらしいのです。別撮りしたカットのモンタージュでうまく危機を脱していますが、あの円谷英二でも「現場の魔物」には勝てない事を表したコメントとして、強く心に残っています。

もう一つは、これは有名なお話ですが、監督ご自身が特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995年大映)での出来事。夕日の中、ギャオスが東京タワーの上にたたずむ「怪獣映画史上最も美しい」と言われるカット。あのカットはオープン撮影された「実景」ですが、撮影時期にはなかなかああいう綺麗な夕焼けが見えず、あのカットにこだわりを持つ監督は、スケジュール超過のリスクを背負いながら、「ギャオス映えする夕日」が出るまで何日も待った、というお話。おそらく監督の中では「不測の事態」も予想できた筈です。そうでなくてもスケジュールの超過なんて半端なプレッシャーではありません。夕焼けの出ない「空の魔物」を恨めしく見る監督の気持ちもよくわかるのです。

「現場の魔物」のお話をすると、もう一つ、円谷特撮の名シーンを思い出さずにはいられません。もうおわかりですよね。「空の大怪獣ラドン」(1956年東宝)。そのクライマックスシーンです。
ラスト、阿蘇山の上空を飛ぶラドン。その最期、火口に落ちる「原始の翼」の姿は涙をさそう名場面ですが、撮影現場ではラドンのミニチュアを釣る糸が切れ、ミニチュアが火口に落ちてしまうという不測の事態、いわば「魔物の仕業」が起こったのです。
しかしそこでカメラを回し続けた円谷監督の手腕。そのシーンは力尽きて火口に消えるラドンの哀れさを見事に表現した名シーンとして、今もファンの語り草となっています。

このお話を思い出すたびに、いつも考えます。
現場には魔物も棲むけど、神も居るんだなー、なんてね。

私はまだ、現場で神に会った事はありません。奇跡のような出来事に遭遇できるのは、やっぱり人一倍努力している人なんだろーなー、なんて思います。
私もそれなりに頑張ってるつもりなんだけど。ひょっとして、明日のナレーション再収録の時に奇跡が起こって、彼女のように透き通る声になるとかね。
(その妄想が魔物を呼ぶんじゃ!というツッコミが周り中から聞こえます(泣)。

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