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2006年7月30日 (日)

マルサンゴジラのふるさと

「これ、よく出来てますねー。」
1991年冬。私は東京、浅草の「空想雑貨」を訪れていました。
91_1 オーナーの神谷さんに見せられたのはこの、「VSキングギドラ」バージョンのゴジラ。その冬バンダイから発売されたソフビの試作品でした。(写真は発売された商品です)
このソフビは後に発売された「VSモスラ」バージョンよりもリアルな出来で、今でも人気の高いアイテム。
当時私は玩具メーカーからこんなにリアルなソフビが出た事に、驚きを隠せませんでした。

今発売されている数多くの、ソフビやプラモデルなどのゴジラ人形。ガレージキットまで含めれば、それこそ星の数ほどアイテムがあります。
そんな中で、日本で始めて「ゴジラ」を人形化したメーカーと言えば、「マルサン商店」。
Photo_67 お宝ブームの余波で、マニアの皆さんのみならず一般の方々にもその名前が知れ渡った「伝説のおもちゃメーカー」です。「ゴジラ」はこの「マルサン商店」から最初、電動プラモデル(1964年)として発売され、爆発的な人気を博しました。その2年後の1966年に、後々まで「マニアの友」となる怪獣ソフトビニール人形が発売され、ゴジラもそのラインナップに入りました。「第一次怪獣ブーム」の追い風を受けながら、東宝怪獣、ウルトラ怪獣など多くの種類を発売していった経緯は、皆さんならもうご存知でしょう。

今、怪獣玩具を研究する方々には余計な説明ですが、この「マルサンゴジラ」こそ、現在まで連綿と発売され続けるゴジラ人形のルーツである訳です。

このソフトビニール人形というのは、元となる型さえあれば、現在でも簡単に商品化できます。「マルサンゴジラ」も例にもれず、元の型が残っていた為、後に何度も復刻され、今でも比較的容易に手に入れることができます。
すごい事ですよね。今から40年前に発売された怪獣人形が、現役のソフビと肩を並べて店頭を飾るというのも。

このソフトビニール、怪獣人形の素材としてすっかり定着した感がありますが、もともとこの「マルサンゴジラ」が、本格的なソフビ人形のパイオニアだったので、「怪獣にソフトビニール」という発想もマルサン商店のオリジナルだったようです。
実際には、マルサンのソフトビニール怪獣はほんの少し前に「ウルトラQ」の怪獣が商品化されていた為、東宝怪獣としての初商品という表現が正しいのですが、ソフビ黎明期の時代、ゴジラの商品化にも色々なご苦労があったようですね。

そんな怪獣ソフビのルーツに興味を持った私。(なんでOLなのに・・・)お宝ブーム最高潮の頃発売された研究誌や放送された特集番組などを、例の野次馬根性で追いかけ、つたない知識を仕入れる事ができました。以降はそんな資料からの受け売りです。私ごときにはそれが限界で。

当時のマルサン商店でゴジラソフビを開発した、いしづき(漢字変換ができなくて・・・)三郎さんのお話によると、1966年当時、怪獣をソフビで商品化するというのはかなりの冒険だったそうです。当時のソフビは、女の子用の「お人形さん」が主流で、可愛いものというイメージがあったとの事。「怖く、暗い色」である怪獣は、ソフビという素材に向かないのでは、という危惧もあったそうですが、2年前に発売したプラモデルが当たった事もあり、「やってみよう」というチャレンジ精神で取り組んだようです。

アメリカから来たばかりの新しい素材「ソフトビニール」は、当時製造方法が分からず、マルサンのスタッフもかなり試行錯誤をされたようです。成型色(地の色ですね)も「怪獣だから暗い色が」いや「子供のおもちゃだから派手な色を」なんて社内で意見が分かれたとの事。当時、とんでもない色の怪獣ソフビが売られていたのも、その頃の試行錯誤による物だったんですね。(赤いミニラとかね(笑)

素材や色へのこだわりと同時に、怪獣おもちゃで一番重要な「形」についての試行錯誤も続いていました。
ここで面白いのが、「怪獣人形は瀬戸物の原型師によって作られた」という証言。当のいしづきさんがおっしゃっているので間違いないでしょう。
陶器で有名な都市、愛知県瀬戸市。ここに腕のいい原型師さんが居る、と聞きつけたマルサンスタッフは当人を訪ね、原型の製作を依頼したのだそうです。

日本最初の怪獣原型師は瀬戸物の職人さんだった訳です。

Photo_68 Photo_69 その原型師さんは大変丁寧な仕事をしてくれたそうで、その細かさは今も、人形のあちこちに表れているとの事。例えばこの「アンギラス」、かなりの数の背中のトゲを一本一本成形した細かさは、1966年当時賞賛に値したとのことです。

Photo_74 また、原型製作の上でも試行錯誤があったそうで、「アンギラス」もこの「バラゴン」も、その愛嬌ある顔や、映画では四つ足だったものを立たせてしまった点、バラゴンのお腹が丸く膨れているのはキューピー人形を参考にしたなど、「リアル」と「デフォルメ」の狭間で揺れるスタッフの苦悩が見て取れておもしろいですね。

そんな「バラゴン」も、試作品をおもちゃ問屋さんに見せたとき、「発注がなかった」との事で、まだまだ怪獣ソフビが一般に受け入れられなかった時代のご苦労が偲ばれます。
しかし、いざ発売されてみれば爆発的な売れ行き。方向性の正しさを確信したスタッフは次々とシリーズを展開しました。

Photo_71 Photo_72 Photo_73 この「キングギドラ」「モスラ」も、いまだに人気の高い怪獣ですが、今の物とはかなり雰囲気が違いますよね。ギドラの尻尾が一本だったり(笑)。
先ほどの「立てちゃった怪獣」も含め、マルサン商店の怪獣ソフビは基本的に「子供のおもちゃ」というスタンスを出発点にしているのです。これが時代を超えてなお、私達「大きなおともだち」の心を捉えて話さない理由なのでしょう。実際、後年他社から発売されたソフビ怪獣の中で、中途半端なリアルさが愛着にブレーキをかける物も少なくないですからね。

Gs いしづきさんは語ります。「当時の原型師さんは、怪獣の原型を自分の子供のように大切に作ってくれていた。」
きっとその思いが今も、マルサンのソフビ怪獣には生きているんですね。

こんな怪獣人形ひとつとっても、「プロジェクトX」的な開発秘話があるもので。(まさか番組化されてないですよね。見てなかったら一生の不覚(笑)。ゴジラソフビのルーツを探ってみるのも楽しいものです。
今日この記事を書くために、久しぶりに資料をひっくり返してみたのですが、夏のこの時期、子供の頃の自由研究を思い出して楽しい時間を過ごせました。

でも、こんなテーマで研究発表しても、先生には分かってもらえないだろーなー(笑)。

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コメント

いやー今日も勉強になりました。すごいですね。いしづきさんもすごい方なんでしょうが、そのことを調べ上げたオタクイーン様。その探求心と、行動力、分析能力・・・うーん、感嘆の声をもらすとはこのことです。まさにプロジェクトXですね、これは。
それと、アップされているソフビのコレクションも、すんごいことになってますね。(笑)うらやましい限りです。
マルサンのソフビもプラモも、ほしくて手に入らなかったもののひとつですが、大人になって、手に入れようとしたら、もっと手の届かないところにいっていました。(笑)

コメントありがとうございます。実は今日は夕方までお仕事で、結構な疲れの中アップしたものでいま一つ納得が行かなかったんですが、読了いただいて感謝しています。
アップしたソフビはすべて当時のものではなく、後年発売された復刻版。値段も大したものではありません。
万年極貧の私。当時のものを手に入れる術などまったくなし(笑)。
岡田斗司夫さんも行っている通り、「昔買えなかった物は、今ではもっと買えない」って正しいですね(泣)。

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